河北新報 東北のニュース/新エネ戦略決定 戸惑う青森 疑心暗鬼、国策どこへ
原発や核燃料サイクル施設が集中立地する青森県に、安堵(あんど)と疑念が交錯した。政府が14日決定した新エネルギー戦略はサイクル政策を継続する一方、2030年代の原発稼働ゼロを明記した。原発ゼロが実現すれば、使用済み核燃料を再処理する意義は失われる。矛盾に満ちた「戦略」は、国策を前提に描いた地域の将来像を守ってくれるのか。立地自治体の評価は揺れている。
「最悪の事態を避けたかった。政府の判断を評価したい」。核燃サイクルの中心施設、使用済み核燃料再処理工場がある青森県六ケ所村の古川健治村長は、ほっとした表情で語った。
再処理工場は、使用済み核燃料からウランとプルトニウムを取り出し、新たな燃料として利用できるよう処理する施設。1993年の着工以来、2兆円超の建設費が投じられた。工事進捗(しんちょく)率は99%。だが、本格稼働の見通しは立っていない。
巨大プロジェクトの命運を左右する見直し論議に、村は「撤退なら村の存亡にかかわる」と危機感を強め、国に堅持を迫ってきた。村議会も「事業中止なら使用済み燃料の村外搬出を」と求める意見書を7日に可決。古川村長は「政府が(われわれの)思いを受け止めた結果」と受け止めた。
対照的に2030年代の原発ゼロに懸念を示したのは、むつ市の宮下順一郎市長。市内で建設中の使用済み核燃料中間貯蔵施設の稼働期間と符合しないからだ。
施設は13年10月の事業開始予定。サイクルの一環として、再処理用の使用済み核燃料を50年間保管する。
宮下市長は「30年代に原発ゼロになれば、残る約20年の施設の役割はどうなるのか示されていない」と指摘。「再処理を前提としない使用済み燃料は受け入れられない」と、なし崩し的な最終処分地化に警戒感をにじませた。
新たな戦略は、原発の新増設を認めない方針も打ち出した。東通村の越善靖夫村長は、着工済みの東京電力東通原発について「福島第1原発事故を教訓に安全性は向上した」と強く建設推進を求めた。
大間町の金沢満春町長も電源開発大間原発について「もう『新増設』には当たらない」と強調した。大間原発の工事進捗率が4割、敷地外で製造される部品を含めると6割程度出来上がっているというのが論拠だが「国は建設可能かどうか、はっきり示してほしい」とお墨付きを求めた。
三村申吾知事は「15日に枝野幸男経済産業相の説明を聞き、県の要請がどうなったのかを確認したい」と評価を避けた。
県幹部は「原発賛成、反対派双方の意見が併記され、非常に分かりにくい。喜んでいいのか悪いのか分からない」と複雑な表情を浮かべた。
2012年09月15日土曜日
裏読みはしたくありませんが、、、、