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ユニーク古典現代訳(大阪弁万葉集改題)

日本の古典を訳します。そのままストンと腑に落ちる訳。なんだ、こうだったのかと分かる訳。これなら分かる納得訳。どうぞどうぞ

歴史編(26)戻ってきたけど精ないこっちゃ

2009年10月30日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月30日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
大伯皇女おおくひめ 斎宮いつきのみやの 任解かれ 空しい戻る 大津ないみや
神風かむかぜの 伊勢の国にも あらましを なにしかけむ 君もあらなくに
《伊勢の国 ったらよかった 何のため 帰ってきたんか お前らんに》
                         ―大伯皇女おおくのひめみこ―〔巻二・一六三〕

★やっと来た 夏見の里に 日が暮れる 馬も分かるか 気落ちする胸
見まくり わがする君も あらなくに なにしかけむ 馬疲るるに
《逢いたいと 思うお前は らんのに なんで来たんか 馬疲れるに》
                         ―大伯皇女おおくのひめみこ―〔巻二・一六四〕






【君もあらなくに】へ


日めくり万葉集<6月>(その4)

2009年10月29日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月29日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――
★ほっといて 相手若いて 言わんとき 恋に年端は 関係ないで
りにし おみなにしてや かくばかり 恋に沈まむ 手童のごと
《恥ずかしわ  こんな婆さん なったのに 若い子みたい 恋に溺れて》
                         ―石川郎女いしかわのいらつめ―〔巻二・一二九〕

★ワシのこと 早よ分かってや えて言う 返事貰ろたら 飛んでくさかい
千鳥鳴く 佐保の川門かはとの 清き瀬を 打ち渡し いつかかよはむ
《その内に  馬で渡るで 佐保川の 渡しの瀬ぇを お前の許へ》
                         ―大伴家持―〔巻四・七一五〕 

★もうワシは 辛抱しんぼでけへん ばれてええ パッと噂に なってもええで
伊香保いかほろの やさかのゐでに 立つ虹の あらはろまでも さをさてば
《伊香保ある せきに立つ虹 それみたい 表つほど 寝続けてたい》
                       ―東歌・上野国歌―〔巻十四・三四一四〕 

★あんたとの こと知られんと おきたいに 女心を 分かってぇな
間遠まとほくの 野にもはなむ 心なく 里のみなかに へる背なかも
《人目無い 遠い野原が よかったで 村中むらなか逢うやて 気ィかん人》
                         ―東 歌―〔巻十四・三四六三〕 


日めくり万葉集<6月>(その3)

2009年10月26日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月26日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――
★神の鹿 真似てうてる 鹿しし踊り 弥彦いやひこ神よ 加護をたまわ
弥彦いやひこ 神の麓に 今日けふらもか 鹿の伏すらむ 皮服かはごろも着て つのつきながら
弥彦山やひこやま 神さん庭で 今日あたり 人鹿しか伏せとるで 鹿の皮着て つの頭付け》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三八八四〕 

★これほどに 苦し思いで 居るけども あんたに気持ち 届くんやろか
恋草こひぐさを 力車ちからぐるまに 七車ななくるま 積みて恋ふらく 我が心から
《恋草を  荷車七台 積むほどに 苦し思いは 惚れた弱みや》
                         ―広河女王ひろかわのおおきみ―〔巻四・六九四〕

★つつじ花 桜の花も みんなみな お前に見える これが恋かな
物思はず 道くも      《もの思わんと  道を来た
青山を け見れば      青い山見て  振りむいた
つつじ花 にほえ娘子をとめ        つつじ綺麗や お前の
桜花さくらばな さか娘子をとめ           桜美し お前の
なれをそも われすといふ    ワシに似合いや  みんな言う
われをもそ なれすといふ    お前に似合いや  みんな言う
荒山あらやまも 人しすれば       噂をしたら  山さえも
そるとぞいふ が心ゆめ   その気なる言う  気ィ付けや (他人と噂  されんよに)
                         ―作者未詳―〔巻一三・三三〇五〕 

歴史編(24)あんたとうとう逝ってもた

2009年10月23日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月23日■
万葉集に詠われた歌を 歴史の流れに沿って 採り上げ 「大阪弁」で訳します
いわく 「大阪弁万葉集」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
★壬申を 制し王権 確立した君
           ついに逝くかと  持統の嘆き

