令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

旅人編(18)倭も此処も

2009年10月24日 | 旅人編
【掲載日:平成21年12月1日】

やすみしし わご大君おほきみの 食国をすくには やまと此処ここも 同じとそ思ふ

吉田宜よしだのよろしに 便りが届く
そこには 旅人たびとの 弱々しい姿があった
わが盛り いたくくたちぬ 雲に飛ぶ 薬はむとも また変若ちめやも
《もう年や  長生き薬 飲んだかて 若返ること できやせんがな》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八四七〕 
雲に飛ぶ 薬はむよは 都見ば いやしきが身 また変若ちぬべし
《長生きの 薬飲むより 一目ひとめでも 都を見たら また若返る》
                         ―大伴旅人―〔巻五・八四八〕 
〔これは  どうしたことか
 こんな  気弱な旅人 見たこともないぞ
 高熱を帯びた足のれ 歩きもままならぬよし
 処方をとの願いもあるが  一刻を争う病状じゃ
 わしが出向いても  間に合わぬ
 筑紫にる 友の百済医師に託すか
 それにしても  筑紫は 遠い
 しばらく会わぬうち かようなわずらいとは〕 
遙遙はろはろに 思ほゆるかも 白雲の 千重ちへへだてる 筑紫つくしの国は
《白雲が 隔てて遠い 筑紫国 思う心も 遥々はるばる遠い》
                         ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・八六六〕
君がゆき 長くなりぬ 奈良路なる 山斎しま木立こだちも かむさびにけり
《行ってもて 長い日たった 奈良の家 庭の木立こだちも うら寂びてもた》
                         ―吉田宜よしだのよろし―〔巻五・五六七〕

急ぎの返し文が  旅人に届く
病の床  身動きさえもならぬ旅人
〔なんと言うておる 
 なに 
 なまじの治療では 如何いかんともし難いと言うか
 この上は  切開の術を用いるべしと・・・
 情けなくも  恐ろしい事じゃ
 おお  家の木立 繁りっぱなしとか
大和が  恋しいのう
 わしも  心根を弱まらせたものじゃ
 昔 石川足人いしかわのたりひと殿には
 強気で言い返したものだったに・・・ 
あれは 大宰府着任なしのころか〕
さす竹の 大宮人おほみやびとの 家と住む 佐保の山をば 思ふやも君
《あんたはん  奈良の都で 住んどった 佐保のお山が 懐かしないか》
                         ―石川足人いしかわのたりひと―〔巻六・九五五〕
やすみしし わご大君おほきみの 食国をすくには やまと此処ここも 同じとそ思ふ
《何を言う 何処どこっても おんなじや 日本の国やで 大和もここも》
                         ―大伴旅人―〔巻六・九五六〕 
〔年は取りたくないものじゃ〕 
身を横たえたまま  傷心旅人 
力ない目が  遠くを見やる



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