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本の迷宮

漫画感想ブログです。「漫画ゆめばなし」(YAHOO!ブログ)の中の本の感想部分だけを一部ピックアップしています。

秘密 3 (清水玲子)

2007-04-06 09:59:08 | 漫画家(さ行)
(平成19年3月5日発行)


<帯の言葉より>

犯罪被害者の脳を取り出し、生前の映像記憶を再現する技術を駆使し、
難解な事件の真相に迫る科学警察研究所・法医第九研究室。
5年前の事件をなぞるように起こる惨殺事件を前に、
「第九」メンバーは過去と現在の二つの事件を同時に追及してゆくのだが……!?



かなりグロテスクで残酷な死体がたくさん出てくる。
こういう表現の苦手な人は止めておく方がいいかもしれない。
しかし、清水玲子の冷たく美しい描線で描かれてるせいか私にはそういうものがそれ程気にならない。


ストーリーは全体にやるせなさが漂う。
ラストもハッピーエンドなどではない。


<負の感情>がそこかしこに表れる。
救いのないストーリーと言えるかもしれない。


それなのに、どこか魅力的でついつい読んでしまう。


何故だろう??


一見救いがない様に思えるけれども、登場人物たちの心の底にある弱さ、優しさ、哀れさなどに魅かれるのかもしれない。



被害者が加害者になり、加害者が被害者になる。
被害者も加害者も紙一重で、いつ立場が逆転してもおかしくはない。
それどころか、被害者でも加害者でもない単なる第三者が突然事件に介入してくる怖さ!

ラスト、事件が終わった後、何が起こったかが書かれている。
その中に、こういう一文がある。



12月末
いやがらせが続き
佳人の両親 引越しをする



現実の事件でも加害者の家族に全く関係のない第三者が攻撃(いやがらせ)をすることがあるようだ。

何故だろう?
彼らは自分が正義の使者だとでも思っているのだろうか?

そういう行為は果たして<正義>なんだろうか?

この本の内容には直接関係はないかもしれないが、
ラストのこの文章を読んでそんな事をフト思ったのだ。


家族の食卓 (柴門ふみ)

2007-03-02 09:04:28 | 漫画家(さ行)
(1991年・1993年発行)



この作者の「東京ラブストーリー」は1巻しか読んでいない。
ドラマは全然観ていない。
BSマンガ夜話でいしかわじゅんが柴門ふみ非難をしたことがあったと思うが
その時は漫画も全然読んでいなかったのでイマイチよくわからなかった。



・・・で「家族の食卓」
これは図書館にあったので借りてみた。
色んな家族のたわいない話が載っていて、読むと結構良かった。



(作者あとがきより抜粋)
家族とは厄介なもので、面倒至極、てこずることこのうえない。
甘やかすとつけあがり、ずかずかと踏みこんでくるくせに、
少しそっぽを向くと赤の他人以上に冷淡になる。
うまくいくほうが稀であり、
たいていの家族はいつも何がしかのきしみや問題点を抱えているものです。
それでもとりあえず<家族を肯定するところから始めよう>というのが、本作品のテーマです。
なんだかんだあって楽なことばかりじゃないけれど、
でも、家族ってやっぱりそう悪いもんじゃないという思いが読者の方に伝わってくれたら、
作者としては本望です。



この<家族を肯定するところから始めよう>・・・というテーマが好きだ。



世の中、色んなものに対する非難・批判・バッシング・悪口・陰口etc・・・で溢れているような気がする。
私だって、正直言って<ど~~~しても好きになれない人>もいる。
悪口も言ってしまうこともある。
しかし・・・そういう人でもゆっくり語り合えばもしかして多少は理解しあえるのではないかとも思う。
ただ・・・それで簡単に物事が解決すれば世の中苦労はないって事なのだが・・・。(苦笑)


