【掲載日:平成24年5月15日】
君がため 手力疲れ 織れる衣ぞ
春さらば いかなる色に 摺りてばよけむ
知って欲しいが 知られん嫌や
聞いて欲し欲し 惚気と自慢
【自慢するんか 気ィ引くためか】
大刀の後 鞘に入野に 葛引く我妹
真袖もち 着せてむとかも 夏草刈るも
《わしのため 入野で葛蔓を 引いてる娘
両袖の 衣着せよして 刈るよ邪魔夏草》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二七二)
【楽し嬉しも あんたの為や】
君がため 手力疲れ 織れる衣ぞ
春さらば いかなる色に 摺りてばよけむ
《あんた為 精魂込めて 織った衣
春来たら 何色染めよ あんたの為に》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二八一)
【秘密の場所や 大事にしとこ】
池の辺の 小槻の下の 小竹な刈りそね
それをだに 君が形見に 見つつ偲はむ
《池の傍 槻の木下の 篠刈りないな
その場所は あの人偲ぶ 縁の場所や》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二七六)
天にある 日売菅原の 草な刈りそね
蜷の腸 か黒き髪に 芥し付くも
《何時も行く 姫菅原の 草刈らんとき
共寝たときに あの児の髪が 汚れるさかい》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二七七)
【離れん嫌や あんた付いてこ】
朝戸出の 君が足結を 濡らす露原
早く起き 出でつつ我れも 裳裾濡らさな
《朝帰る あんた足紐 露原濡らす
一緒起き うちも連れ立ち 裳の裾濡らそ》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三五七)
【こんなうちにも 良えとこあんや】
山背の 久世の若子が 欲しと言ふ我れ
あふさわに 我れを欲しと言ふ 山背の久世
《山城の 久世のぼんぼん うち嫁欲して
嘘違うで うち欲し言んや 久世のぼんぼん》
―柿本人麻呂歌集―(巻十一・二三六二)
【内緒内緒や 言うたらあかん】
海の底 沖つ玉藻の 名告藻の花
妹と我れと ここにしありと 名告藻の花
《海底の 沖の玉藻や 名告藻花よ
あの児わし 此処に居ること 名告藻花よ》
(な告りそ=言うたらあかん)
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二九〇)
【主人自慢は 自分の自慢】
住吉の 波豆麻の君が 馬乗衣
さひづらふ 漢女を据ゑて 縫へる衣ぞ
《仕えてる 波豆麻旦那の 馬乗り服は
先進の 渡来女に 縫わせた服や》
―柿本人麻呂歌集―(巻七・一二七三)
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