まっしゅ★たわごと

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『華麗なる一族』を読んだ☆

2014年07月15日 21時55分11秒 | おすすめ


志摩観光ホテルに行ったときに作家・山崎豊子とその作品である「華麗なる一族」に改めて注目し、ふと書店で見つけた文庫本の第一巻の冒頭を広げて一行目に書かれている“陽が傾き、潮が満ちはじめると、志摩半島の英虞湾に華麗な黄昏が訪れる”という一文を読んで、その文章の構成美に引き込まれて思わず買って読んでみることになった。

物語自体は過去2007年にTBSで放映されたドラマ「華麗なる一族」を見ていて、その衝撃の内容に心打たれ今でも、前クールのドラマのようにわりと多くのことを覚えているので、当時のキャストの内容で小説を読み進めることができた。

作中の「万俵財閥」は「岡崎財閥」、「阪神銀行」は「旧神戸銀行」、「阪神特殊製鋼」は」「山陽特殊製鋼」で、その阪神特殊製鋼の倒産は「山陽特殊製鋼倒産事件」をモデルにしていると言われているのはけっこう有名な話で、部隊のほとんどが関西圏・・・おもに阪神間での出来事ということで物語は進んでいく。阪神銀行の本店があるとされる元町・三宮界隈。阪神特殊製鋼があるとされる灘区の灘浜工業地帯、万俵一族が居を構える岡本の邸宅、別荘となる六甲山の山荘、閨閥結婚の相手方の住まう芦屋に、その親族が勤める芦屋病院、更には夙川や御影までも出てくる。東京は元通産大臣の大川の御屋敷が茗荷谷にあったりと、どこもかしこも知った土地であるのが嬉しかった。一般の小説となるとどうも、東京ベース的なところがあるので、こういうのはなかなか嬉しいことである。

今日、クライマックスとなる鉄平の自殺のくだりから最後までを一気に読み進んだが、特に鉄平の遺体が発見された以降の登場人物たちの悲喜こもごもに胸を打たれ、通勤電車の中であるにも関わらず、無性に目頭が熱くなり、今にも泣いてしまいそうになって非常に困った。阪神特殊製鋼が倒産に至るまでの父・大介の非情な裏切りと、倒産後もなお鉄平に降りかかる裏切りと落胆のところが非常に綿密に書かれていて、作家・山崎豊子氏の圧倒的な力量にただただ頭が下がった。

文庫本にしてはけっこう高価な価格帯だけれども、価格以上の感動に浸れること請け合いである。これを機に以前途中で挫折してしまっている「沈まぬ太陽」でも読み直してみようか・・・。

華麗なる一族〈上〉 (新潮文庫)
華麗なる一族〈中〉 (新潮文庫)
華麗なる一族〈下〉 (新潮文庫)

ところで、当時のキャスト中で覚えていた人物は以下の通りなのだが、あとでウィキで見比べてみると一子の旦那役の美馬中(みまあたる)だけは今でも「仲間トオル」ではなく「及川光博」の方が適任な様な気がする。

万俵 大介〈60〉北大路欣也
万俵 鉄平〈34〉木村拓哉
万俵 銀平〈31〉山本耕史
三雲 祥一〈50〉柳葉敏郎
綿貫 千太郎〈58〉笑福亭鶴瓶
大川 一郎〈60〉西田敏行

万俵 二子〈22〉相武紗季
万俵 寧子〈54〉原田美枝子
高須 相子〈39〉鈴木京香
安田 万樹子〈24〉山田優
鶴田 芙佐子〈32〉稲森いずみ

一之瀬工場長〈58〉平泉成
銭高 博〈52〉西村雅彦
大垣 市太 山谷初男

特に上から数えて6人までの登場人物は山崎豊子が幾度も重ねて表現する「銀髪端正」「精悍な目」「ニヒル」な人物たちを北大路欣也、木村拓哉、山本耕史たちがそれぞれ好演し、山本耕史に至っては未だに普通にメディア露出していても万俵銀平に見えてしまうから不思議である。さらに言えば、北大路欣也に至っては、銀行内部の腐敗を描いた「半沢直樹」においても同様に頭取役にて出演していたこともあり、配役こそ違えど笑福亭鶴瓶のそれとも重なって見えてしまうのである。双方のドラマのイメージが重なってしまうのは、両作品ともに演出が福澤克雄氏で音楽が服部隆之であるからなのかもしれない。とにかく、ドラマを一度見直してみようと思う。


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