新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

私が嫌う国語を乱すカタカナ語と造語 最終回

2014-06-18 07:48:02 | コラム
合成語:

ここに採り上げるのは「漢字ないしは熟語とひらがなの表現にカタカナ語を組み合わせたもの」であり、私が好ましいと思っていない例である。その例を幾つか挙げるに止める。

*自己ベスト personal record or one’s record、
解説)これも完全に戸籍を得て、マスコミどころか一般人も広く使っている。何も "best"(=ベスト) などと言わずに素直に「自己最高(記録)」で良くはないか?私は以前にはこの漢字だけの言葉が主流だったと思っていた。こういう言葉をテレビ等の映像だけでなく音声から耳に入れられると、その影響が強く、私の目から見た良貨を駆逐する結果になったと考えている。

私の率直な意見では「このようにカタカナ語を入れて何となく格好良く、ないしはスマートに見せようとするところが厭らしいのであり、そこが嫌い」なのだ。同様に「ベストを尽くす」も嫌いだ。「私は最善を尽くします」で何処がいけないのだろう?「出きり限りのこと」でも良いと思う。

*スチール写真 still picture、
解説)私はスチールが "still" で「静止写真」と解るまでに60年以上もかけてしまった。「鉄板( "steel" )の写真」があるのかなという疑問があったためだ。"Motion picture" の反対語か?

*電子レンジ microwave oven、
解説)何となく "electronic range" ではないかと思わせるが、原語はそうではなかったのが凄い。 "range" には調理器具の意味があって、"gas range"(=ガスコンロ)なんていうのもある。でも、これは上手い造語だなと思っている。

*アドバイスする advise or advice、
解説)これは何と言って批判?したらよいのか迷う。"advice" が名詞形で "advise" という動詞がありながら、「アドバイス」と仮名書きにしてその後にご丁寧に「する」をつけている。即ち、名詞形を採ったのだろう。「助言」、「忠告」、「勧告」、「通知」ではいけないのか。他にも、タッチする、オープンする、リードする、アップする、ダウンする等がある。興味を引くのが「アップ」= "up" と「ダウン」="down" だけは副詞か前置詞である点だ。勿論エレベーターの「上がり」「下り」のように名詞形で使われている場合もあるが、そこまで考えて合成語に仕立てたならば、矢張り先人の知恵には敬意を表したい。

*ノミネート(する)       nominate、
解説)上の例に加えても良かったが、単独にした。日本語の文章の中では「XX氏が芥川賞にノミネート」のようになっている例が多い。普通の英文では "X was nominated for the Akutagawa Prize." のように受け身にして使うもの。素直に「~を推薦する」で良いじゃないか。しかも、通常は過去形になってしまうはずが日本文では正々堂々と現在形だ。英語のような現在形と過去形がないのだから仕方がないが、こんな事をしていて「国際語としての英語を学ぼう」もないものだ。

さらに「XXをノミネートする」となれば、行為の当事者となる主語が先行しなければならない。推薦したのが審査員のか出版社なのか新聞社なのか、あるいは読者なのかをハッキリさせねば英語では文法的におかしくなる。それとも "they" で逃げておくかだが、「主語+述語」の形を採らないと正確な英文にならないとチャンと教えておくべきだが、教えられた方が理解していなかったのか。

*~をゲット(する)        get or got or have gotten、
解説)テレビで毎度お馴染みの語法だ。99%の場合に既に何かを手に入れた後で「~をゲット」と表現している。こんな奇妙なことを言わずに「~を入手」か「~を獲得」か「~を購入」で良いのに、何故か「ゲット」(="get" )を使いたがる。これは過去のことだから、文法的には「ガット」(~を "got")としたい。

嘗て故・大沢親分は外野手の中間に上がったフライを「俺が捕る」と声をかけるべきで、その時は「アイガリと言え」とテレビで教えていた。これを英語にしてみれば "I got it." で過去形になってしまう。「恐らく "I get it." か "I’ll get it." だったのだろう。彼に教えた先輩がそう言ったのだろうから、親分の責任ではない」と好意的に解釈している。

*チョイスする   choose、
解説)上記の例と同じ手法で作り上げたものだろう。"choice" が "choose" の名詞形だ。これは不規則動詞で過去形は "chose" である。一連の「~する」のように使われているのは圧倒的に不規則動詞だ。思うに、過去形が思い浮かばなかったのでは。こんな合成語を使わずに「選択する」か「選んだ」で良いじゃないか。

結び:
アルファベット順でも五十音順でもなく手当たり次第に採り上げたことをお許し頂きたい。これ以外にも掬い損ねた言葉が数多くあると確信している。私は自分の書くものにはカタカナ語を使うことを極力避けるようにしている。そうしても文章も書けるし、会話だって普通にできる。

ここには採り上げなかった言葉の中には、私の記憶にある限りでは1950年代に既に使われていたものに「ドラステイック」があった。これは「徹底的に」か「思い切った」という意味で使われていた。何となく格好が良いのかなと思って聞いていた。しかし、後年気が付いたのだが、アメリカ人はこういう言葉を使わないし、私の英語力では使った記憶もない。Websterには "acting rapidly or violently" とあってどうもカタカナ語の意味するところと違う。Oxfordには "extreme in a way that has a sudden, serious or violent effect on ~" とある。

では何と言うかと言えば多くの場合に "dramatic" が使われていた。Websterには "dramatic"は "vivid" と “striking in appearance or effect" となっている。私はこの頃から既に単語帳的知識の弊害があったと認識している。

何はともあれ、カタカナ語を見たら、先ず本当の英語であるか否かを疑うことと、英語が意味したように正しく使ってあるか否かを、あらゆる辞書と検索で確認して頂きたい。ここで重要なこことは単語の意味だけに止めず「流れの中では如何なる意味に使われているか」である。

ここまでは、英語とそれらしきものを取り上げたが、他にもフランス語(例えばアンケート)、ドイツ語(例えばペーハー=pH)、イタリア語(例えばパスタ)も外来語として戸籍を得ている例がある。

ここまでに採り上げてきたカタカナ語を皆様がどう使われようと私の介入する問題ではない。繰り返し申し上げておくと、そのカタカナ語は99%が本当の英語ではないことを知っておかれれば、ここまで書いてきたことの目的は達成されたのだから。ここまでお読み頂いたことを心から感謝して終わります。


(終わり)