やすみしし  わが大君の 
夕されば し給ふらし 
明けくれば  問ひ給ふらし 
神岳かむおかの 山の黄葉もみぢを 
今日もかも  問ひ給はまし 
明日もかも し給はまし 
その山を  ふりさけ見つつ 
夕されば  あやに悲しみ 
明けくれば  うらさび暮し 
荒栲あらたへの 衣の袖は る時もなし

《朝夕に  神岡もみじ 見たい言う
 今日のはどやろ 明日あすはどや
 聞いてたあんた もうらん
 今日も聞いてや 明日あすも見て
 その山見るたび 悲しいて
 思い出すたび さみしゅうて
 涙流れて  止まらへん》
          ―持統天皇―〔巻二・一五九〕 





【見し給はまし】へ


日めくり万葉集<6月>(その2)

2009年10月22日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月22日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★仲良しの 大国さんと 少御神すくなかみ 共に助けて この国立てた
大穴道おほなむち 少御神すくなみかみの 作らしし 妹背いもせの山を 見らくし良しも
大穴道おほなむち 少御神すくなみかみが 作られた 妹山背山 見るのんうれし》
                       ―柿本人麻呂歌集―〔巻七・一二四七〕 

★家持はん それは無いやろ このうちを その気にさして 移り気するか
君にひ いたもすべなみ 奈良山の 小松がもとに 立ち嘆くかも
《恋しいて どう仕様しょもないで 奈良山の 松の下来て 嘆息ぼおっとしてる》
                         ―笠郎女かさのいらつめ―〔巻四・五九三〕

★この世では 生きてるもんは みんな死に 生まれ変わって また死んでいく
いさなとり  海や死にする 山や死にする
          死ぬれこそ 海は潮干て 山は枯れすれ 

《鯨る 海死ぬやろか 山死ぬやろか
          そや死ぬで 海干あがって 山枯れるやろ》 
                         ―作者未詳―〔巻十六・三八五二〕 

藤原京ふじわらへ 都移りで 明日香宮 むなしうなって 人かて居らん
うね  そでかへす 明日香あすかかぜ みやことほみ いたづらに吹く
采女うねめ袖 吹き返してた 風寂し 遠なってもた 明日香の都》
                         ―志貴皇子しきのみこ―〔巻一・五一〕

旅人たびとはん あんたの気持 よう分かる 代わりに詠むで 妻亡くし歌
くやしかも かく知らませば あをによし 国内くぬちことごと 見せましものを
《悔しいな こんなことなら 景色え 筑紫の国中くにじゅう 見せたったのに》
                         ―山上憶良―〔巻五・七九七〕 

日めくり万葉集<6月>(その1)

2009年10月20日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月20日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★待つ気持ち 弦の音にも ハッとする ほんまやろうか お成りやなんて
梓弓あづさゆみ 爪引つまび夜音よおとの 遠音とほおとにも 君の御幸みゆきを 聞かくししも
《夜に引く 弓音のに ほのかにも お成りと聞くと うれしてならん》
                         ―海上女王うなかみのおおきみ―〔巻四・五三一〕

★子を持って 知る親心 もっと早よ 分かってたなら 孝行したに
しろかねも くがねも玉も 何せむに まされる宝 子にかめやも
《金銀も 宝の玉も そんなもん なんぼのもんじゃ 子供が一番》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇三〕 

醜男ぶおとこは これがチャンスと 必死やで そこに女が 惚れるんちゃうか
うましもの いづくもかじを 坂門さかとらが つののふくれに しぐひあひにけむ
別嬪べっぴんで 引く手数多あまたの 児がなんで あんな醜男おとこと 引っ付いたんや》
                         ―児部女王こべのおおきみ―〔巻十六・三八二一〕

★真珠玉 今も昔も おんなじや 女心を 繋いで止める
我妹子わぎもこが 心なぐさに らむため おきつ島なる 白玉もがも
《独り待つ お前の心の 慰みに 沖合い島の 真珠が欲しい》 
                         ―大伴家持―〔巻十八・四一〇四〕 

葛城王かづらきは 非礼接待 気に食わぬ 采女帰りが 機転の詠い
安積香山あさかやま 影さへ見ゆる 山のの 浅き心を 我が思はなくに
安積香山あさかやま 写る泉の な浅い 心とちゃうで うちの気持ちは》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三八〇七〕 


日めくり万葉集<5月>(その5)

