製作地 インド南東部 コロマンデル海岸エリア
製作年代(推定) 17-18c初期
素材/技法 木綿、天然染料 / 手描き、媒染、防染、両面染め
裂サイズ 幅:109cm、縦:97cm
●参考画像1 同時代の古渡りインド更紗が羽織に仕立てられた例(絵図)
「阿国歌舞伎図屏風(部分)」17世紀 サントリー美術館所蔵
※上画像は平凡社刊「別冊太陽 更紗」より転載いたしております
細手の手紡ぎ糸を素材に目の詰んだ平滑な織りがなされた上手木綿地、その両面からカラムカリ(手描き)の媒染・防染による手の込んだ絵柄が染め表わされた、インドネシア・スマトラ島ランプン交易向けとして知られる17-18c初期作の「古渡りインド更紗」。
茜鉄漿媒染の”黒”の色味が独特で、藍が広範かつ白場への緻密な点描(ゴマ手)を交えて両面で破綻なく染め上げられている技術の高さは特筆すべき点、色の堅牢度をあわせ、3百余年を遡る時代、インド(更紗)のみが表現可能であった特殊な染色技法となります。
布両端に鋸歯模様が配された交易向けのインド更紗は、スマトラ島南部のランプンやパレンバンでとくに愛好されたもので、16c~19c末(20c初)の長きにわたる期間、当地にもたらされましたが、糸・布の表情、染め表情は時代とともに変遷(おおむね劣化)しており、香辛料・香料生産及び交易の地理的重要性が最も高かった17-18c初のものに格段の充実ぶりが見られます。
そして本布と同手のインド更紗は江戸時代初中期の日本にももたらされており、大名・貴族・茶人等に愛玩されたことは、現在に伝わる更紗裂帖(手鑑)や屏風等の絵図により確認できます。
この手描き・両面染めインド更紗は、ほんの数cm角の小裂が高名な更紗手鑑に入っていたとしても他裂と遜色が無いであろう、充実期の古渡りたる格調の高さと優美さが薫ってまいります。
●参考画像2 同時代の古渡りインド更紗が着物に仕立てられた例(絵図)
「観桜遊楽図屏風(部分)」17世紀 ブルックリン美術館所蔵
※上画像は平凡社刊「別冊太陽 更紗」より転載いたしております