「源氏物語を読む」シリーズの10回目。「賢木」です。メモとして書き残しておきます。
・政治小説
この帖は政治小説のようです。右大臣側の権力が強まり、左大臣側が落ちていきます。光源氏は右大臣側の敵ですので、少しずつ権力を失っていきます。さらに桐壺院が亡くなります。光源氏の一番の庇護者である桐壺院の死は源氏の行く末を暗くします。そして左大臣家の娘であり、かつて朱雀帝に入内させようとしていた朧月夜の君との逢瀬の現場を右大臣に見つかってしまったために、源氏は絶体絶命の立場になります。政治の世界が物語を大きく展開させるというのは、現代的です。
・藤壺の出家
この帖では藤壺中宮の出家も重大な事件です。どんなに重大な局面になろうと能天気に藤壺との逢瀬を画策する光源氏の存在は藤壺にとって苦しいものだったのでしょう。この苦しみから逃れるためには、現世を捨てて仏門に入るしかありません。
六畳の御息所が伊勢に去り、藤壺中宮が出家し、朧月夜の君との関係は親にばれてしまいます。源氏にとって大きな位置を占めていた女性がみんな去っていくのです。
政治的状況が、恋愛事情と重なり、悪い方向に向かっていくことが巧みに描かれています。
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