今年10月から消費税の仕組みを大きく変えるインボイス制度がスタートするというので、マスコミの話題になることも増えたようです。その中にはこの制度に対する批判的な論調も多いようです。
つい先日も、毎朝聴いている早朝のラジオ番組で、或る有名なパーソナリティが声高にインボイスを批判していました。その主な論点は、
① 何故、経済状況が悪いこの時期にインボイス制度を始めるのか? 岸田首相が国民の声を聴く耳を持っているというのは嘘だ!
② インボイスは、零細事業者やフリーランスから更に税金を巻き上げる庶民いじめの仕組みだ!
という趣旨だったと記憶しています。(曖昧な記憶ですが)
これからの半年~1年くらいはインボイスのことがマスコミで大きな話題になりそうなので、私にはあまり関係ないのですが、暇潰しにインボイスについて調べてみました。
この図は私が理解したことを更に簡略化して描いたものですから、細部の正確性は保証しませんし、私の認識が間違っている可能性もあります。
商品の買手や不動産の借手などは、その代金や借地料に消費税分を上乗せした額を売手や貸手に支払います。
本来消費税は国の税金ですから、受取った売手や貸手は消費税分を国に納税するのが筋だと思います。所が、今は売上が年額1,000万円未満の事業者は消費税の納税を免除されているのです。即ち、売上1,000万円未満の事業者は消費税分を丸儲けしています。国は徴税コストに見合うだけの税収増が見込めないと考えていたのではないかと私は思っています。
所が、国もいよいよ財政が逼迫し、インボイスという仕組みを整えた上で、零細事業者からも消費税分を取り上げることにしたのだろうと私は想像しています。
インボイス制度の下では、零細事業者も国が認定した「適格請求書発行事業者(以下適格事業者)」になり、インボイスを発行する必要があります。従来通り「免税業者」を選択することも可能ですが、インボイスではない単なる「領収書」では買手・借手は支払った消費税分を自分の売上から控除できず、その分税金が増えて損をします。従って、買主・借主は売主・貸主に対し、適格事業者になって正規のインボイスを発行するよう要求する筈です。
売主・貸主がその要求に応えられなければ、予め消費税分を上乗せしない金額で取引することを容認するか、取引自体を諦めざるを得なくなる可能性があります。
これまでは消費税分の納税を免除されていた事業者も、適格事業者になれば面倒な事務作業が必須になりますし、消費税を国に納税する義務も生じます。
結局、零細事業者は適格事業者になってもならなくても減収は避けられないのです。
さて、初めに記したインボイス批判の①ですが、インボイス制度に関する法律が国会で成立し、施行されたのは2016年11月、安倍内閣の時です。岸田さんはたまたま開始時期に総理大臣であるに過ぎません。
この法律が施行されてから、多くの事業主はその日に備えて準備してきた筈です。零細業者やフリーランスの方などが大変な苦労を強いられることは事実だと思いますが、直近の経済状況に合わせて開始日を安易に先延ばしするようなことは長期的には大きな損失になると思います。目先のことに囚われて抜本的な改革の先送りを繰り返して来たことが今日の日本の衰退を招いた大きな理由の一つではないでしょうか?
次に②ですが、改革には痛みを伴うものですから、個々の企業や個人に取って厳しい面があることは事実です。しかし、この改革は社会の仕組みとして妥当な仕組みなのかどうか、あるべき姿なのか否かが判断の基準だろうと思います。
数年前、消費税が8%から10%に上がったとき、或る知人から面白い話を聞きました。
その知人は住宅1軒分ほどの土地を或る事業者に貸しているのですが、何も要求していないのに消費税がアップしたら自分が受け取る賃貸料がその分(約2%)増えたというのです。そしてネットで調べたところ、売り上げが1,000万円以下であれば、消費税分をそのまま貰っても構わないといことが分かったと言っていました。二人で、「何か変だな」と話し合った記憶があります。
今、声を大にしてインボイスを批判している人の中にも、これまで消費税分を丸儲けして来た人たちがいる筈です。自分たちは弱者なのだからその不合理をこれからも続けてくれと要求するのはやはり間違いだと思います。
一方、所謂フリーランスなど個人事業主の中には、自分が受け取る報酬には消費税分が含まれていることを十分理解しないまま、不明朗な契約に従わざるを得なかった人が多いとも言われています。こうした人たちがインボイスの導入によって大きな不利益を被るとするなら、勿論それは大きな社会問題です。
ただ、世の中の仕組みとしてはどちらがあるべき姿なのか、どちらに向かって努力すべきなのか、或いは必要な手当てを考えるべきか、進むべき方向を間違えてはいけないような気がします。
つい先日も、毎朝聴いている早朝のラジオ番組で、或る有名なパーソナリティが声高にインボイスを批判していました。その主な論点は、
① 何故、経済状況が悪いこの時期にインボイス制度を始めるのか? 岸田首相が国民の声を聴く耳を持っているというのは嘘だ!
