【掲載日:平成24年7月17日】
命をし 幸くよけむと 石走る 垂水の水を むすびて飲みつ
瀬戸内兵庫 東部の歌と
大阪湾の 海辺の歌と
名高い埴生 黄の染料土
拾うて帰ろ 恋忘れ貝
【摂津にして作れる歌(一)】
しなが鳥 猪名野を来れば 有馬山 夕霧立ちぬ 宿りはなくて
《猪名の野を はるばる来たが 有馬山から 夕霧出て来たに 宿る処ない》
―古集―(巻七・一一四〇)
武庫川の 水脈を早みと 赤駒の 足掻く激ちに 濡れにけるかも
《武庫の川 流れ早うて 馬足掻き 飛沫が飛んで わし濡れて仕舞た》
―古集―(巻七・一一四一)
命をし 幸くよけむと 石走る 垂水の水を むすびて飲みつ
《この命 長ごと願うて 垂水神水 手ぇに掬うて わし飲んだんや》
―古集―(巻七・一一四二)
さ夜更けて 堀江漕ぐなる 松浦舟 楫の音高し 水脈早みかも
《夜更けて 堀江漕ぎ行く 松浦舟 楫音忙し 潮早いんや》
―古集―(巻七・一一四三)
悔しくも 満ちぬる潮か 住吉の 岸の浦廻ゆ 行かましものを
《悔しいな 潮満ちてきた 住吉の 浦を伝うて 行きたかったに》
―古集―(巻七・一一四四)
妹がため 貝を拾ふと 茅渟の海に 濡れにし袖は 干せど乾かず
《お前にと 貝拾おして 茅渟海で 袖濡らしたで 乾かん程に》
―古集―(巻七・一一四五)
めづらしき 人を我家に 住吉の 岸の埴生を 見むよしもがも
《愛し児を 家住ましたい 住吉の 岸の埴生を 見る術欲しな》
―古集―(巻七・一一四六)
馬並めて 今日我が見つる 住吉の 岸の埴生を 万代に見む
《馬連ね わしが今日見た 住吉の 岸の埴生を またまた見たい》
―古集―(巻七・一一四八)
暇あらば 拾ひに行かむ 住吉の 岸に寄るといふ 恋忘れ貝
《間ぁあると 拾い行きたい 住吉の 岸に寄る云う 恋忘れ貝》
―古集―(巻七・一一四七)
住吉に 行くといふ道に 昨日見し 恋忘れ貝 言にしありけり
《住吉に 通じる道で 昨日見た 恋忘れ貝 名前倒れや》
―古集―(巻七・一一四九)
――――――――――――――――――――
【新しい試みです】
「歌心関西訳」の作成過程をご覧ください。
これなら あなたも 訳せますよ。
