とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

古典の参考書第6回 「思ひつつぬればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを」

2022-04-02 12:38:43 | 国語
思ひつつぬればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを

 古今和歌集に収められている小野小町の和歌です。小野小町は六歌仙の一人で、美人だったと言われています。しかし実際はどうだったのかはわかりません。六歌仙というのは古今和歌集が編纂された時代の一時代前の有名な歌人です。紀貫之が仮名序で紹介してるので有名になりました。

【品詞分解】
思ひ       ハ行四段活用「おもふ」の連用形
つつ       接続助詞
ぬれ       ナ行下二段活用「ぬ」の已然形
ば          接続助詞
や          係助詞
人          名詞
の          格助詞
見え       ヤ行下二段活用「みゆ」の連用形
つ          完了の助動詞「つ」の終止形
らむ       現在の原因推量の助動詞「らむ」の連体形
夢          名詞
と          格助詞
知り       ラ行四段活用「しる」の連用形
せ          過去の助動詞「き」の未然形またはサ行変格活用「す」の未然形
ば          接続助詞
覚め       マ行下二段活用「さむ」の未然形
ざら       打消の助動詞「ず」の未然形
まし       反実仮想の助動詞「まし」の連体形
を          間投助詞または接続助詞

【現代語訳】
 思いながら眠りについたので、(あの人が)夢に現れたのだろうか。もし夢とわかっていたなら(夢から)覚めなかったろうに。

【重要文法事項】
「ぬれ」
・下二段活用は現代語にはない活用です。例えば、現代語で「受ける」は古文では「受く」です。われわれにとっては感覚が異なるので分かりにくく感じます。それでも語幹があればなんとなくわかるのですが、語幹がない下二段活用の動詞は、終止形、連体形、已然形でまったくわからなくなります。
 例えば「寝」という動詞で考えてみましょう。終止形では現代語では「寝る」ですが、古文では「寝(ぬ)」です。

 現代語の活用 ね ね ねる ねる ねれ ねよ(下一段活用)

 古文の活用  ね ね ぬ  ぬる ぬれ ねよ(下二段活用)

 以上のように古文では終止形、連体形、已然形は「ぬ、ぬる、ぬれ」となり、ひらがなだけで記載されていたら、まったく意味がわかりません。
 このような語幹のない下二段の動詞は特別に覚える必要があります。
 語幹のない下二段活用の動詞は他に、「得(う)」と「経(ふ)」があります。

「らむ」
 助動詞「らむ」の意味は「現在推量」、「現在の原因推量」、「伝聞、婉曲」です。「現在推量」と「現在の原因推量」の区別がむずかしい。
 今、目の前に見えていないことに使われている場合は「現在推量」です。今見えていることならば推量する必要はありません。
 それに対して今、見ていることに使われている場合は「現在の原因推量」です。今見えていることに対して推量するということは、その原因を推量するしかないのです。

「反実仮想」
 「~せば ~まし」の形は反実仮想です。反実仮想というのは「事実と反することを仮に想う」ことです。英語の仮定法過去と同じ用法です。
 ここでは「夢としっていたなら、覚めなかったのに」という意味になります。事実は「夢だとわからなかたので、覚めてしまった」のです。
コメント
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