令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

金村・千年編(9)岸の黄土(はにふ)に

2009年12月22日 | 金村・千年編
【掲載日:平成22年1月6日】

白波の 千重に来寄する 住吉すみのえ
           岸の黄土はにふに にほひて行かな



千年ちとせ殿 先の難波行幸みゆきの歌 あれは 徴罰ちょうばつものぞ 恋女房が 詠われて居らぬ」

鯨魚いなさ取り 浜辺はまへを清み うちなびき ふる玉藻に 
朝凪あさなぎに 千重ちへなみ寄せ 夕凪ゆふなぎに 五百重いほへなみ寄す
 
なびくよに 清い浜辺に える藻に 朝波寄せる 夕方も》
つ波の いやしくしくに 月にけに 日に日に見とも 今のみに 
飽きらめやも 白波しらなみの いめぐれる 住吉すみのえの浜

《その波みたい 次々と 毎月毎日 見にたい 今の満足 するだけじゃ
 もったいないな 白波の 花が咲いてる 住吉すみのえ浜辺はまべ
                         ―車持千年くるまもちのちとせ―〔巻六・九三一〕
白波の 千重に来寄する 住吉すみのえの 岸の黄土はにふに にほひて行かな
《次々と 白波寄せる 住吉すみのえの 黄色きいろの土で 服染めようや》〔住吉の黄土はにゅうは染料として有名〕
                         ―車持千年―〔巻六・九三二〕 

「これは したり 我輩それがしとて 女房恋しの 歌ばかしではないわ
 金村殿こそ  いつもいつも 実直ぶっての歌ばかり
 たまには たわむれ歌など ご披露に及んでは 如何いかがじゃ」
「申したな 我輩それがし そんな朴念仁ぼくねんじんではないぞ」 

大君おほきみの さかひたまふと 山守やまもりすゑ  るとふ山に 入らずはまじ
《天領や 言うて締め出し 番置いて 監視してても はいらでくか》
                      〔女官にだって 声を掛けるで〕
見渡せば 近きものから 石隠いそがくり かがよふたまを 取らずは止まじ
《覗き見て 近い思ても 岩の陰 輝く真珠 取らんとくか》
                    〔女官言うても 物にしたるで〕
韓衣からころも 服楢きならの里の 島松しままつに 玉をし付けむ き人もがも
《庭の松 キナラの里の 名木や 似合う玉欲し ひと欲しな》
                    〔ええ女には 似合男にあいが要るで〕
男鹿をしかの 鳴くなる山を 越え行かむ 日だにや君に はた逢はざらむ
《鹿でさえ  つれ呼び求め 鳴く言うに 旅出るあんた 逢わんといくか》
                         ―笠金村歌中―〔巻六・九五〇~九五三〕 
「これは これは これだと のちの世に 我輩それがしの歌かと 取り違えられるやも 知れぬ」
千年は  カラカラと 笑う
神亀じんき五年〔728〕着々と進む 難波宮造営工事 
検分けんぶんを兼ねての行幸みゆき
従駕じゅうがの官人たちの はなやぎにつられ
金村も  千年も 浮かれていた

同席の 膳王かしわでのおおきみ 微笑ほほえみながら 静かに詠う
あしたには 海辺うみへあさりし 夕されば やまとへ越ゆる かりともしも
《朝のうち 海でえさ取り 夕方は 大和へ帰る 雁うらやまし》
                         ―膳 王かしはでのおほきみ―〔巻六・九五四〕
明くる 神亀じんき六年〔729〕二月
長屋王の変により 父に連座し死をたまわる 膳王



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