2009年10月16日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月16日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★吉野行幸ゆき 従駕の歌は 詠わぬが 独り静かに 寂寥思い
大和やまとには 鳴きてからむ 呼子鳥よぶこどり きさの中山 呼びそ越ゆなる
郭公鳥かっこどり きさの中山 鳴き越えた 大和へ行って 鳴いてんやろか》 
                         ―高市黒人―〔巻一・七〇〕 

★わしのこと 待ってへんのか 待ってんか どっちなんやろ ほんまにあの子
たきぎる 鎌倉山の 木垂こだる木を 待つとが言はば 恋ひつつやあらむ
《枝垂れる 木は松ちゃうが 松〔待つ〕やでと お前言うたら 焦がれへんのに》
                        ―東歌・相模国歌―〔巻十四・三四三三〕 

★大津宮 雲を霞と 消えてもた 旧い都に 波だけ寄せる
楽浪さざなみの 志賀の大わだ よどむとも 昔の人に またもはめやも
せんいな よどみずみたいに とどまって 昔の人に おうおもても》
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・三一〕 

★おべんちゃら 分かってるけど ええ気分 こんな男と 思うてみても
うつせみの 常の言葉と 思へども ぎてし聞けば 心まどひぬ
《平凡な 口説き文句と 思うけど 続けて聞くと その気になるわ》 
                         ―作者未詳―〔巻十二・二九六一〕 

★三日間 まともに寝んと 歌作り 三日め朝の 気分はいかに
朝床あさどこに 聞けばはるけし 射水川いみずかは 朝漕ぎしつつ うた舟人ふなびと
朝寝あさねどこ なんか聞こえる のんびりと 川で舟漕ぐ 漁師の声か》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四一五〇〕 

日めくり万葉集<5月>(その4)

2009年10月14日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月14日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――
★宵闇に 続く蛍火 延々と 志貴皇子はん 送る人群ひとむら
梓弓あずさゆみ 手に取り持ちて 大夫ますらをの 得物矢さつやばさみ 
立ちむかふ 高円たかまと山に 春野焼く 野火と見るまで  
もゆる火を いかにと問へば 
 
武人ますらおが 手に持つ弓に 矢をつがえ 射るため向かう まと
 高円山たかまとめぐる 春の野を 焼く火みたいに 燃えるのは
 何の火ィかと 尋ねたら》 
玉桙たまほこの 道来る人の 泣く涙 小雨に降り  
白拷しろたへの ころもひづちて 立ちとまり われに語らく
 
《道を来る人 顔上げて  あふれる涙 雨みたい 
 着てる服まで 濡れそぼち  足をとどめて 語るには》
何しかも もとな問ふ  
聞けば のみし泣かゆ 語れば 心そ痛き  
天皇すめろきの 神の御子みこの いでましの 手火たびの光そ 
ここだ照りたる 

なんで聞くんや そんなこと
 聞いたら余計よけい 泣けてくる 話すと胸が 痛うなる 
 天皇おおきみさんの 御子みこはんが あの世旅立つ 送り火や 
 こんないっぱい 光るんは》 
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―〔巻二・二三〇〕
高円の 野辺のへ秋萩あきはぎ いたづらに 咲きか散るらむ 見る人無しに
高円たかまとの 野に咲く萩は むなしいに 咲いて散ってる 見る人おらんで》
                         ―笠金村歌集―(巻二・二三一) 
三笠山 野辺行く道は こきだくも しげり荒れたるか ひさにあらなくに
うなって 日もたんのに 野辺の道 えらい荒れてる 三笠の山は》
                         ―笠金村かさのかなむら歌集―(巻二・二三二)


日めくり万葉集<5月>(その3)

2009年10月09日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月9日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★春出挙すいこ 巡回終えて 船着いて 月を仰いで ほっと家持
珠洲すすの海に 朝びらきして 漕ぎ来れば 長浜のうらに 月照りにけり
《朝珠洲すずを 船出ふなで日中ひなか 漕ぎ続け 長浜着いたら ええ月出てる》
                         ―大伴家持―〔巻十七・四〇二九〕 

十市皇女とおちひめ 可哀そうやと 高市皇子たけちみこ 募うてきたが 救うてやれず
山吹の 立ちよそひたる 山清水やましみづ 汲みに行かめど 道の知らなく
《山吹の 花咲く清水 かえり水 みたいけども 道わかからへん》
                         ―高市皇子―〔巻二・一五八〕 

