【掲載日:平成24年7月13日】
宇治川を 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし 楫の音もせず
以下の羈旅歌 古集が載せる
奈良朝初期に 遡る歌
吉野詠うは 山川誉める
山背歌は 宇治川風情
【吉野にして作れる歌】
神さぶる 岩根こごしき み吉野の 水分山を 見れば悲しもっ
《神々しい 岩のひしめく 水分の 山を見てたら 胸迫る様や》
―古集―(巻七・一一三〇)
皆人の 恋ふるみ吉野 今日見れば うべも恋ひけり 山川清み
《みんな皆 見たがる吉野 今日見たで 山川清よて 成程思た》
―古集―(巻七・一一三一)
夢のわだ 言にしありけり 現にも 見て来るものを 思ひし思へば
《夢のわだ 夢と違うで 目の前や 見とて堪らん 思てたわだや》
―古集―(巻七・一一三二)
皇祖神の 神の宮人 ところづら いや常しくに 我れかへり見む
《代々の 仕えの人も 見た吉野 わしらまたまた 見に来よ吉野》
―古集―(巻七・一一三三)
(ところづら=やまいもの蔓→常しく)
吉野川 巌と柏と 常盤なす 我れは通はむ 万代までに
《吉野川 岩と柏は 永久や わしも永久 通うできっと》
―古集―(巻七・一一三四)
【山背にして作れる歌】
宇治川は 淀瀬なからし 網代人 舟呼ばふ声 をちこち聞こゆ
《宇治川は 渡る淀瀬ないで 網代海人 呼び交わす声 あちこちしてる》
―古集―(巻七・一一三五)
宇治川に 生ふる菅藻を 川早み 採らず来にけり 苞にせましを
《宇治川の 流れ早うて 生える菅藻ぉ 取れんかったで 土産思たに》
―古集―(巻七・一一三六)
宇治人の 譬への網代 我れならば 今は寄らまし 木屑来ずとも
《物引寄せる 網代浮かぶで 宇治聞くと 木っ端寄る前 うち寄るからね》
―古集―(巻七・一一三七)
(網代=女を引き寄せる男に譬えた 木屑=詰まらん女)
宇治川を 舟渡せをと 呼ばへども 聞こえざるらし 楫の音もせず
《宇治川を 渡してくれと 叫んでも 聞こえへんのか 楫音せんで》
―古集―(巻七・一一三八)
ちはや人 宇治川波を 清みかも 旅行く人の 立ちかてにする
《宇治の川 波清いんで 旅の人 去くん惜しいて 川眺めてる》
―古集―(巻七・一一三九)
(ちはや人=猛々しく勢いの激しい人→流れの激しい宇治川?)
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