先日たまたまTVをつけると、
「大人の条件」として「人を褒めることが出来ること」・・・とか、言っていた。
なるほど、「人を褒める」・・・簡単なようで結構難しい。
「褒める」っていうことはその人の「良い所」を見つけ出すことでもある。
悪い所はすぐわかるが良い所は難しい・・・。
しかも、それを素直に褒めるのはもっと難しい!?
お互い相手を思いやり褒めあうことが出来れば
世の中随分住み易くなると思うのだが・・・。


この作品に登場してくる家族は、それぞれ何らかの問題を抱えている。
が・・・相手の気持ちを思い遣ることで解決策を見出してゆく。


「ウソっぽいよな~。」とか「所詮作り事だ。」とか言わないで、
たまには、作品を読んで素直に良かったね。と思いたい。


バジリスク-甲賀忍法帖- (作画:せがわまさき)(原作:山田風太郎)

2007-03-01 09:19:36 | 漫画家(さ行)
絵がきれい。
CG処理をしているようだが、どういう風に描いているのか非常に興味がある。
今後、こういうタイプの漫画がどんどん増えていくのだろうか?
漫画の表現技術の進歩には目をみはるものがある。10年後、20年後の漫画がどうなっているのか大いに楽しみである。


さて、内容だが、まあ、「ロミオとジュリエット」の忍者版?といったところか・・・。
いや、別に悪口じゃないですよ。
深ーく人物の心情について考察するより、
単純にワクワク、ドキドキ、ハラハラしながら、次は誰と誰が戦うのだろう?とか、どんな忍術を使うのだろうか?・・・と楽しむのがいいんじゃないのかなー?と思うのだ。
勿論、登場人物の心情考察や、ストーリー展開、などがダメな作品だと言ってるわけではない。
ただ、娯楽ものとして純粋に楽しむことの出来る作品だと言いたいのだ。

確か、原作の「甲賀忍法帖」は、かつて横山光輝の「伊賀の影丸」などにも影響を与えたものだったと思う。
そのせいか、私はこの「バジリスク」を読んでいると、どうしても「伊賀の影丸」が頭に浮かんでしまうのだ。そして、技術的には、圧倒的にこちらの方が綺麗な絵で迫力もあるのだが、ワクワク感は「伊賀の影丸」の方に感じてしまうのだ。
やはり、子供の頃受けた印象というのは強いんだなー。と、我ながらに感心してしまう。(苦笑)

何故「バジリスク」っていうタイトルなのかな?と思って調べてみると、ヘビの姿をしていて、睨んだだけで相手を殺せるという想像上の生物がいるらしい。たぶん、それを意味しているんだろうなーと思う。

私はこの作者の漫画はこれが初めてだったのでよく知らなかったのだが、アニメにもなってるらしくて、結構人気があるようだ。これから、注目すべき漫画家なのかもしれない。

台風五郎シリーズNo.19 鉄と鉛と (さいとう・たかを)

2007-02-28 11:54:10 | 漫画家(さ行)
出版年不明(昭和30年代作品)



この本は義兄から貰いました。義兄は友人から貰ったそうです。
(人から貰ったものを横流ししていいのか~?・・・この場合はいいのです。・・・笑)
義兄の友人というのが古い漫画本をかなりたくさん持っている人で、私も学生時代古いCOMをダンボール箱いっぱい借りて読んだ覚えがあります。


・・・で、この本。
どうやら貸し本屋の本らしくて、本のページがバラバラにならないように中身を紐で綴じて補強していたり、最後のページには貸し出し数とか、訳の分からない数字を書き込んでいます。
たぶん、25円で貸し出してたようです。


25円という所に時代を感じますよね~。(笑)



かなり初期のさいとう・たかをプロダクションの作品です。
主人公の探偵屋台風五郎の顔は目が大きくて黒目がちで結構可愛い!!
ペンタッチとかおっさん顔とかは今のさいとうプロの絵柄の特色は十分出てるし、
この表紙などを見るとかなり違う絵かな~と思ってしまうけど、
やっぱりどう見てもちゃーんと<さいとうプロ作品>です。


ゴルゴ13 (さいとう・たかを)

2007-02-24 00:40:42 | 漫画家(さ行)
(画像の129巻の発行は2003年)


床屋で「世界現代史」を勉強する為の必需品?