★ほととぎす 昔恋しと 鳴く声に 昔思うて しみじみするよ
信濃しなぬなる すがの荒野あらのに ほととぎす 鳴く声聞けば 時過ぎにけり
《ほととぎす 須我の荒野で 鳴いとおる あれから何年 経ったことやろ》 
                         ―東歌・信濃国歌―〔巻十四・三三五二〕 

★酒める 歌と言いつつ 嘆いてる 酒は涙か 溜息やろか
しるしなき 物をおもはずは 一坏ひとつきの にごれる酒を 飲むべくあるらし
仕様しょうもない 考えせんと 一杯の どぶろく酒を 飲むがええで》
                         ―大伴旅人―〔巻三・三三八〕 

★藤原の 都移りの 宮殿で 見る香久山は 初夏の趣
春過ぎて 夏来るらし 白たへの 衣干したり 天の香久山 
《香久山に 白い衣が 干したある ああ春がて 夏が来たんや》
                         ―持統天皇―〔巻一・二八〕 

日めくり万葉集<5月>(その2)

2009年10月07日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月7日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★吉野盟約 絶頂天武 草壁・大津の あいだきし
き人の        《よろし人〔わしが〕 
 よしとよく見て      よう〔状況〕見てからに 
  よしと言いし       よし〔出陣〕言うた 
   吉野よく見よ       吉野 よう見い〔覚えとくんや〕 
    良き人よく見       よろし人〔わしを〕よう見〔見習うんや〕》 
                         ―天武天皇―〔巻一・二七〕 

★子を呼ぶは 恋の象徴しるしか 声聞けば 愛しい人の 面影浮かぶ
神奈備かむなびの 磐瀬いはせもりの 呼子鳥よぶこどり いたくな鳴きそ が恋増さる
郭公鳥かっこうよ そんなに鳴きな 鳴くたんび 心恋しさ 募ってくるやん》
                         ―鏡王女かがみのおおきみ―〔巻八・一四一九〕

★三山の 妻争いを 見に来たが 収束おさまり聞いて 気抜け阿菩大神あぼかみ
香久山かぐやまと 耳梨山みみなしやまと ひしとき 立ちて見にし 印南国原いなみくにはら
《香久山と 耳成山が 揉めたとき ここまで来たんや 印南いなみの地まで》
                         ―天智天皇―〔巻一・一四〕 

★監督の 家持はんが 防守さきもりの 気持ちを汲んで 代わりに詠んだ
ますらをの ゆき取り負ひて でて行けば 別れを惜しみ 嘆きけむ妻
矢筒やづつ背に 出かける時に その妻は 嘆いたやろな 別れ惜しんで》 
                         ―大伴家持―〔巻二十・四三三二〕 

日めくり万葉集<5月>(その1)

2009年10月05日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月5日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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持統天皇てんのうの 伊勢の行幸みゆきに 参加する 妹を留守居の 人麻呂詠う
潮騒しほさゐに 伊良虞いらご島辺しまへ 漕ぐ船に 妹乗るらむか 荒き島廻しまみ
《波荒い 伊良湖の島の 島めぐり 喜んでるか あの児も乗って》 
                         ―柿本人麻呂―〔巻一・四二〕 

藤原宇合うまかいの 帰京を惜しみ 現地妻 思いの丈を 歌に託して
庭に立つ 麻手あさで刈り干し 布さらす 東女あずまをんなを 忘れたまふな
《麻刈って 干したり布を さらな 東女おんなやけども 覚えといてや》
                         ―常陸娘子ひたちのおとめ―〔巻四・五二一〕

★聖武帝 吉野行幸みゆきに 従駕する 赤人景歌 ここに生まれる
み吉野の 象山きさやまの 木末こぬれには ここだも さわく 鳥の声かも
《吉野山 象山きさやま木立ち こずえさき 鳥がいっぱい さえずる朝や》
                         ―山部赤人―〔巻六・九二四〕 

★春が来て うらら膨らむ この胸は おまえ思うて 張り裂けそうや
春されば しだり柳の とををにも 妹は心に 乗りにけるかも 
《春来たら 柳の枝が たわわなる ワシの心に お前がたわわ》 
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻十・一八九六〕 

★咲く桜 惜しむ心か それちごて 膨らむ蕾 高まる期待?
春雨はるさめの しくしく降るに 高円たかまとの 山の桜は いかにかあるらむ
《春雨が ずっとしきりと 降っとおる 山の桜は どうなったやろ》 
                         ―河辺かわべの東人あずまひと―〔巻八・一四四〇〕

