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ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

日めくり万葉集<9月>(その7)

2009年12月16日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月16日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★待つことに 慣れた額田王おおきみ もう来ぬと 思えどもしや 来ることあるか
君待つと 我が恋ひ居れば 我が宿の すだれ動かし 秋の風吹く
《あっすだれ 動いたおもたら 風やんか あんまりうちが 焦がれるよって》
                         ―額田王―〔巻四・四八八〕 

★連れ合いが 居るのに誘う 人あるか 昔馴染みや 云うてもあかん
あかねさす 紫野行き 標野しめの行き 野守は見ずや 君が袖振る
《春野摘み  野守りが見るで 行き来して こっちを向いて 袖振ってたら》
                         ―額田王―〔巻一・二〇〕 

宅守やかもりの ”恋苦くるしいよって 死んでまお” 言うのいさめて 娘子おとめは気丈
命あらば  逢ふこともあらむ 我がゆゑに はだな思ひそ 命だに経ば
《そう言いな  命あったら 逢えるやん 思い詰めなや うち気に病んで》
                         ―狭野弟上娘子さののおとがみのをとめ―〔巻十五・三七四五〕


日めくり万葉集<9月>(その6)

2009年12月14日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月14日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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陸奥みちのくに 金出きんで寿ぐ 帝詔書しょうしょ 族の誉れに いたく感じて


大伴の 遠つ神祖かむおやの その名をば 大久米主おほくめぬしと 負ひ持ちて 仕へしつかさ
海行かば 水漬みづかばね 山行かば 草かばね 大君の にこそ死なめ
かへり見は せじと言立ことた大夫ますらをの 清きその名を いにしへよ 今のをつつに 流さへる
おやの子どもぞ 大伴と 佐伯さへきうぢは〔抜粋〕

《大伴の ご先祖様の 大久米おおくめの ぬしの名前を 背に負いて 朝廷仕えし 家柄で 
「海を行くなら  水に死に 山を行くなら 野に倒る 大君のため 死のうとも 悔いなぞない」と 
言い放つ 武人の心 刻む名を 絶えることなく 今昔いまむかし 
続く氏族の 末裔まつえいぞ 大伴一族 佐伯族・・・》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇九四〕 


日めくり万葉集<9月>(その5)

2009年12月10日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月10日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★きのこ類 香り松茸 味しめじ 山いっぱいの 香り嗅ぎたや
高松の このみねに 笠立てて 満ちさかりたる 秋ののよさ
《まつたけが 高松山の 峰覆い え盛ってる 秋の香りや》
                         ―作者未詳―〔巻十・二二三三〕 

★持つ人が 居るか居らんか 判らんが すること無けりゃ 寝るしかないで
あしひきの  山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
《長い夜は 山鳥尻尾しっぽと おんなじや 所在しょざいないから 寝ると仕様しょうかい》
                         ―作者未詳―〔巻十一・二八〇二〕 

★酒飲んで ええこころもち 旅人はん 覚めたらしゅんと するんとちゃうか
この世にし 楽しくあらば む世には 虫に鳥にも 我れはなりなむ
《この世さえ  楽しできたら 次の世は 虫とか鳥に 成ってもええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三四八〕 


日めくり万葉集<9月>(その4)

2009年12月08日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月8日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★お前との 至福の時を 思い出し ええ月見たら 嬉しなるんや
春日山  おして照らせる この月は 妹が庭にも さやけくありけり
《いっぱいに  春日の山を 照らす月 お前の庭でも きれいやったな》
                         ―作者未詳― 〔巻七・一〇七四〕

★目に入れて 痛うないんが 子供やで 金銀真珠 入れたら痛い
しろかねも くがねも玉も 何せむに まされる宝 子にしかめやも
《金銀も  真珠の玉も そんなもん なんぼのもんじゃ 子供一番》
                         ―山上憶良― 〔巻五・八〇三〕

