本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

山下和美 (ゴースト・ラプソディ)

2011-06-09 21:11:29 | 漫画
久しぶりにこれを読み返したんだけど、これってまだ感想を書いてなかったようですね。
この作者の作品「天才柳沢教授の生活」や「不思議な少年」など、人間に対する眼差しが温かいのでとっても好きです。
これは1996年~1998年にかけて描かれたものだからちょっと古いんだけど、やはりこれにも今に通じる人間に対する温かい眼差しがありますね。

恋愛モノと言えば男女が恋人関係になるまでを描くのが普通一般的だと思うのだけど、これは結婚の決まった男女が別れるまでを描いてるんですよね。

現実世界においても結ばれるよりは別れる時の方が何倍も多くのエネルギーが必要だと思うのです。
結婚だって離婚の方が大変なことが多そうだし、買い物だって買うより返品する方が手間がかかる。

一度、結婚する方向に物事が進みだすとそれを途中で阻止しようなんて考えるとメチャクチャ大変なのではないかと思うんですよね。

でも、この作品、別れることになる話とはいえドロドロしたものではなくて、主人公の女の子はどんどん素敵になっていくし、相手の男も最終的にはいい男になるのです。

最後の結婚式が壊れていくクライマックスでの彼の長台詞がいい。

「僕が君とつきあっていたのは
僕の優越感からだったんだ
僕は子供の頃から挫折というものを知らなかった
あらゆることにおいてトップでやってきたし
それが当たり前のことと思ってきた
優しくてかわいくて僕の言うことを何でも聞いてくれる女の子
それは僕自身の当たり前をくずさないための自己防衛だった
結局 君が僕より下の人間であればよかったわけだ
でも それが大きな間違いだとわかった時
僕は・・・
壊れはじめたんだ
壊れてしまった僕は僕自身をどうしていいのか
全くわからなくなってしまった
君に対しても・・・・・・だ
生まれて初めての挫折・・・・・・だった
僕は君にどうしようもなくひどいことをした
ごめん・・・・・・」

この台詞、深いですね。
人間同士の付き合い・・・結婚でも友だちでも職場でも・・・そういうことにおいて、
<僕より下の人間>などという考えを抱いていては真の付き合いは出来ない・・・ま、そういうことでしょうかね。

・・・で、この後、ものすごい邪気が守護霊であるロニーを襲うんだけど、
邪気は小さな子どもというか天使のような姿のものの集団なんですよね。
邪気がおどろおどろしい姿をしているのなら何にも思わないのだけど、
何故、天使(?)が邪気なんだろうね?
無邪気なものが一番怖いってことなのかなあ?

ラストもとってもいい終わり方なんですよね。
いい作品はやっぱり何年経ってもいいですね。


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