金融市場では取引速度を競うレースが依然として活発ですが、世界で最も強力な証券会社や取引所に対して光速に匹敵する速度で株式取引を処理できるというスイッチを提供しているのは、フィンテック(IT技術を使った新たな金融サービス事業)を手掛ける一握りの新興企業です。
豪シドニーに本拠を置くメタマコとエクサブレイズ両社や、シカゴに本拠を置くエクセロア社は、取引所から電子トレーダーに送るデータなど、メッセージを一方から他方に送るのに約4ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)しかかからないスイッチを製造しています。
注文を集めてそれを取引所に送るプロセスを含めると、新しいスイッチが一つの動作を完了するのに要する時間は、光が野球の本塁から一塁までの距離を進む時間とほぼ同じです。これは取引所のサーバールームで現在使われている多くのスイッチよりも数倍も速い。超高速取引(HFT)の世界では、まばたきの間に富を獲得したり失ったりする行為が何度も繰り返されているのです。
メタマコの共同創設者デービッド・スノードン氏は「われわれは物理学の限界に挑んでいる」と述べています。同社は、シスコシステムズやアリスタネットワークスのような企業が製造している在来型のネットワークスイッチを、いわばレーシングマシンに変えつつあると言えます。
こうした超高速スイッチは、1秒間で何千回もの取引を送り出すコンピューター取引プログラムを使う会社からの需要に見合うように設計されています。これらのスイッチは宅配ピザの箱とほぼ同じ大きさの黒色の装置で、通常は銀行やヘッジファンドが証券取引所のデータセンターで動かしている巨大なサーバー群の上に置かれています。
超高速スイッチは、膨大な量の株式市場データを同時に何十もの取引サーバーに送っていす。その後、金融機関など企業の持つアルゴリズムによってこの情報が消化されると、買いあるいは売り注文を電光石火で執行します。
ますます進む取引の高速化は、通常の投資家を犠牲にし、HFTトレーダーらを有利にしていると批判されています。それは、取引システムを運営する新興企業IEXグループが、取引速度を意図的に遅らせる仕組みを導入したことにもつながりました。
しかし超高速スイッチメーカー各社は、注文の執行が光速に近いスピードになれば、実際には市場はより公平になると主張しています。なぜなら、あらゆるデータが可能な限り迅速に進むシステムでは、トレーダーが悪用できるような技術的抜け道はなくなるからです。
もちろん、取引ネットワークを構成するのはスイッチだけではありません。コンピューター専門家は、超高速スイッチのスピードは、ネットワークカードなどのハードウェアが同じように追随できた時にのみ意味を持ってくると指摘しています。前出のエクサブレイズのマシュー・チャップマン最高技術責任者(CTO)は「こうした超高速スイッチはもはやボトルネックではない。つまり、レイテンシ(遅延)は今やシステム内の他のあらゆるところにある」と語っています。
新しいスイッチはまた、大きな勝利も保証しません。コンピューター工学で博士号を持つメタマコのスノードン氏は「速く、かつ賢くなければならない」とし、「愚かなトレーディング戦略では結局のところ儲けることはできない」と語っています。
それでも、通信会社から証券会社にいたるまで、各企業は、この新スイッチ技術に関心を寄せています。一方、多くのコンピューター取引トレーダーは優位に立つべくこのようなスイッチを購入しつつあるのです。先月、オーストラリア証券取引所(ASX)は、メタマコのハードウェアを使用していることを認めました。メタマコは、米国のHFT会社の半分以上が既に同社の装置を使用していると推計しています。
新しいスイッチはデータをほとんど解析せずにそのまま転送するため、シスコ製などのスイッチよりもスピードが速くなっています。シスコ製などのスイッチは、情報を解析した後でそれを送る場所を決定しています。
世界最大級の銀行やヘッジファンドなどが会員になっている「セキュリティーズ技術分析センター(STAC)」(米イリノイ州ウォーレンビル)の試験によれば、メタマコの装置は、トラフィック量とは無関係に4ナノ秒という一定の速度を記録しました。これは、データの殺到時にサーバーが遅くなるのを懸念する金融機関にとって重要な特徴です。
メタマコとエクセロアは両社製のスイッチについて、注文を取引所に送り返すなどもっと複雑なタスクを含むメッセージング全体の作業を約85ナノ秒で完了していると述べました。シスコのウェブサイトによれば、シスコの最速スイッチでは同様の作業に少なくとも240ナノ秒を要するといいます。
シドニー郊外に拠点を持つメタマコは、シカゴからアムステルダムまで世界各地の顧客に超高速スイッチを月間約100台販売しています。1台当たり約2万ドル(約200万円)で、米国のコンサルタント会社タブ・グループによれば、米国株式取引の半分近くを占める高速トレーダーたちにとって最も入手しやすいスイッチの一つとなっています。
ロンドンに本拠を置くネットワークサービス会社FXエコシステムは最近、メタマコ製スイッチを導入してデータセンターの一部を拡充しました。同社のジェームズ・バニスターCEOによると、速度を重視するトレーダーや銀行にとって魅力的に映るようにするのが狙いです。
英国が欧州連合(EU)離脱の是非を決める国民投票を実施した6月23日の夜、英通貨ポンドに関するさまざまな憶測が飛び交い、通常の10倍もの量のデータがFXエコシステムのネットワークに殺到しました。
