【掲載日:平成24年8月10日】
足代過ぎて 糸鹿の山の 桜花 散らずもあらなむ 帰り来るまで
海なし国の 大和の人は
開け明るい 紀伊国海に
憧れ来ては 嬉々して遊ぶ
岬廻って 南紀に出れば
黒潮躍り 岩礁噛む波頭
【南海道 紀伊(紀ノ川河口周辺)】
藻刈り舟 沖漕ぎ来らし 妹が島 形見の浦に 鶴翔る見ゆ
《妹島の 形見の浦で 鶴飛ぶよ 沖で藻刈りの 船漕いでんや》
―古集―(巻七・一一九九)
玉津島 よく見ていませ 青丹よし 奈良なる人の 待ち問はばいかに
《景色良え 玉津の島を 良う見とき 奈良で待つ人 聞くかも知れん》
―古集―(巻七・一二一五)
玉津島 見てしよけくも 我れはなし 都に行きて 恋ひまく思へば
《玉津島 景色見てても 嬉しない 都帰ったら 焦がれるよって》
―古集―(巻七・一二一七)
名草山 言にしありけり 我が恋ふる 千重の一重も 慰めなくに
《名草山 名ぁばっかしや うちの恋 千の一つも 慰め出来ん》
―古集―(巻七・一二一三)
【南海道 紀伊(有田川河口近辺)】
安太へ行く 小為手の山の 真木の葉も 久しく見ねば 苔生しにけり
《安太へ行く 途中小為手の 山の樹々 長ご見んうちに 苔生してるで》
―古集―(巻七・一二一四)
足代過ぎて 糸鹿の山の 桜花 散らずもあらなむ 帰り来るまで
《足代通り 糸我峠の 桜花綺麗 散らんといてや わし帰るまで》
―古集―(巻七・一二一二)
潮満たば いかにせむとか 海神の 神が手渡る 海人娘子ども
《潮満ちて 来たらどすんや 海人娘子 そんな危ない 岩礁に居って》
―古集―(巻七・一二一六)
【南海道 紀伊(南紀)】
風早の 三穂の浦廻を 漕ぐ舟の 舟人騒く 波立つらしも
《風早い 三穂浦通る 船の上 皆慌てとる 波出たんやで》
―古集―(巻七・一二二八)
磯に立ち 沖辺を見れば 藻刈り舟 海人漕ぎ出らし 鴨翔る見ゆ
《磯立って 沖の方見たら 鴨翔ぶよ 藻刈りの漁師 船出したらし》
―古集―(巻七・一二二七)
荒磯ゆも まして思へや 玉の浦 離れ小島の 夢にし見ゆる
《荒磯より 良え思うんか 玉浦の 離れ小島が 夢出て来んは》
―古集―(巻七・一二〇二)
三輪の崎 荒磯も見えず 波立ちぬ 何処ゆ行かむ 避き道はなしに
《三輪の崎 磯見えんほど 波立つよ どない行くんや 避け道無いで》
―古集―(巻七・一二二六)
――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