★外で見る 女はみんな 蓮の葉で うちるのん 芋女房にょうぼやで
蓮葉はちすばは かくこそあるもの 意吉麻呂おきまろが 家なるものは うもの葉にあらし
《蓮の葉は こんな立派な もんなんか それ比べたら うちのは芋葉いもや》
                         ―長意吉麻呂ながのおきまろ―〔巻十六・三八二六〕


日めくり万葉集<9月>(その3)

2009年12月04日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月4日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★顔合わす たんび微笑み こぼれるで お前見てたら この世天国

若草の 新手枕にひたまくらを まきそめて 夜をやへだてむ 憎くあらなくに
《初めての とこともしたで 一晩も 離すもんかい 可愛かいらしお前》
                         ―作者未詳―〔巻十一・二五四二〕 

★鵜の鳥を 潜らせ鮎を 捕らせつつ 鄙の暮らしに 和みを寄せる
年のはに 鮎し走らば 辟田川さきたがは 鵜八つかづけて 川瀬尋ねむ
《毎年に 辟田さきたの川で 鵜飼いしょう 鮎飛びねる 季節なったら》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一五八〕 

天皇すめろぎに 捧げる歌に 願い込め 健やかあれと 家持祈る
ときはな いやめづらしも かくしこそ あきらめめ 秋立つごとに
《季節ごと 咲く花々は うるわしい ご覧ください 秋来る度たびに》
                         ―大伴家持―〔巻二十・四四八五〕 


日めくり万葉集<9月>(その2)

2009年12月01日 | 日めくり万葉集
■平成21年12月1日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★船団は 那の津目指して 西へ行く 百済を救え 新羅を倒せ

海神わたつみの 豊旗雲とよはたぐもに 入日見し 今夜こよひの月夜 清く照りこそ
なびき雲 夕日射し込み 輝いて え月照るで 間違いなしに》
                         ―中大兄皇子―(巻一・一五) 

★妖艶な 石川郎女いらつめ待って 露に濡れ 大津待ちぼけ 惚れた弱みか
あしひきの  山のしづくに 妹待つと我 れ立ち濡れぬ 山のしづくに
《お前待ち  夜更けの露に 濡れてもた お前待ってて しずくに濡れた》
                         ―大津皇子―(巻二・一〇七) 

★内緒ごと 人に知れたら 潰される 今も昔も おんなじ気持ち
嘆きせば 人知りぬべみ 山川の たぎつ心を かへてあるかも
《嘆いたら 知られてしまう 胸の内 辛抱しんぼたまらん けど辛抱しんぼうや》
                         ―作者未詳―(巻七・一三八三) 


日めくり万葉集<9月>(その1)

2009年11月27日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月27日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★空を見て ロマンの思い 浸るんは 今も昔も 一緒なんやな

あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠る見ゆ
《天  海や 雲は波やで 月船や 星林やで 漕いでん見える》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇六八〕 


★お座成りな 言葉残して 人麻呂は 戻らず鴨の 山辺で罷かる

な思ひと  君は言へども 逢はむ時 いつと知りてか 我が恋ひずあらむ
《安心し  また逢えるやん 言うたけど 逢われんかったら どないするねん》
                         ―依羅娘子よさみのをとめ―〔巻二・一四〇〕


★越中の 宴主うたげあるじの はからいの かずら頭に がる家持

油火あぶらひの 光りに見ゆる 吾がかづら さ百合の花の まはしきかも
灯明ひあかりに くっきりえる わがかずら 微笑ほほえみかける 百合花蘰ゆりばなかずら
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇八六〕 


日めくり万葉集<8月>(その3)

2009年11月24日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月24日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★新婚の 嫁さん料理 上手やで しただみレシピ 歌で歌とてる
香島かしまねの 机の島の しただみを いひりひ持ち来て 
石もち つつきやぶり 速川に 洗ひすすぎ 
辛塩からしおに こごとみ 高杯たかつきに盛り 机に立てて 
母にあへつや 目豆児めづこ刀自とじ 
父にあへつや 身女児みめこ刀自とじ

《机の島の シタダミひろろて
 石で砕いて きれえにあろろて
 塩もみしてから うつわに盛って
 おかあにあげたか お嫁さん
 おとうにやったか 嫁さんよ》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三八八〇〕 


