新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月17日 その2 何で残業を規制するのかな

2017-09-17 15:08:28 | コラム
残業と超過勤務手当は我が国の企業社会の独特の文化ではないか:

電通に始まって、一時(イットキ)は残業に対する議論がマスコミでは百出どころか万出だったかのような気配があった。アメリカの文化に染まっていた私には「面白い議論だな」と思わせられていた。ある地位というか身分が上がるまでは残業代が付くのは我が国ならではの制度だと、アメリカの会社の移って初めて知った。そこには年功序列制に加えて、外部からも当人にも良く解らない査定があって、何時の間にか同期入社の者との間に差が付いていく制度が絡まるのが不思議に思えてきた。

ご存じの方もあると思うが、アメリカの制度では基本的に本俸(年俸)一本だけであり、我が国のような諸手当や管理職手当などない。解りやすいように極端な表現をすれば、本社機構だろうと何だろうと、中途で入社する際に、直轄の上司と話し合って合意した年俸だけしか貰えないのだと思って頂いて良いだろう。更に言えば、給与に関係するような遅刻も早退のような制度もないが、有給休暇(paid holiday)は貰えるはずだ。

即ち、与えられた「職務内容記述書」を達成する為には、朝6時に出社して夜は21時までオフィスにいてもそれは各人の勝手であるということだ。それでも追い付かなければ土・日に出勤するのも、各人の自由意志である。極言すれば「週5日勤務では仕事を裁ききれない無能力者は週末を犠牲にせよ」ということ。逆に「週末と家族を犠牲にしても与えられた職務以上の成果を挙げたい者」は1年365日働き続けることを厭わないのである。ここで看過できないことは「アメリカ式では仕事は全て個人に割り当てられていて、皆で分け合った負担することではない」点である。

では、一方の我が国ではどうなっているかなどを、ここで私が説明する必要などあるまい。かく申す私も日本の会社にお世話になっていた頃には残業はしていた。今となっては、その理由や必要性が何であったかの記憶は全くない。だが、私個人に割り当てられたその日の仕事をやり遂げられなかったから残っていたとは思えない要素もあったのだ。新入社員の頃は恐らく不慣れで仕事を消化しきれずに残っていたのかと思うだけだ。

こういうこともあった。それは、ある商社の新入社員が2~3日続けて同じ服装をしているのを見た人がその理由を尋ねたのだそうだ。答えは「今週になってから会議室に2日連泊しています」というものだった。更に、その理由は「新入社員の私には与えられた仕事をこなしきれずに深夜を過ぎても帰れず、会議室で寝ることを選択した」だった。

彼は言葉を継いで「これは私の能力が不足しているだけではなくスキルも足らないのか、あるいは会社側が与える仕事の範囲が私の能力を超えて余りにも広く且つ大木過ぎるのかの何れでしょう」とサラッと述べたのだった。彼は「2日連泊などはお手柔らかな方で、同期でXX部に配属された者は既に連泊2週目に入っています」とも教えてくれたそうだ。この連泊を誰も咎め立てしないそうだ。マー、言ってみれば、野球の練習で言う「千本ノック」のような新入社員の鍛え方だ。

我が国とは違ってボーナス制度がない会社側というかサラリー制のアメリカ式給与では、既に述べたように年俸だけである。ということは、残業手当はないと思っていて良いだろう。全ては自分の成績次第だから、目標達成までは何時間でも働けば良いだろうということだと、私は解釈していた。

こういう制度を我が国に急に持ち込む訳には行かないのは明らかだ。残業料を支給することが企業の固定費(と考えても良いのかと思う)が増えて困るというのだったならば、最初から人事部だの勤労部で査定せずに、所属の長が全員の前年度の残業代まで含めた所得を見て、諸手当を排除して年俸一本に定めてしまえば良いではないか。即ち、何時間超過勤務しようと会社が強制したのではなくなるのだ。

それでは、ボーナスや退職金の金額が増加しすぎるという心配も生じるだろう。そうであるならば、「最初からそういう金額の算出の基準を元の本給を基準とするようなことにでも話し合いでもしておけば良くはないのか」などと勝手に考えている。これは暴論かも知れないが、私が考えていることは「各人が何時間働くかは自分で決めれば良いことで、政府や会社が介入するのは不自然だ」との考えを述べているに過ぎないのだ。

経験から言えることは「アメリカ式の方が自分のことは自分で処理せよ」であって、達成できなければ自分一人だけの結果責任で諦めが付くのだ。だが、一歩どころか半歩誤っても馘首が待っている世界だった。それと比べれば、我が国の企業社会の方が遙かに温情的だとは思う。だが、アメリカでは同期入社の者たちとの比較などないし、全ては自分に返ってくるので、諦めが付きやすかったとも言える。

結論めいたことを言えば、日米の何れが良いかなどと言う選択ないと思う。私は向き不向きだけだと思う。アメリカに行けば「身分と地位の垂直上昇は先ず期待できないが、定年制度はないし、成績次第では何歳になろうとも昇給させてくれるという、我が国にはない慣習がある。余り上手く纏めきれなかったが、日米間の違いの概要がお解り願えれば幸甚だ。



コメントを投稿