「国籍・年齢不詳の殺し屋ゴルゴ13」
日本人の多くの人がこの名前を聞いた事があるのではなかろうか?



「超シリアス男」なのでこの男がダジャレを言っている所は見たことがない。
もし、そういう場面があれば「トリビアの泉」にでもハガキを出せば採用されるのではなかろうか?(笑)
超シリアス故に様々な漫画にギャグ的感覚で登場していたりする。
自分がそういう風に登場していることをゴルゴ13本人が知ったらどう思うだろうか?
人前では顔色ひとつ変えないのは確かだろう。(笑)


ゴルゴ13の”ルール”というものがある。
「握手をしない」とか「絶対に壁に背を向けて立つ」とか「依頼人とは二度会わない」とか「依頼時の嘘は許さない」とか・・・
よくまぁ色々と考えたものだとも思う。
あのポーカーフェイスでそういう”ルール”を考えたのだろうか?
壁を背に立つからその壁の裏側に爆発物を仕掛けると殺せるかも?とか、
ルールを逆手にゴルゴ13暗殺計画を立てることも出来そうだ・・・とか、
なんか、ゴルゴ13を読んでると色々こちらが考えてしまうのだ。


ゴルゴ13には申し訳ないが、やっぱり超シリアス人間って、ギャグに最適だよね~。(笑)


ゴルゴ13が自分の吸っている葉巻を火も消さずに芝生の上に無造作に捨てるシーンがある。
だめだよ!”火のついた葉巻のポイ捨て禁止”というルールも是非作って欲しいものである。(爆笑)



食卓の魔術師 (佐々木倫子)

2007-01-13 19:45:42 | 漫画家(さ行)
この作者の初のコミックがこれだ。
絵は今と比べるとまだまだ・・・という感じではあるが、独特の雰囲気のキャラはもうこの時すでに出来上がっている。

主人公の黒田勝久は、雑踏を歩くのが怖い。
何故なら、
知っている人に会ってもわからないからだ。
2度や3度
会った程度の人なら
まず覚えていない。
「あら こんにちは」
・・・と言われた時の恐怖・・・


実は私は、この主人公の気持ちが非常によくわかる。
もしかして私をモデルにしたのではないだろうか?
・・・というぐらいそっくり同じなのだ。
私は「名前」は覚えることが出来るのだが「顔」が覚えられない。
そのためにした苦労話なら山ほどあるのだ!!(泣)


黒田には三本木という幼稚園以来のつきあいのある友人がいて、
黒田の知人のデータはほとんど三本木が記憶している。


私も学生時代は三本木のような友人がいた。
だから、学校内では何とかなっていたが、それ以外ではかなり苦労していた。
就職したり結婚した後は・・・かなり悲惨な有様だったのだ!!(涙)


まぁ、とにかく、この主人公には非常に親近感を覚えたものである。(笑)


Heaven?ヘブン (佐々木倫子)

2007-01-12 09:33:26 | 漫画家(さ行)

伊賀観のような息子が欲しい!・・・が、無理だ・・・。
娘が三人もいるのに誰も観のような性格じゃない。
よく考えるとダンナが観の父親のような性格じゃないんだから仕方ない。(苦笑)

オーナーのような性格になってみたい・・・が、無理だ・・・。
ワガママ、自己チュー、好き勝手・・・。
やってみたいが、何故か出来ない。それどころか、好き勝手にしないから、バカだ。と責められる。
どうして??私って、そういうキャラなのかしら?(涙)

川合君のようになーんにも考えずに、ふわーっと生きてみたい。
何をしても周りの人が笑って(?)許してくれる・・・。
いいよねー。
私も昔はどちらかというと、川合君のような性格だったのに、結婚してから、いつの間にかそうでなくなってしまった。
・・・何か悲しい・・・。

おたんこナース (佐々木倫子)(原案・取材:小林光恵)