★清楚花 悩むみたいに 見えへんが 人知られんと 堪えとるのんか
夏の野の 繁みに咲ける ひめ百合ゆりの 知らえぬ恋は 苦しきものそ
《知られんで  ひとり思てる 恋苦し 夏の繁みで 咲く百合みたい》
                       ―大伴坂上郎女―〔巻八・一五〇〇〕 


★最愛の お前残して あぢま野の 配流たび先暮らし 長ごなってもた
ほととぎす あひだしまし置け が鳴けば 我がふ心 いたもすべなし
《ホトトギス  引っ切り無しに 鳴きないな 聞いたら心 締め付けられる》
                       ―中臣宅守なかとみのやかもり―〔巻十五・三七八五〕


★親や妻 生きてるうちに 孝行こうこせな 墓に布団は 掛けられへんで
世間よのなかは まこと二代は 行かざらし 過ぎにし妹に 逢はなく思へば
《人生は 二度ないらしい 死んでもた うちのあいつに 逢われへんがな》
                         ―作者未詳―〔巻七・一四一〇〕 

日めくり万葉集<8月>(その2)

2009年11月19日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月19日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★賞金の 懸った戯れ歌 見事やと 銭二千文 手に入れたんや
我妹子わぎもこが ひたひふる 双六すごろくの ことひの牛の 鞍の上のかさ
《うちの女房かか でこに生えてる 双六の 牡牛おうしの鞍の 上のかさぶた
                        ―阿倍子祖父あへのこおおじ―〔巻一六・三八三八〕


★早春の カタクリの群れ 綺麗やな 集まる乙女 これまた綺麗
もののふの 八十娘子やそをとめらが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子かたかごの花
《娘さん  ようけ集まり 水汲みや 傍で咲いてる かたかごの花》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一四三〕 


★思いやる うちの心根 受け止めて うちの父ちゃん 沓履いたかな
信濃道しなぬぢは 今のり道 刈りばねに 足踏ましむな くつはけ我が背
信濃しなのみち 新し道や 切り株で 足痛めなや あんた沓履き》
                         ―東歌・信濃国歌―〔巻十四・三三九九〕 

日めくり万葉集<8月>(その1)

2009年11月17日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月17日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★移り行く 季節麗し 移れへん ものも麗し 素晴らし自然
立山たちやまに 降りける雪を 常夏とこなつに 見れどもかず 神からならし
《立山に 積もった雪を 夏じゅうに 見てて飽けへん 山 神さんや》
                         ―大伴家持―〔巻十七・四〇〇一〕 

★いつの世も 男強引 女待つ その気させんの どっちなんかな
上野かみつけの 安蘇あそのま麻群そむら かきむだき れどかぬを あどかがせむ
《飛びついて  お前を抱いて 寝たけども まだまだ足らん ワシどないしょう》
                         ―東歌・上野国歌―〔巻十四・三四〇四〕 

★真面目顔 してるくせして 家持は 人を茶化して 喜んどおる
石麻呂いはまろに 我物申す 夏痩せに 良しというものぞむなぎ取り
おせたろか 石麻呂いわまろさんよ 夏痩せに 鰻ええ言う 食うたらどうや》
                         ―大伴家持―〔巻十六・三八五三〕 


日めくり万葉集<7月>(その5)

2009年11月13日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月13日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★「吾子あこ」と呼ぶ 郭公鳥に 呼びかける 声聞くたびに 誰思うのか
答へぬに  な呼びとよめそ 呼子鳥 佐保の山辺を 上り下りに
《カッコウよ 返事も無いのに 呼びないな 佐保のお山を あちこち行って》
                         ―作者未詳―〔巻十・一八二八〕 

紀郎女いらつめは 本気なんかい 構うんか ぼんち家持 気が揉めるがな
昼は咲き よるは恋ひる 合歓木ねむの花 君のみ見めや 戯奴わけさへに見よ
《昼咲いて 夜は恋見る 合歓ねむの花
 ねえさま見たで ぼんちも見いや》
                        ―紀郎女きのいらつめ―〔巻八・一四六一〕

