みや子のひげ

2011-01-21 00:23:09 | お宝
最初の一本は
カフェの階段で拾った。

猫の髭の硬さは知っていても
それを根元の方から確認できるなんて。

なんだか勿体なくて
しまっておいた。

それから何度も拾うことになり、
数えたら118本になっていた。

みや子は顔は小さいのに
髭はとても立派だった。

体は軽いのに、手足も尻尾も長くて
掌にみや子の胴をのせて
「みや子、伸んび伸んびー」
と言うと
前後に手と足をピーンと伸ばしてみせて
「わあ長いねえ」
とお客様に言われるのが好きだった。

みや子はほかにも私の言葉がわかって
「みや子、シッポッポ」
と言うと
不機嫌そうにスパッスパッと
尻尾を左右に振ってみせた。

また、
「みや子、ゴローン」
と言うと走ってきて
蒲団の上にゴローンと
身を投げ出した。

言葉だけじゃなくて
目の合図でも気持ちを汲み取ってくれた。
棚の上で休むみや子に目を細めて微笑みかけると
みや子も必ず目を細めて返してくれた。

旅行が好きで
人間の言葉がわかって
芸をするなんて
猫じゃないと言われそうだが、
本当だもの。

みや子の中には人が入っていて
深い深いところで心が通じ合っていた。

10年で118本、
ほぼ毎月一本拾っていたことになる。
でも最後の一本はバッグにしまっているので
写真に写っているのは117本(最後の年は牙も拾いました)。