619『自然と人間の歴史・世界篇』(ベネズエラ、1960年代~)
ベネズエラでは、1945年にクーデターが起こる。若手将校のグループUPM(軍人愛国同盟)がAD(民主行動党)を巻き込んだものだ。臨時政府が樹立され、ベタンクールが臨時の大統領に。石油を中心に、政府の権益を拡大。また開発公社を設立し、工業化などをめざす。1945年に農地改革が行われたものの、「受益者は主にAD系の農民組織にかぎられていた」(増田義郎編「ラテン・アメリカ史2」山川出版社、2000)という。
1947年憲法による総選挙が実施されると、ADのロムロ・ガイェゴスが大統領になる。
ところが、1948年には軍部がクーデターを起こす。URD(民主共和連合)の総選挙での勝利を覆してぺレス・ヒメネスが政権を握り、1947年憲法を停止する。これに対し反独裁愛国戦線が1957年6月に成立し、政権に反対する。1958年には、選挙の実施などを求めゼネストが起こり、これに軍部が呼応して政権を倒した。
ベネズエラの状況は、21世紀に入ってからは大きな変化が進行中だといってよいだろう。
2013年3月には、チャベス大統領が死去し、カリスマ的指導者がいなくなったことで政治の流動化が始まる。4月の大統領選挙で、後継指名を受けたマドゥロが当選を果たす。
2015年3月、アメリカのオバマ政権が経済制裁を発動する。この措置により、ベネズエラ政府関係者
7人のアメリカ国内の資産が凍結されるとともに、アメリカの金融機関との取引が止められる。
2017年4月には、反政府デモが起こる。7月、政府が制憲議会選挙を強行する。野党勢力はこれをボイコットし、結果的に大統領派が議席をほぼ独占するにいたる。2018年1月、選出された制憲議会が大統領選挙の前倒しを発表する。
2月には、原油を担保とする仮想通貨「トロ」を発行する。3月、政府は、記録破りの物価上昇に対処するべく、6月4日付けで通貨の単位を1000分の1に切り下げるデノミネーションを実施すると発表する。
5月、マドゥロ大統領が再選を果たす。アメリカのトランプ政権が追加制裁を発表する。その内容は、ベネズエラ政府や政府系企業のアメリカ経由での資金調達を禁じるものだ。同月、ベネズエラ政府は予定のデノミネーションを60日間延期し、8月4日付けで実施すると発表する。その際、切り下げ幅を10万分の1に拡大すると発表する。そして迎えた8月20日、政府はデノミネーションを強行する。
(続く)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