スイッチが不具合を起こすリスクが高まったのですが、その日徹夜したバニスター氏は「投票結果が飛び込んできた時、われわれは固唾をのんでいたが、(スイッチの)技術は素晴らしかった」と述べていました。(ソースWSJ)
豪シドニーに本拠を置くメタマコとエクサブレイズ両社や、シカゴに本拠を置くエクセロア社は、取引所から電子トレーダーに送るデータなど、メッセージを一方から他方に送るのに約4ナノ秒(1ナノ秒=10億分の1秒)しかかからないスイッチを製造しています。
注文を集めてそれを取引所に送るプロセスを含めると、新しいスイッチが一つの動作を完了するのに要する時間は、光が野球の本塁から一塁までの距離を進む時間とほぼ同じです。これは取引所のサーバールームで現在使われている多くのスイッチよりも数倍も速い。超高速取引(HFT)の世界では、まばたきの間に富を獲得したり失ったりする行為が何度も繰り返されているのです。
メタマコの共同創設者デービッド・スノードン氏は「われわれは物理学の限界に挑んでいる」と述べています。同社は、シスコシステムズやアリスタネットワークスのような企業が製造している在来型のネットワークスイッチを、いわばレーシングマシンに変えつつあると言えます。
こうした超高速スイッチは、1秒間で何千回もの取引を送り出すコンピューター取引プログラムを使う会社からの需要に見合うように設計されています。これらのスイッチは宅配ピザの箱とほぼ同じ大きさの黒色の装置で、通常は銀行やヘッジファンドが証券取引所のデータセンターで動かしている巨大なサーバー群の上に置かれています。
超高速スイッチは、膨大な量の株式市場データを同時に何十もの取引サーバーに送っていす。その後、金融機関など企業の持つアルゴリズムによってこの情報が消化されると、買いあるいは売り注文を電光石火で執行します。
ますます進む取引の高速化は、通常の投資家を犠牲にし、HFTトレーダーらを有利にしていると批判されています。それは、取引システムを運営する新興企業IEXグループが、取引速度を意図的に遅らせる仕組みを導入したことにもつながりました。
しかし超高速スイッチメーカー各社は、注文の執行が光速に近いスピードになれば、実際には市場はより公平になると主張しています。なぜなら、あらゆるデータが可能な限り迅速に進むシステムでは、トレーダーが悪用できるような技術的抜け道はなくなるからです。
もちろん、取引ネットワークを構成するのはスイッチだけではありません。コンピューター専門家は、超高速スイッチのスピードは、ネットワークカードなどのハードウェアが同じように追随できた時にのみ意味を持ってくると指摘しています。前出のエクサブレイズのマシュー・チャップマン最高技術責任者(CTO)は「こうした超高速スイッチはもはやボトルネックではない。つまり、レイテンシ(遅延)は今やシステム内の他のあらゆるところにある」と語っています。
新しいスイッチはまた、大きな勝利も保証しません。コンピューター工学で博士号を持つメタマコのスノードン氏は「速く、かつ賢くなければならない」とし、「愚かなトレーディング戦略では結局のところ儲けることはできない」と語っています。
それでも、通信会社から証券会社にいたるまで、各企業は、この新スイッチ技術に関心を寄せています。一方、多くのコンピューター取引トレーダーは優位に立つべくこのようなスイッチを購入しつつあるのです。先月、オーストラリア証券取引所(ASX)は、メタマコのハードウェアを使用していることを認めました。メタマコは、米国のHFT会社の半分以上が既に同社の装置を使用していると推計しています。
新しいスイッチはデータをほとんど解析せずにそのまま転送するため、シスコ製などのスイッチよりもスピードが速くなっています。シスコ製などのスイッチは、情報を解析した後でそれを送る場所を決定しています。
世界最大級の銀行やヘッジファンドなどが会員になっている「セキュリティーズ技術分析センター(STAC)」(米イリノイ州ウォーレンビル)の試験によれば、メタマコの装置は、トラフィック量とは無関係に4ナノ秒という一定の速度を記録しました。これは、データの殺到時にサーバーが遅くなるのを懸念する金融機関にとって重要な特徴です。
メタマコとエクセロアは両社製のスイッチについて、注文を取引所に送り返すなどもっと複雑なタスクを含むメッセージング全体の作業を約85ナノ秒で完了していると述べました。シスコのウェブサイトによれば、シスコの最速スイッチでは同様の作業に少なくとも240ナノ秒を要するといいます。
シドニー郊外に拠点を持つメタマコは、シカゴからアムステルダムまで世界各地の顧客に超高速スイッチを月間約100台販売しています。1台当たり約2万ドル(約200万円)で、米国のコンサルタント会社タブ・グループによれば、米国株式取引の半分近くを占める高速トレーダーたちにとって最も入手しやすいスイッチの一つとなっています。
ロンドンに本拠を置くネットワークサービス会社FXエコシステムは最近、メタマコ製スイッチを導入してデータセンターの一部を拡充しました。同社のジェームズ・バニスターCEOによると、速度を重視するトレーダーや銀行にとって魅力的に映るようにするのが狙いです。
英国が欧州連合(EU)離脱の是非を決める国民投票を実施した6月23日の夜、英通貨ポンドに関するさまざまな憶測が飛び交い、通常の10倍もの量のデータがFXエコシステムのネットワークに殺到しました。
スイッチが不具合を起こすリスクが高まったのですが、その日徹夜したバニスター氏は「投票結果が飛び込んできた時、われわれは固唾をのんでいたが、(スイッチの)技術は素晴らしかった」と述べていました。(ソースWSJ)
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