【掲載日:平成24年8月3日】
海人小舟 帆かも張れると 見るまでに 鞆の浦廻に 波立てり見ゆ
波をかき分け 西へと進む
鞆浦景色 見事の極み
やがて見え来る あの山影は
行き着き処の 筑紫の峰か
【山陽道 備中・備後】
網引する 海人とか見らむ 飽の浦の 清き荒磯を 見に来し我れを
《網を引く 漁師思うか 飽浦の 清い荒磯を 見に来たわしを》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一一八七)
娘子らが 織る機の上を 真櫛もち 掻上げ栲島 波の間ゆ見ゆ
《見えて来た 波の間に 栲島や 機織り櫛で 糸綰くたくの》
―古集―(巻七・一二三三)
(綰く=束ねる)
海人小舟 帆かも張れると 見るまでに 鞆の浦廻に 波立てり見ゆ
《帆を張った 小舟多数居る みたいやで 鞆浦辺り 白波立ってるん》
―古集―(巻七・一一八二)
ま幸くて また還り見む 大夫の 手に巻き持てる 鞆の浦廻を
《もし無事に 帰り来れたら 見よ思う この鞆の浦 この良え景色》
―古集―(巻七・一一八三)
【西海道 豊後】
娘子らが 放りの髪を 由布の山 雲なたなびき 家のあたり見む
《娘子らが お下げ髪結う 由布山に 雲棚引きな 家見たいんや》
―古集―(巻七・一二四四)
【西海道 筑前】
天霧らひ 日方吹くらし 水茎の 岡の港に 波立ちわたる
《一面に 曇って日方 吹くらしい 岡の港で 波立っとるで》
―古集―(巻七・一二三一)
(日方=日の方から吹く風=東風)
ちはやぶる 鐘の岬を 過ぎぬとも 我れは忘れじ 志賀の皇神
《難所処 鐘の岬は 過ぎたけど 志賀神さんの 加護忘れんで》
―古集―(巻七・一二三〇)
志賀の海人の 釣舟の綱 甚へずして 心に思ひて 出でて来にけり
《志賀海人の 船綱切れん 別れしな 堪え切れへんと 思て来たんや》
―古集―(巻七・一二四五)
志賀の海人の 塩焼く煙 風を疾み 立ちは上らず 山に棚引く
《志賀海人が 塩焼く煙 風強よて 上登らんと 山の方靡く》
―古集―(巻七・一二四六)
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