令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

金村・千年編(4)愛(うつく)し夫(つま)は

2010年01月08日 | 金村・千年編
【掲載日:平成21年12月21日】

大君の 行幸みゆきのまにま 物部もののふの 八十伴やそとも
                で行きし うつくつまは・・・



神亀じんき元年〔724〕冬十月 紀伊国きのくにへの行幸みゆき
聖武天皇が  即位され 初めての行幸である
笠金村かさのかなむらは 従駕じゅうがの任を 帯びていた
で立ちの朝 宮中へと駒を進める金村に 駆けよる 一人の官女
「金村様に  お願いがございます
 夫が  行幸に お供いたします
 心配で ならぬ心 うたいたくはあるのですが わたくし如きでは とてものこと 
 そこで 金村様に かわり歌を お願いしたいのです」
 親しみと優しさを  感じさせる 金村の歌
 その評判を聞いての  官女の 頼み

大君の 行幸みゆきのまにま 物部もののふの 八十伴やそともと で行きし うつくつま 
天皇おおきみさんの 行幸みゆきに付いて お伴の人と 出かけたあんた》
天飛あまとぶや 軽の路より 玉檸たまだすき 畝火うねびを見つつ 麻裳あさもよし 紀路きぢに入り立ち  真土山まつちやま ゆらむ君は 
《軽の道から 畝傍を眺め 紀の国はいって 真土まつちの山を 越えて行くんか いとしいあんた》
黄葉もみちばの 散り飛ぶ見つつ にきびにし われは思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと 
黄葉もみじ散るのを 綺麗きれいとながめ うちのことなど すっかり忘れ 旅楽しもと おもうてなさる》
あそそには かつは知れども しかすがに 黙然もだもありえねば 
《そんな気持も 分かるんやけど ひとり待つんは 辛抱出来ん》
わが背子せこが ゆきのまにまに 追はむとは 千遍ちたびおもへど 手弱女たわやめの わが身にしあれば 
《あんた行く道  追いかけ行こと 思うてみても 女の身では》
道守みちもりの はむ答を 言ひらむ すべを知らにと 立ちて爪つまづく
《道の番人 問い詰めされて 言い訳できる 自信がうて 出かけるのんを 躊躇ためらうこっちゃ》
                         ―笠金村―〔巻四・五四三〕 
おくれゐて 恋ひつつあらずは 紀伊の国の 妹背いもせの山に あらましものを
《あんたはん あとに残って しのぶより 妹背の山で りたいもんや》〔一緒に居れる〕
                         ―笠金村―〔巻四・五四四〕 
わが背子せこが あとふみ求め 追ひ行かば 紀伊の関守い とどめてむかも
《追いかけて あんた行く道 辿たどっても 紀伊の関守 めるんやろな》
                         ―笠金村―〔巻四・五四五〕 
〔あの官女の思い うまくうたえたであろうか〕
納得しつつも  いまひとつ 官女の心が気になる 金村であった


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