② インボイスは、零細事業者やフリーランスから更に税金を巻き上げる庶民いじめの仕組みだ!
という趣旨だったと記憶しています。(曖昧な記憶ですが)
これからの半年~1年くらいはインボイスのことがマスコミで大きな話題になりそうなので、私にはあまり関係ないのですが、暇潰しにインボイスについて調べてみました。
この図は私が理解したことを更に簡略化して描いたものですから、細部の正確性は保証しませんし、私の認識が間違っている可能性もあります。
商品の買手や不動産の借手などは、その代金や借地料に消費税分を上乗せした額を売手や貸手に支払います。
本来消費税は国の税金ですから、受取った売手や貸手は消費税分を国に納税するのが筋だと思います。所が、今は売上が年額1,000万円未満の事業者は消費税の納税を免除されているのです。即ち、売上1,000万円未満の事業者は消費税分を丸儲けしています。国は徴税コストに見合うだけの税収増が見込めないと考えていたのではないかと私は思っています。
所が、国もいよいよ財政が逼迫し、インボイスという仕組みを整えた上で、零細事業者からも消費税分を取り上げることにしたのだろうと私は想像しています。
インボイス制度の下では、零細事業者も国が認定した「適格請求書発行事業者(以下適格事業者)」になり、インボイスを発行する必要があります。従来通り「免税業者」を選択することも可能ですが、インボイスではない単なる「領収書」では買手・借手は支払った消費税分を自分の売上から控除できず、その分税金が増えて損をします。従って、買主・借主は売主・貸主に対し、適格事業者になって正規のインボイスを発行するよう要求する筈です。
売主・貸主がその要求に応えられなければ、予め消費税分を上乗せしない金額で取引することを容認するか、取引自体を諦めざるを得なくなる可能性があります。
これまでは消費税分の納税を免除されていた事業者も、適格事業者になれば面倒な事務作業が必須になりますし、消費税を国に納税する義務も生じます。
結局、零細事業者は適格事業者になってもならなくても減収は避けられないのです。
さて、初めに記したインボイス批判の①ですが、インボイス制度に関する法律が国会で成立し、施行されたのは2016年11月、安倍内閣の時です。岸田さんはたまたま開始時期に総理大臣であるに過ぎません。
この法律が施行されてから、多くの事業主はその日に備えて準備してきた筈です。零細業者やフリーランスの方などが大変な苦労を強いられることは事実だと思いますが、直近の経済状況に合わせて開始日を安易に先延ばしするようなことは長期的には大きな損失になると思います。目先のことに囚われて抜本的な改革の先送りを繰り返して来たことが今日の日本の衰退を招いた大きな理由の一つではないでしょうか?
次に②ですが、改革には痛みを伴うものですから、個々の企業や個人に取って厳しい面があることは事実です。しかし、この改革は社会の仕組みとして妥当な仕組みなのかどうか、あるべき姿なのか否かが判断の基準だろうと思います。
数年前、消費税が8%から10%に上がったとき、或る知人から面白い話を聞きました。
その知人は住宅1軒分ほどの土地を或る事業者に貸しているのですが、何も要求していないのに消費税がアップしたら自分が受け取る賃貸料がその分(約2%)増えたというのです。そしてネットで調べたところ、売り上げが1,000万円以下であれば、消費税分をそのまま貰っても構わないといことが分かったと言っていました。二人で、「何か変だな」と話し合った記憶があります。
今、声を大にしてインボイスを批判している人の中にも、これまで消費税分を丸儲けして来た人たちがいる筈です。自分たちは弱者なのだからその不合理をこれからも続けてくれと要求するのはやはり間違いだと思います。
一方、所謂フリーランスなど個人事業主の中には、自分が受け取る報酬には消費税分が含まれていることを十分理解しないまま、不明朗な契約に従わざるを得なかった人が多いとも言われています。こうした人たちがインボイスの導入によって大きな不利益を被るとするなら、勿論それは大きな社会問題です。
ただ、世の中の仕組みとしてはどちらがあるべき姿なのか、どちらに向かって努力すべきなのか、或いは必要な手当てを考えるべきか、進むべき方向を間違えてはいけないような気がします。