日めくり万葉集<4月>(その4)

2009年10月01日 | 日めくり万葉集
■平成21年10月1日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★旧友を 桜の花にかこつけて 会いに来んかと 誘てみる
我が背子せこが 古き垣内かきつの 桜花 いまだ ふふめり 一目ひとめ見に
《おいお前 前に住んでた 家の桜花はな まだ蕾やで 見にえへんか》
                         ―大伴家持―〔巻十八・四〇七七〕 

★口したら 消えるんちゃうかと 思う恋 ほんまは口に 出したいんやで
真金まかねく 丹生にふのまそほの 色に出て はなくのみそ 我が恋ふらくは
きん造る 赤土みたい 目立つに 言わへんだけや ワシの思いは》
                         ―東  歌―〔巻十四・三五六〇〕 

★春の野原は 心が浮くよ 天皇さんも まだ若い 通りすがりの 娘に惚れた
もよ み        《ええかごさげて
 くしも みくし       ぐし持って             
  この岡に ます      みしてはる 娘はん
   いえかな らさね        あんたるとこ 教えて欲しい

そらみつ 大和やまとくに        ここの国 
 おしなべて われこそ      治めてるんは このわしや 
  しきなべて われこそませ        仕切ってるんは このわしや
   われこそはらめ 家をも名をも   わしも教える 名前と家と     
                            (あんた教えて 名前と家と)》 
                            ―雄略天皇―〔巻一・一〕 

★都離れて 天離あまざかる ひなに居りゃこそ 恋しさ募る
あをによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今さかりなり
《賑やかな 平城ならみやこは 色えて 花咲くみたい 今真っ盛り》
                         ―小野老おののおゆ―〔巻三・三二八〕

★こんな苦労くろして 獲ったんや 鮒をもろてや わしの気持も
沖辺おきへ行き を行き今や 妹がため 我がすなどれる 藻臥もふし束鮒つかふな
《沖や岸 あちこち行って 今やっと お前のために 獲った鮒やで》 
                         ―高安王たかやすのおおきみ―〔巻四・六二五〕

★暗い夜道を 通う足 月に照らされ はようなる
あまはら 振りけ見れば 白真弓しらまゆみ 張りて掛けたり 夜道はけむ
《空見たら 弓張ったな 月出てる お前にかよう 道ええ具合》
                         ―間人大浦はしひとのおおうら―〔巻三・二八九〕


日めくり万葉集<4月>(その3)

2009年09月29日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月29日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
――――――――――――――――――――――――――――――――
★地方出て 都で勤め 励みしが 激し勤めに 耐えきれず 自ら命 絶つ奴あるか
大君の みことかしこみ おし照る 難波なにはの国に 
あらたまの 年るまでに 白拷しろたへの 衣もさず
朝夕あさよひに ありつる君は いかさまに おもひいませか 
うつせみの しきこの世を つゆしもの 置きてゆきけむ 
時にあらずして 

《役目大事と 難波の宮で 
 着替えもせんと 永年務め 
 昼夜ちゅうやいとわず 働くあんた
 何を思たか 大事な命 
 捨てて仕舞しもたら 仕様しょうないやんか
 まだこれからや いう時やのに》 
                         ―大伴三中おおとものみなか―〔巻三・四四三(後半)〕

★ちょい悪男 なぜもてる 女ごころの 不思議さよ
斑鳩いかるがの 因可よるかの池の よろしくも 君をはねば 思いぞ我がする
《ええ人と みんな言わへん そんなこと うち信じへん けど心配や》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三〇二〇〕 

★何見ても あんたに見える 若い恋
春柳はるやなぎ 葛城山かづらきやまに 立つ雲の 立ちてもても 妹をしそ思ふ
《春が来て 葛城山に 雲よる 居ても立っても おまえ思てる》
                         ―柿本人麻呂歌集―〔巻十一・二四五三〕 

★恋の駆け引き 誇張に限る 溢れる思い 届かで措くか
こひは 千引ちびきの石を ななばかり 首に掛けむも 神のまにまに
《かまへんで 千人引きの 石七つ 首掛けるな 苦し恋でも》
                         ―大伴家持―〔巻四・七四三〕 