2007-01-11 09:02:01 | 漫画家(さ行)
この漫画を読んでいると、つい、クックックッ・・・と声無き声で笑ってしまう箇所がある。
たぶん、私が読んでいる横にいると気持ち悪がられる事だろう。
絶対、電車の中とか他人がいる場所では読んではいけない漫画である。(笑)
しかし、誰もいない所だと笑うのは結構腹筋運動になって、ダイエットにいいのでは?などど考えてしまう。(笑)

まあ、とにかく面白い。
そして、病院が舞台だから、ちょっぴり感動もする。

この作者は似鳥ユキエのようなタイプの女性を描くのが非常に上手い。
(パワーがあって、ちょっと他人迷惑な所もあるが憎めないっていうタイプ。)
男性は逆にちょっと大人しい感じが多いかな?
中年男性などは結構ユニークなキャラが多いよね。

事実を元にそれを上手く料理するのが得意っていう感じだ。
一つ間違えれば単なる看護婦物語になるかもしれないのに、そうなってないのがこの作者の才能だろう。


動物のお医者さん (佐々木倫子)

2007-01-10 08:59:24 | 漫画家(さ行)
(昭和63年~平成5年 花とゆめ掲載)


この作品は一時期かなり流行ったので知ってる方も多いだろう。


ハスキー犬ブームは、この作品がきっかけだったという説もあるし、
北大の獣医学部の受験者も増えたらしい。
しかし、今はハスキーの姿をあまり見かけなくなったし、
北大の獣医学部の受験希望者もたぶん以前と同じくらいか、少子化の影響で少なくなっっているのではないだろうか?(調べたわけではないので本当かどうか知らない。)


日本人って流行に敏感というか影響を受けやすいというか・・・実に平和な国だな~と思ってしまう。(笑)


動物がいっぱい出てくるので動物好きにとって嬉しい作品だと思う。
登場人物も非常にユニークな人ばかりだし、
相変わらず服装もみんな実に個性的!
ストーリーも少女漫画なのに恋愛要素が全くない!!(笑)
男性にも読みやすいものになっているのではなかろうか?


久し振りにこの本を引っ張り出してきたのだが、チョビがやっぱり可愛い!
顔もいいし表情もいい。
そして、あの「毛」の描き方が実にいい!


月館の殺人 (作画:佐々木倫子 原作:綾辻行人)

2007-01-09 08:45:09 | 漫画家(さ行)
(2006年発行)


私は残念ながら鉄道マニアではないので、この登場人物たちの名前などが駅名などからとったものだとは全く気がつかなかった。


フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』の説明を読んで欲しい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E9%A4%A8%E3%81%AE%E6%AE%BA%E4%BA%BA


あらすじや名前の由来は↑を見ると一目瞭然。
・・・って、自分は何も書かないのか・・・?(笑)


とにかく、佐々木ワールドというか、
独特なキャラたちがよく描き分けられていて非常に面白い。


<テツ>などという言葉も初めて知ったのだが、
<テツ>にもいろんな種類があるとか・・・
ジコチューな<テツ>の面々がと~っても笑える♪


この作品は<テツ>である彼らが上手く描けているっていうだけで大成功~!
・・・って思うのは私だけ?


内容を言うとネタバレになるので書かないが、
まあ、いつもどおりのユニークなキャラたちが楽しい作品です♪


YASUJI東京 (杉浦日向子)

2006-12-20 09:16:50 | 漫画家(さ行)
(「小説新潮」1985年3月号~1986年3月号)


これは、この作者にしては珍しく現代が舞台。
井上安治という元治元年、浅草生まれの風景画家を探求?する話。
何だかちょっと不思議な雰囲気のする作品である。



この本には「鏡斎まいる」という作品も収録されている。
「SFマンガ競作大全集」1983年11月号
「月刊漫画ガロ」1984年8月号
「ASUKA」
の別々の三誌に掲載されたものだ。


この鏡斎というキャラが好きだ。
「術士」ということで実に不思議な術を使う。
しかもポーカーフェイス。
目はいつも線一本で表現されていて開いているのか閉じているのかわからない。(笑)


