とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

映画『落下の解剖学』を見ました。

2024-03-27 17:50:27 | 映画
2023年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した映画『落下の解剖学』を見た。真実とは何かを考えさせる深く重い名画だった。

人里離れた雪積もるフランスの山荘に一組の夫婦とその息子が住んでいる。夫はフランス人で妻はドイツ人だ。息子は目が見えず、盲導犬がサポートしている。夫婦は作家だ。その夫が不可解な転落死をする。妻が殺人容疑で逮捕される。妻は否認する。裁判となり、夫婦の冷めた関係が次々とあばかれていく。妻にとって都合の悪い証言や証拠が次々に出てくる。妻はそれに反論する。夫によって録音されていた夫婦の激しい言い争いが法廷で流される。その中では暴力を使ったかのような音もある。妻にとっては絶体絶命の展開です。最後に息子が証言する。果たして真実とは何か。

判決はでる。しかし実は真実はわからないままだ。芥川龍之介の「藪の中」のような作品だが、それが裁判の中で入り組んで展開していくので、後半は推理サスペンスとしての迫力があり、息をつくのを忘れる。もしかしたら、妻も夫も息子も真実はわからないままなのかもしれない。真実は人の数だけあるのである。それでも現実は進んでいく。そう考えれば多元的な世界は存在するのだ。おそろしく「リアル」なSF映画でもある。

隠されたテーマとしては言語の問題もある。いくつかの言語を使い分けることがわりと普通になりつつある国も多くなってきた。多くの現在の日本人にはわからない状況である。しかし近い将来、そういう日が来るかもしれない。言語政策をどうしていくべきかも、よく議論しなければならない。

深く考えさせられるすばらしい映画だった。
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