えくぼ

ごいっしょにおしゃべりしましょう。

短歌研究新人賞①工藤吉生

2018-08-21 13:23:42 | 歌う
9月号短歌研究に新人賞が発表されている。今年は男女各1名、工藤吉生と川谷ふじの、43歳と17歳のまるで父と娘のようなダブル受賞である。

応募者は547名、男性48 女性52パ一セント、選考委員は栗木京子、米川千嘉子、加藤治郎、穂村弘

今日は「この人を追う」で受賞した工藤吉生を取り上げる。氏は昭和54年千葉県生まれ、宮城県立高校卒業後パチンコ店の清掃を経て、現在は組合勤務、未来短歌会に所属、以上は「受賞のことば」に氏自身が記している。

「この人を追う」30首は作者の日常が熱っぽく伝わってくる作品が多い。俺という一人称がよく似合う。私は「この人」を追いたくなってきた。

🔘 黒髪を生やす力の衰えた頭を下げて求めた赦し

🔘 力の限りがんばりますと言わされて自分の胸を破り捨てたい

🔘考えず腕組みをして不機嫌に見えそうだなと思ってほどく

🔘次にくる年号を予想する人がテレビの中に座ってて邪魔

🔘 水を吐くオレを鏡に見てしまうモザィクかけておいてほしいな

とにかくおめでとうございます💐これからのオレを楽しみにしております。

新人賞の男子歌人の怖さ

2018-08-17 13:48:41 | 歌う
先日、郵送された歌集の封を開いて驚いた。表紙の装画はラファエロの聖母、著者の八木博信は2002年に短歌研究新人賞を受賞している。この歌集と表紙はいかにもミスマッチだ。

▲ 少女らの猥談みちる理科室にねむる琥珀の女王蜂が

▲ 婚近き若き教師の喉仏うごく少女の視線あつめて

▲ 「先生、あたし、整形したの」新しく何が見えるか?二重瞼で

この歌集をひらくと、こんな歌に出会う、さすがに新人賞歌人だ。斬新だと思う。表紙の聖母がとても気なる。

昨年の新人賞、小佐野弾について同性愛を隠すどころか武器にしたなどと私は意地悪なことを書いた。昨年「死ぬほど好きだから死なねーよ」という歌集を刊行した石井僚一は健在の父親を亡き人にした一連で短歌研究新人賞を受賞した。だから私は新人賞の男子歌人は怖い。

短歌人口の7割は女性らしい。が結社の主宰は男性が多い。新人賞も男性の活躍が目立つのは大胆不敵だからか。八木博信氏の「ザビエル忌」はまだ読み始めたばかりなので感想は控えるが、男子歌人は新人にしては表現力の完成度が高いのではないか、まじめに勉強しているのだ。しかし新人賞は優等生ではダメ。だから偽悪的、屈折した自分を演出し強調するのだろうか。

今年の短歌研究新人賞の発表が近づいて来た。私は10年位前まではこの時期はそわそわしていた。ことしは女性を、卑弥呼みたいな逞しい女を期待している。

ベトナム戦争を想う

2018-08-15 14:38:23 | 歌う
今日は73回目の終戦記念日である。来年4月に退位される天皇皇后は武道館の全国戦没者追悼式に最後のご臨席となる。私はふとベトナム戦争を思った。

10年ほど前にホ一チミンとハノイの旅をして私は大好きな国になったが至る所に激戦の痕があり痛々しかった。なぜ米国とベトナムが争ったのか、調べても私は理解できない。戦争はこの地球からなくなることを切に願っいる。

わたしの歌集からベトナムの旅の歌を。

🔘 老人よ大志を抱けと叫びたし、成田空港出発ゲ一ト

🔘泥水の河だったのだメコン河の水面はわれを映さずたゆたう

🔘激戦のありしは此処ぞ夕ぐれの畑野は迷彩柄になりゆく

🔘記念館に新車のごとく戦車ありベトナム戦争終わっていない

嗚呼、ベトナムコ一ヒ一を飲みたい!

今日は「山の日」

2018-08-11 10:03:27 | 歌う
数年前の夏の旅行の折にガイドさんから「皆さんは海と山のどちらが好きですか」と聞かれた。私も含めて約3分の2が海だった。海が好きな人はロマンチィスト、山が好きなのは堅実な人とのこと。でも紅葉の時期だったら私は「山」と応えたであろう。

富士山が世界遺産になり子供たちは山により親しくなっているだろうか。

🌋 あたたかくなっても白いその帽子ぬがないほうがいいよ富士山

🌋 のぼったことないけど富士山すきなボク、のぼったことがないからでしょう

🌋 海よりも山の好きな子二人いてあとの一人は「どっちでもいい」

🌋 ボクたちの富士山の高さはアバウトで二千、三千、五千メ一トル

私は20歳の時、富士山にのぼり頂上でご来光を見ました。この快挙を信じてくれない人が多いのは残念、五合目まではバス、山小屋で一泊しましたが。

🌋 のぼりゆく最後の一人となり我は山頂見上げ空を見上げる

🌋 いまは静かにしているけれどそのうちに噴火するかも富士山、あの人

小佐野弾という新人賞歌人

2018-08-09 10:33:21 | 歌う
今年の短歌研究新人賞の発表が近づいて来た。まず気になるのは男性か女性か、昨年は30代なかばの男性の「無垢な日本で」、受賞した小佐野弾はすぐに第1歌集を刊行し未来8月号「今月の歌」に紹介されている。

🔘 ママレモン香る朝焼け性別は柑橘類としておく いまは

🔘獣肉を男同士で喰ふことの罪/そののちのあひみての罪

🔘君という果実をひとつ運ぶためハンドル握る北部海岸

🔘しあはせな家族の塑像しあはせな国にあふれて明日は立春

🔘むらさきの性もてあます僕たから次は蝸牛として生まれたい

小佐野弾歌集『メタリック』より

この5首は岡崎裕美子が選出し、次のような解説を書いている。「無垢な日本で」の一連により2017年の「短歌研究新人賞」を受賞した作者による第1歌集。帯に「オ一プンリ一ゲイとして生きる自分」とあるように性的マイノリティを隠すどころか、むしろそれを武器にするごとき歌が並ぶ。

もしこの作品がケィの歌でなかったら新人賞を受賞したであろうか などと私は思ってしまう。表現は完成度が高く新人賞にはむしろ不利ではないか。しかし作者がゲイ、自分をもてあます、罪の意識の迫力が新人賞受賞になったような気がする。