★天皇も 都移りが 寂しいか 新都平城ならへの 道黄昏たそがれ
飛ぶ鳥の 明日香あすかの里を 置きてなば 君があたりは 見えずかもあらむ
《明日香里 捨てて新都へ 行ったなら あんた居るとこ 見えんになる》 
                         ―元明天皇―〔巻一・七八〕 

★大仏の 造営進む 奈良の宮 天皇すめろき詔に 感涙むせぶ
天皇すめろきの 御代みよ栄えむと あずまなる 陸奥山みちのくやまに くがね花咲く
陸奥みちのくの 山できん出た 天皇てんのうの 御代みよの栄の しるしやきっと》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇九七〕 

★老いの身に 病重なる 憶良なお 気概旺盛 この意気を見よ
をのこやも 空しくあるべき 万代よろづよに 語りくべき 名は立てずして
丈夫ますらおと 思うわしやぞ のちの世に 名ぁ残さんと 死ねるもんかい》
                         ―山上憶良―〔巻六・九七八〕 


日めくり万葉集<7月>(その4)

2009年11月11日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月11日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★片恋や 言うて恋文 送るんは 言い訳構え するプロポーズ
ますらをや 片恋ひかたこいせむと 嘆けども しこのますらを なほ恋ひにけり
《片恋は 男のするもん ちゃうけども 仕方しょうないやっちゃ ワシ恋してる》
                         ―舎人皇子とねりのみこ―〔巻二・一一七〕

★空を見て ロマンの思い 浸るんは 今も昔も 一緒なんやな
あめの海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎかくる見ゆ
てん うみや 雲は波やで 月船や 星林やで 漕いでん見える》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一〇六八〕 

★可愛い子の 手ぇ撫でながら 頬ずりし 抱きしめ男 目に見えるよう
多摩たまがはに さらす手作り さらさらに なにそこのの ここだかなしき
《多摩川で 手りの布を さらに さらに一層 このいとおし》
                         ―東歌・武蔵国歌―〔巻十四・三三七三〕 

★衝動の 買いもんいつも こうなるで 何度やっても 懲れへん児やな
西の市に ただひとりでて ならべず 買ひてし絹の あきじこりかも
《西の市 ひとり出掛けて 絹うた よう比べんで 買いぞこないや》
                         ―作者未詳―〔巻七・一二六四〕 

★意味のない 歌を詠えの 問いかけに 応え即座の ナンセンス歌
我が背子せこが 犢鼻たふさきにする つぶれいしの 吉野の山に 氷魚ひをさがれる
《うちの人 ふんどしにする 丸い石 吉野お山で 鮎稚魚ちぎょさがる》
                         ―安倍子祖父あへのこおおじ―〔巻十六・三八三九〕


日めくり万葉集<7月>(その3)

2009年11月09日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月9日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★鮑貝 可哀想やで いつまでも 片恋してたら 結ぶんいつや
伊勢の海人あまの 朝な夕なに かづくといふ あはびかひの 片思かたもひにして
《朝夕に  伊勢の漁師が 潜り捕る 鮑貝やで ワシ片恋や》
―作者未詳―〔巻十一・二七九八〕 

★筑紫から 帰ってきたが ワシ独り 木ィ繁ってて いっそ寂しい
いもとして 二人ふたり作りし わが山斎しまは たかしげく なりにけるかも
《その昔 お前と作った うちの庭 木ィ鬱蒼うっそうと 繁ってしもた》
―大伴旅人―〔巻三・四五二〕 

★ほっといて ワシどう鳴こと 勝手やろ 人のことまで 考えてない
からすとふ おほをそ鳥の まさでにも 来まさぬ君を ころくとそ鳴く
《烏めは 大間抜けやで 絶対に あの児来ないに コロク〔児ろ〕と鳴くよ》
―東歌―〔巻十四・三五二一〕 