鏡斎を召抱えている若君が問う。
「鏡斎。
そちは一体なんじゃ。」
鏡斎はすまして答える。
「人にございます。」
「本当に。」
「正真正銘。」
にっこりと笑って答える鏡斎がとってもいい。

秘密-トップシークレット-  (清水玲子)

2006-12-12 00:08:16 | 漫画家(さ行)
死んだ人間の脳から映像を引き出して、その人間が何を見ていたかを知る事が出来るという発想が、なかなかいい。
しかも、その映像は、その人の主観が大いに入っていて、実際より美しかったり、愛らしかったり、或いは幻覚がそのまま見える。・・・という設定。

人それぞれ、同じ物を見ても、同じように感じているとは限らない。
私は、果たして世界をどう見ているのだろう?素直にそのまま見ていないような気がする。
・・・あまり人には私の脳の中は覗かれたくないなー。

薪警視正のキャラが、結構好みだったりする。年齢は30歳前後なのに、高校生にしか見えないというか、男にも・・・・・・? という設定。
頭が良くて、顔もいい。
毅然としているが実は意外とモロいところもある。
よく仕事もするが、よく眠る。・・・実に私好みの設定である。(笑)

WILD CATS (清水玲子)

2006-12-11 09:27:02 | 漫画家(さ行)
(「WILD CATS」平成9年 ララ9月号
「WILD CATSⅡ」平成10年ララ9月号
「WILD CATSⅢ」平成12年ララ2月号
「FLOWERS」平成10年メロディ5月号)


自分を猫だと信じるライオン「シーザー」が可愛い♪


体格に似合わずと~~っても気が小さくて弱い「シーザー」が愛おしい♪


飼い主の龍一のことが大好きで、人間になって結婚したいと真剣に悩む「シーザー」を抱きしめてやりたい♪


主人公は勿論顔の良い綺麗な少年なのだが、この作品に限って言わせて頂くならば、
シーザーが最高に素敵だ!!(シーザーはメスなんだけどね)


百物語 (杉浦日向子)

2006-11-25 23:49:04 | 漫画家(さ行)
(小説新潮 1986年4月号~1993年2月号掲載)


この作品は凄い!
絶対に後世に残る作品だ!!



作者が江戸の風俗を熟知しているとか何とか言う問題ではない。



ここには<江戸>というものが凝縮されて詰まっているのだ。
きっと・・・<江戸>というのは、こういうものなんだろうな~とすんなりと信じる事が出来る。
勿論、江戸時代の江戸に行った事があるわけじゃない。(当たり前)
だいたい現在の東京ですら私は数えるほどしか行った事がない。(これは関係ない?・・・笑)



まあとにかく、これを読んでいる途中で思わず、何か「原典」があるんじゃないかと調べたぐらいなのだ。



百物語なのだから、怪異譚がいっぱい出てくる訳だ。
それらは全部<江戸の匂い>がする。(勿論、江戸に行った事がないのだけど・・・)
さも、江戸時代の江戸の人が語ったんだろうな~と思える内容ばかりなのだ。



例えば、「道を塞ぐもの三話」では、
古い木と蚊帳つり狸と狢が道を塞ぐ話だが、どれも<こういうことがあった>という事のみを淡々と語っているだけだ。

山の一本道を歩いていると
長あい帯のぶら下がっているのに出くわす。
ただ下がっているだけで
別にどうするわけでもありませんがね。
そんなものが
下がった日には
気味の悪いものです。

くどくどと解説もなければ、オチもない。



そもそも、昔話だとか古典だとかはそういう語り口のものが多いと思う。
今は、くどいぐらい懇切丁寧に書くのが流行っているのかもしれないが、
そういうものばかり見ているとこの杉浦日向子の「百物語」などを読むとある種清々しささえ感じてしまう。(笑)



読み手側の<想像力>がないと、こういうものは物足りなく思ってしまうのかもしれないが、
想像力のたくましい者、或いは物事を素直に受け止める事の出来る者には、
最高に怖くて楽しいお話になっていると思う。