【掲載日:平成21年12月17日】
・・・神柄か 貴くあらむ 国柄か 見が欲しからむ
山川を 清み情けみ うべし神代ゆ 定めけらしも
【宮滝の激湍】

「赤人殿は いずれを 目指される」
当代を担う 宮廷歌人 三人が 集うていた
笠金村 車持千年 山部赤人
「人麻呂殿が 居られぬ今 宮廷歌人としての役目 われら三人に 託されておる
人麻呂殿の 得意とされた長歌 そのうち わしは 枕詞に 重きを置きたいと思う」
「私も 尊敬する人麻呂様の 後を辿り 対句の妙を 極めたいと 思っております」
養老七年〔723〕夏五月
元正天皇の吉野離宮への行幸
笠朝臣金村は詠う
滝の上の 御舟の山に 瑞枝ざし 繁に生ひたる 栂の樹の
いやつぎつぎに 万代に かくし知らさむ み吉野の 蜻蛉の宮は
《急流の ほとり聳える 三船山 好え枝いっぱい 付けた栂 葉ぁ次々に 付ける様に
何時の世までも 続いてく 吉野の里の 蜻蛉宮》
神柄か 貴くあらむ 国柄か 見が欲しからむ 山川を 清み情けみ
うべし神代ゆ 定めけらしも
《神さんやから 貴いで 国土が好えから 魅かれるで 山川ともに 清らかや
昔にここを 大宮所と 決めなさったも もっともや》
―笠金村―〔巻六・九〇七〕
毎年に かくも見てしか み吉野の 清き河内の 激つ白波
《来る年も また来る年も 見たいんや 吉野の川の 激しい波を》
―笠金村―〔巻六・九〇八〕
山高み 白木綿花に 落ち激つ 滝の河内は 見れど飽かぬかも
《飽けへんな 白木綿花みたい ほとばしり 流れて下る 川の激流は》
―笠金村―〔巻六・九〇九〕
【ある本の反歌】
神柄か 見が欲しからむ み吉野の 滝の河内は 見れど飽かぬかも
《神さんが 宿ってはるから 見たいんや 吉野の滝は 飽けへんこっちゃ》
―笠金村―〔巻六・九一〇〕
み吉野の 秋津の川の 万代に 絶ゆることなく また還り見む
《いつまでも 水の絶えへん 秋津川 また見に来るで またまた見ィに》
―笠金村―〔巻六・九一一〕
泊瀬女の 造る木綿花 み吉野の 滝の水沫に 咲きにけらずや
《咲いてるで 吉野の滝の 波の上 泊瀬の娘 造る言う木綿花》
―笠金村―〔巻六・九一二〕
詠い終え 笠金村は 「ふうっ」と息を吐く

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