★あの船も 大和帰るか ワシももう そろそろ家が 恋しなったは
旅にして 物恋ものこほしきに 山下やましたの あけのそほ船 沖へぐ見ゆ
《なんとなく 物の恋しい 旅やのに あか塗り船が 沖通ってく》
―高市黒人―〔巻三・二七〇〕 


日めくり万葉集<7月>(その2)

2009年11月05日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月5日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★防人に 出向く夫を 気遣こうて 新妻こころ 悲してならん
今年行く 新島守にひしまもりが 麻衣あさごろも 肩のまよひは たれか取り見む
《新任の 若い防人 着てる服 ほつれてもたら 誰直すやろ》
                         ―作者未詳―〔巻七・一二六五〕 

★弟よ どうか無事でと 祈る姉 明日の成り行き 共に知らんで
我が背子せこを 大和へると さ夜更けて あかときつゆに 我が立ち濡れし
《お前だけ  大和帰して 夜明けまで 夜露に濡れて 立ち尽くしてた》
                         ―大伯皇女―〔巻二・一〇五〕 

★漕ぎ隠る 小舟の行方 案ずるが わしの心も 波に漂う
いづくにか 船泊ふなはてすらむ 安礼あれの崎 漕ぎ廻こ たみ行きし 棚無たなな小舟をぶね
《あの小舟 どこで泊まりを するんやろ さっき安礼崎あれさき 行ったあの舟》 
                         ―高市黒人―〔巻一・五八〕 

★恋やつれ してる姿は 見せとない でも見て欲しな この胸の内
恋にもそ 人は死にする 水無瀬川みなせがは 下ゆあれす 月に日に
《恋したら  人死ぬんやで うちもそや あんた分かるか 日に日に痩せて》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〔巻四・五九八〕

★霧出ても ええけど雨は 降らんとき 水嵩増えたら 船漕がれへん
牽牛ひこぼしし つま迎へぶね 漕ぎらし あま川原かはらに 霧の立てるは
《彦星の  迎えの船が 出たんやな 天の川原に 霧出てるがな》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二七〕 

日めくり万葉集<7月>(その1)

2009年11月02日 | 日めくり万葉集
■平成21年11月2日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★そら見てみ ええ加減せえ 言うたやろ 身から出た錆び わて知りまへん
左夫流児さぶるこが いつきし殿に 鈴掛けぬ 駅馬はゆまくだれり 里もとどろに
左夫流児さぶるこが 仕える屋敷 大騒ぎ 嫁さんじかに 馬飛ばし来た》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四一一〇〕 

★新羅へと 行く不安旅 夜更けて 沖の灯火あかりに 侘しさ募る
山のに 月かたぶけば いざりする 海人あま灯火ともしび 沖になづさふ
つき山に 隠れてしもた りょうしてる 船の沖で 見え隠れする》
                         ―遣新羅使人―〔巻一五・三六二三〕 

★夏の夜の 浪漫ロマンうて 楽しむが うちら悲しい 定めやねんで
彦星ひこぼしは 織女たなばたつめと 天地あめつちの 別れし時ゆ 
いなうしろ  川に向き立ち 
思ふそら  安からなくに 嘆くそら  安からなくに

《彦星はんと 織姫おりひめはん 太古の昔  仲裂かれ
 思い交わせず  嘆きおる》
青波あをなみに 望みは絶えぬ 白雲に  涙は尽きぬ 
かくのみや いきき居らむ かくのみや  恋ひつつあらむ

《逢いたい気持ち 波はばむ 白い雲見て  涙する
 溜息ためいきもらし 恋焦がる》
ぬりの 小舟をぶねもがも たままきの かいもがも 
あさなぎに いき渡り 夕潮に いぎ渡り 
ひさかたの あま川原かはらに 
あま飛ぶや 領巾ひれ片敷き 玉手たまでの 玉手たまでさしへ 
あまた夜も ねてしかも 秋にあらずとも

《赤い船欲し  櫂も欲し 朝は川越え  夕べ漕ぎ
 天の川原かわらに 領布ひれ敷いて 腕をからめて 寝てみたい
 七夕あきだけごて 幾晩も》
                         ―山上憶良―〔巻八・一五二〇〕