令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・越中編(一)(09)知らずしあらば

2011年03月15日 | 家待・越中編(一)友ありて
【掲載日:平成23年1月7日】

咲けりとも 知らずしあらば もだもあらむ
             この山吹を  見せつつもとな



昨日さくじつ 晩春遊覧の詩 確かに拝見
 また  今朝 重ねてのお便り
 さらに  野遊びのお誘い歌まで
 ご厚意  有難く
 お陰さまにて  気も晴れ
 心のうれいも のぞかれ申した
 心のびやかにさせるは 
 春の風光を眺め  楽しむ以外 有りますまい
 重ね重ねの気遣い  痛み入ります》

晩春の残り日 明媚めいびの風光は 目にうるわ
吹く風は なごやかにして 頬をなぞるに軽い
遠来のつばくらめ 泥を口にして 家に来たり
帰るかりがねは 葦をくわえて 大海を目指す
ともと連れ立ち 詩歌しいかふけりて 曲水に遊び 
弥生の酒宴うたげ 飲をうながして はいを浮かべしよし
訪ね行き 臨席りんせきせんと 欲すれど
くやむべし 病みあがり身の 脚のよろめき


咲けりとも 知らずしあらば もだもあらむ この山吹を 見せつつもとな
《咲いてるて 知らんかったら 済んだのに 見せたら山吹はなを 見となるやんか》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九七六〕
葦垣あしかきの ほかにも君が 寄り立たし 恋ひけれこそば いめに見えけれ
垣外かきそとで 池主あんたが立って わしのこと しとてるよって 夢に出たんや》
                         ―大伴家持おおとものやかもち―〔巻十七・三九七七〕

ここまでを したためた家待
身心共の みなぎりを覚えた
〔この 沸々ふつふつと湧いてくるものは・・・
 そうか  歌作りじゃ
 奈良の都での  
 政争の匂い芬々ふんぷんうたげ
 付き合い歌の むなしさ
 ために封印しておいた  歌作り
それが 
 いつの間にか 歌を作ってるではないか
 天離あまざかる ひなへの赴任
 慣れぬ任務遂行 
 大嬢おおいらつめと離れての生活くらし
 書持ふみもちの訃報
 心の  納め所を失うた日々が 病呼んだか
 そうか 
 池主殿が 得手えての漢詩で
 わしの歌心を 呼びましてくれたのか
 そうじゃ  そうじゃ
歌作りじゃ 
父上遺稿のたぐいが 役に立つ
 改めて 人麻呂殿 赤人殿に まねぶ時じゃ
 それには  花を詠み 鳥を詠み 景を詠み・・・
 とりわけ 長歌ちょうかを 心掛けずばなるまい
 おお  なるほど
 こし赴任は これが為であったか》

天平十九年〔747〕三月から四月 
人麻呂 赤人 まねびが
せきを切った如くの長歌連作へと 
家持を駆り立てる 


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