新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカ人の怖さ

2018-03-29 10:05:08 | コラム
100人に1人の優れ者たち:

私は以前から「アメリカ人という者たちは精々100人に1人が例えようもなく抜群に優れており、残る凡庸な99人を率いている。故に、その指導者である極めて優秀な者が一歩誤れば、その集団全体が危機に陥るか倒れてしまうのだ。これがアメリカという世界の恐ろしさであり、集団というか『皆でやろう』という精神の元で動いている我が国では先ずあり得ないこと」と説いてきた。

そして、22年以上も実務の世界で「100人の(あるいは1,000人の)中の1人の凄さをイヤというほど実地で経験したし、見聞もしてきたのだった。しかも、その99人の指導者となる者たちは最初からそうなるべ名家か良家か資産家に生まれ、その豊かさを活かしてそういう地位に到達すべき教育をIvy Leagueのような今では年間の学費が600~700万円にも達する大学で経営学修士号を獲得してビジネスの世界に入ってくるのだ。

そういう連中は出会ってみれば分かることで、誠に頭脳明晰というか賢明というか“sharp”という言葉で形容される極めて優秀な者たちなのである。「何だ、そういう者ならば我が国にも高級官僚や優れたビジネスマンにいくらでもいるではないか」と言われそうだ。だが、アメリカには我が国と異なる点がある。それはその100人に1人は幼少期からそうなるべき教育を受けて来ているし、家族全体がそういう雰囲気なのである。

考えてみるまでもないことで、4年制の大学の後で4年間の実務経験を経て入学するビジネススクールの2年間に要する学費は(4年間の実務経験の間を除けば)3,600~4,200万円に達するのだ。奨学金や学生ローンを考えなければ、これだけの負担に軽々と耐える家庭に生まれなければ、ビジネスの世界で生き残り且つ指導者の地位には上がっていけないのがアメリカである。

経験上も言えることだが、そこまで昇進してきた者たちは確かに何事においても「頭が良いな」と嘆息させられた経験があった。それは忌憚のないところを言えば「何という狡さだ」というか「そこまで作戦を立てるとは狡猾な」と驚かされるほど悪知恵が発達している者がいるのだ。私流に表現すれば「流石にCIAがある国だ」とでも言いたくなる巧妙且つ悪辣な作戦を色々な場面で展開してみせるのだ。我が国のような性善説を信奉していては考えられない恐ろしさがある。

別な見方をすれば、あの生存競争が激烈な組織の中で階段上がるというか、スピードトラックを順当に突き進んでいく為には尋常な頭脳と知恵だけでは、アッという間に蹴落とされてしまう危険性が秘められているのだ。更に観点を変えれば、MBAやPh.D.は出世の為には必須だが、それだけでは生き残れるかどうかを保証しないので、際は見えない容易に生き残れない世界だということ。

そのような世界で何度か倒産の憂き目に遭っても起き上がって、不動産業界で確固たる地位を築き上げて名を為してこられたドナルド・トランプ氏は、一筋縄ではいかぬ人物だと思って付き合っていく必要があると思っている。現に就に以来20人以上もの閣僚を含めた重要な側近というか補佐官を切ってきた辺りを見れば、政治の世界でも如何に生き残っていくかは十分に心得ておられると見た。

より解りやすく言えば、安倍総理が自分のこれからの米国大統領としての職責を果たし且つ守っていく為には必要な人物と見れば、フロリダの別荘に招待し、ともにゴルフを楽しむような歓待をして見せたのだと私は見ている。自分の役の立つと見える間は徹底的に活用するのが、彼らの行動様式であると、経験的に考えている。詳細は避けるが、私自身もそういう捨てられ方をされかけたこともあったのだ。

そうであれば、アメリカ対DPRKの首脳会談や、中国とDPRKの関係改善の首脳外交に安倍総理が介在する余地がないと思えば、金正恩の訪問の告知があっても、安倍総理に知らせなかったとしても不思議ではない。嘗ては、ニクソンの頭越しの中国訪問があったではないか。このようなアメリカの指導者のやり方を「狡猾」と見るか、自分の都合を優先する手前勝手と見るかは、意見が分かれるだろう。

だが、彼らの中に入って長年見ていれば「そういう者たちだ」と見えて来ると思っている。要するに付き合い方を十分に考慮せよということ。



コメントを投稿