【掲載日:平成21年12月24日】
皆人の 命もわれも み吉野の
滝の常磐の 常ならぬかも
「千年殿だと 気は張らぬが
赤人殿じゃと そうは行かぬ」
われ知らず 競争意識が先に立つ 金村
神亀二年〔725〕 夏五月 吉野の離宮
先ず 山部赤人に 詠歌のお召があった
『やすみしし わご大君の・・・』に始まり 川褒め山褒めが続き 宮の永遠なるを 詠う
人麻呂以来の 継習わされた 長歌の詠い
続く反歌に 金村は 仰天した
み吉野の 象山の際の 木末には ここだもさわく 鳥の声かも
《吉野山 象山木立ち 梢先 鳥がいっぱい 囀る朝や》
―山部赤人―〔巻六・九二四〕
穏やかならざる 心を胸に 笠金村は 詠う
あしひきの み山もさやに 落ち激つ 吉野の川の 川の瀬の 清きを見れば
上辺には 千鳥数鳴き 下辺には かはづ妻呼ぶ
ももしきの 大宮人も をちこちに 繁にしあれば
《爽やかな 激流の谺 響いてる 吉野の川の 川の瀬の 清い流れの 上流で
千鳥鳴いてる 下流では 蛙妻呼び 鳴いとおる
大宮人も あちこちで 大勢居って 遊行んでる》
見るごとに あやに羨しみ 玉葛 絶ゆること無く 万代に かくしもがもと
天地の 神をそ祈る 畏くあれども
《心惹かれる いつ見ても 何時何時までも このままで あって欲しいと 祈るんや
神さん宜しゅう 願います》
―笠金村―〔巻六・九二〇〕
万代に 見とも飽かめや み吉野の 激つ河内の 大宮所
《永遠までも 見飽けへんなあ この吉野 激し流れの 大宮所》
―笠金村―〔巻六・九二一〕
皆人の 命もわれも み吉野の 滝の常磐の 常ならぬかも
《このわしも 皆の命も 永久続け 吉野の滝の この岩みたい》
―笠金村―〔巻六・九二二〕
〔反歌は 長歌の一部反復か 総纏めが 常の道
しかるに あれは なんじゃ
新しき試みと言えば 聞こえはいいが・・・〕
金村の 耳に 赤人の声が 残る
『・・・ここだもさわく 鳥の声かも』
〔この 清々しさは どうじゃ
何とは無しの 景の歌
詠み人の心根 何一つ 言葉にして居らぬに 伝わってくるものがある・・・〕
〔わしは 古いのかも 知れぬ・・・〕
夜更け まんじりともせず 床に座す 金村
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