新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

金正恩委員長の歩み寄りの姿勢の裏に何があるか

2018-05-01 13:42:53 | コラム
糖衣にくるまれた錠剤のような外交戦術:

私は金正恩委員長の南北首脳会談における言辞は多くのところで「本心を巧みに覆い隠した甘い囁き」だと思って聞きました。あのような一聴心地良い響きがある語り口を、在職中に上司だった副社長と常に何処のどの何方が相手でも 「sugar coated speech には騙されるな」と警戒をおさおさ怠りませんでした。英語の講釈をすれば “sweet talk”なんて言いますが。

特に金正恩委員長が相手では、就任以来張成澤を始めとして義理の兄までを葬ってしまったような人物がどれほど聞き心地が良いことを述べても、一先ず疑ってかかるのが筋だと思うのです。文在寅大統領が如何に南北統一にまっしぐらであるとは言え、金正恩委員長の言葉の裏に何があるを疑ってかかるくらいの分別はあるものと思って見ていました。

金正恩委員長が如何に核実験を辞めると言おうと、ここでもアメリカは言うに及ばず、韓国側もナイーブに信じることなく、核兵器の廃棄と同様に徹底してCVIDに徹すべきだと思うのです。そこでは、例え金正恩が不快感を示そうとも怯んではならないと思います。糖衣錠の中身は何が入っているかなどは、先ずは疑ってかかるべきでしょうから。

しかし、問題になるだろう事は「余りに露骨にDPRK側の主張を疑ってかかれば、彼らは『疑ってかかるのであれば、我々にも考えがある』と、それまでの歩み寄りの姿勢を転換するだろう事まで計算に入れておく必要がある」と考えます。この辺りの微妙な駆け引きは二進法的に割り切って「イエスか、ノーか」と迫るのではなく、適当な柔軟性が求められると思っています。

私は金正恩委員長の究極の狙いは「南北統一を成し遂げて、韓国に駐在してきた核兵器を装備しているかも知れないアメリカ軍を撤退させ、尚且つ新たに発足する南北統一の連邦が何処かに核兵器を温存する強力な軍事国家を形成すること」にあるのではないかと真剣に疑っています。

その大目的の為には甘い甘い砂糖でコーティングした言辞を弄して、あわよくばアメリカと韓国を今回も騙そうとしているのではないかとの疑念を持っています。正直なところを言えば、このような私の懐疑的な見方が杞憂であって欲しいのですが。