★赤人悔み ひとりごと あの児誘うて 来たらよかった  
春の野に すみれみにと しわれそ 野をなつかしみ 一夜ひとよ寝にける
《春の野に すみれを摘みに 来たんやが 気分えんで 泊ってしもた》
                         ―山部赤人―〔巻八・一四二四〕 

★なつかしい 春の情景 今いずこ
春日野かすがのに けぶり立つ見ゆ 娘子をとめらし 春野はるののうはぎ みて煮るらしも
《春日野で 煙見えてる 若いが ヨメナを摘んで いてんやなぁ》
                         ―作者未詳―〔巻十・一八七九〕 

日めくり万葉集<4月>(その2)

2009年09月25日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月25日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★爺さん 娘に 小馬鹿にされて 「若い時にはこのワシも」と詠う
 万葉版 竹取物語の一節 

・・・ひほひよる 児らが同年児よちひは 
みなわた か黒き髪を まくしもち ここにかき垂れ・・・

《・・・あんたらと おんなじような 年頃は
 真っ黒髪を ええ櫛で いてここまで き伸ばし・・・》
                         ―作者未詳―〔巻十六・三七九一〕 

★悲恋の娘子おとめ 「うち 死なへんで~」
我が背子せこが 帰り来まさむ 時のため いのち残さむ 忘れたまふな
《忘れなや 命大事に 生きてくで あんたの帰る その時待って》 
                         ―狭野弟上娘子さののおとがみのおとめ―〔巻十五・三七七四〕

穂積親王ほずみはん 相手但馬皇女たじまか 坂上郎女いらつめはんか それとも別の ひとかいな
家にありし ひつかぎし をさめてし  こひやっこの つかみかかりて
《家にある 箱にかぎかけ 封印とじこめた 浮気心が またぞろうずく》
                         ―穂積親王ほづみのみこ―〔巻十六・三八一六〕

★乳飲み児残し 若妻亡くし うろたえ人麻呂 目に見える
衾道ふすまぢを 引手ひきての山に いもを置きて 山路やまぢを行けば 生けりともなし
引手ひきて山 お前まつって 降りてきた ひとり生きてく 気ィならんがな》
                         ―柿本人麻呂―〔巻二・二一二〕 

★春の息吹に 心は躍る 踊る心の 水の音
いはばしる 垂水たるみの上の さわらびの 萌えづる春に なりにけるかも
わらび 渓流ながれの水の 岩陰で 見たで見つけた 春や 春来た》 
                         ―志貴皇子―〔巻八・一四一八〕 

★塩津を越えて 越目指す 丈夫おとこ金村 何の旅
塩津しほつ山 うち越え行けば が乗れる 馬そつまづく いへふらしも
《わしの馬 塩津越えてて つまづいた 家で心配 してるできっと》
                         ―笠金村―〔巻三・三六五〕 

日めくり万葉集<4月>(その1)

2009年09月23日 | 日めくり万葉集
■平成21年9月23日■
NHKテレビ「日めくり万葉集」で取り上げられた 万葉歌を 「大阪弁」で訳します
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★恋は知れたら 壊れてしまう・・・
あしひきの 山よりづる 月待つと 人にはひて いも待つ我を
みんなには 山出る月を 待ってるて 言うてお前を ワシ待ってんや》
                         ―作者未詳―〔巻十二・三〇〇二〕 

ちろがねも くがねも玉も・・・ の反歌が 続く
うりめば 子ども思ほゆ    《瓜を食うたら 思い出す
めば ましてしのはゆ     栗を食うても なおそうや
何処いづくより きたりしものそ     どこから来たんか この子供
眼交まなかひに もとなかかりて      目ぇつぶっても 顔浮かぶ
安眠やすいさぬ            ゆっくり寝られん 気になって》
                         ―山上憶良―〔巻五・八〇二〕 

★万葉集には 聖徳太子の歌一首
家にあらば いもが手まかむ 草枕 旅にやせる この旅人たびとあはれ
《家でなら 妻の まくらに 寝るやろに ここで死んでる いたわしこっちゃ》
                         ―聖徳太子―〔巻三・四一五〕 

★家持の憂鬱 春の所為せいばかりと言えず
うらうらに 照れる春日はるひに ひばり上がり 心悲しも ひとりしおもへば
《うららかな 雲雀も上がる 春の日に なんで悲しい 気持ちにんや》
                         ―大伴家持―〔巻十九・四二九二〕