★「棟居詩帆という新星」★
「短歌往来7月」の✿今月の新人✿は棟居詩帆。1983年福岡県生まれ、「心の花」所属
作歌をはじめて2年。つぶらな瞳の美女、独身だと思いますが。※棟居(むねすえ)
「春に動くもの」 棟居詩帆
ぱつくりと 割れてしまひぬ 陽の中の 芥子の花びら まだ熱持ちて
逢はぬ日の 続く春なり うつすらと 鏡に積もる ほこりを払ふ
向き合ひて 笑み交はし合ふ 永遠に ままごとをする 子どもらのごと
秒針の 音しんしんと なめらかに 嘘つくわれを 追ひかけてくる
幸せも 不幸せもなし サッチモの しやがれた声が こだます今夜は
※いつからだろうか。平仮名表記の歌が多くなっている。例えば~はるのよにきみをおもいてよむうたの~ この上句を読んでもすぐにはわからない。できるだけ漢字に変換する。~春の夜に君を想いて詠む~となる。が「よ」は「世」、「おもう」は「思う」に「詠む」は「読む」にも変換できる。ややこしいではないか。詩帆さんの歌は各々の句の後に1字の空白、読みやすい。この空白が風通しをよくして、ゆとりのある1首にしている。✿1首目の<芥子の花びら まだ熱持ちて> 2首目の<鏡に積もる ほこりを払ふ>など情感がこもり、余韻を楽しめる作品である。漢字を使っても歌の感触はやわらかい。
✾「人の心の中でさらに大きくなるような歌。そんな歌が詠みたい」詩帆さん。わたしだってそんな歌を詠みたい。もし詠めるなら。 7月12日 松井多絵子