山形市の「やまぎん県民ホール」で『ガラスの動物園』『消えなさいローラ』を見ました。すばらしい舞台でした。
演出は渡辺えり。出演するのは渡辺えり、尾上松也、吉岡里穂、和田琢磨。山形市は渡辺えりの出身地なので、凱旋公演の意味合いもあり、2000人収容の客席がほぼ満席となっていました。正直言って辺えりの作品はどうもしっくりこないものが多く、あまり期待してなかったのですが、今回の芝居はすばらしい。感動しました。渡辺えりはやはりすばらしい演劇人だったということを再認識させられました。
『ガラスの動物園』はテネシーウィリアムズの出世作です。アメリカの現実を描き、そこに生きる庶民の機微を描いています。「古き良きアメリカ」の乾いた現実が観客に迫ってきます。
主人公のローラは足が不自由で、しかも発達障害の傾向も見られます。引きこもり、ガラス細工の動物で動物園を作っているような女性です。母親はローラを何とか男性と引き合わせようと画策します。ある日かつて一方的に好きだった男性が偶然やってきます。そして二人は楽しいひと時を過ごすのです。しかしそれはやはりローラにとっては一時の幻想にしかなりませんでした。アメリカは格差の国です。底辺で生きる人間はうまく行かない人生の好転を夢見ながらも、結局はそこに居続けるしかありません。乾ききった現実に心が締め付けられる演劇でした。
『消えなさいローラ』は『ガラスの動物園』を題材にした別役実の作品です。衝撃的な内容がコントのように演出されます。しかも即興的です。別役実の作品を笑いにみちたコントにしてしまう渡辺えりの演出力が光る芝居です。
二つの作品を上演するので、4時間近くかかります。しかも渡辺えりの凱旋だったのでカーテンコールが異様な長さです。しかし素晴らしい演劇のおかげで時間を忘れてみることができました。
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