あとだしなしよ

Japanese text only..
落書きブログです。
報道記事の全引用は元記事消去への対応です。m(__)m

海と毒薬

2006年12月18日 | 
海と毒薬
遠藤周作 昭和32年

戦争末期に空襲が続く中、無差別爆撃を行った米軍捕虜に対して行われた生体解剖事件を小説化したもの。オペに立ち会った末端の見習い医師や看護婦の心理、生活が描かれていた。生体解剖の描写以外にも、満州の貧富差の激しい植民地支配の様子や昭和初期の日本の子供たち、小説の冒頭の昭和30年代の地方都市のさびれた描写も興味深かった。医学生戸田の理屈を並べたてるご都合主義と利己主義は、こんな医者や政治家や夫などに身を預けることになったら本当に嫌だと思わせるものだった。小説中の解剖は肺結核の実験のためのもので、遠藤周作自身も肺結核を患っていたらしいのでそのへんの引っかかりもあったのだろうか…捕虜に対して無機的に行われるオペのシーンは、医師に対する不信感さえ抱いてしまった…中国での日本兵の様子もチラチラ描かれています。主人公の学生、勝呂医師は無理に強制されたわけでは無い形で助手としてオペに参加する。意志薄弱な性格として描かれる彼は、良心の呵責から実行後に人間味を失ってしまう…好きだった詩も心に響かなくなる。いやだのひと言が言えなかった為に…
肝心の執刀医の心理や背景が描かれていないのが物足りない気がしたが、実話を元にしているので障害も多かったのだろうか。「悲しみの歌」がこれの続編だとのこと。


カート・ヴォネガット、ラジオインタビュー

2006年04月03日 | 
今一部で話題のタイタンの妖女の作者カート・ヴォネガットのラジオインタビューが2本聞けます!

BBC Radio4: Front Row
NPR:Kurt Vonnegut Judges Modern Society

公式ホームページより。

私はヴォネガットの声をはじめて聞きましたが、冗談が好きなイメージどおりのじーさんの感じでした。
BBCのほうが、自由に喋っている感じで、エイゴ良く分からないのですがブッシュの悪口もちこっと言っているようです。

#このブログの一番人気のページがヴォネガットについて書いた記事で、最近特にヒットが多いのでどっかで紹介されたのかなぁと思っています。

スローターハウス5

2006年02月08日 | 
*スローターハウス5

ビリー・ピルグリムはけいれん性タイムトラベラー。彼は彼の人生の中を時間旅行する。彼の中では過去はいつでも存在し、未来もまた同じである。だけど、彼自身に時間旅行をコントロールすることは出来ない。いつどんな所に行くかもわからない。でも、彼は自分がどうやって死ぬか、どういう人生を送るか既に知っている。かつて行ったことがある時間ならば…
21歳にして第2次世界大戦に牧師付きのオルガン奏者として従軍した米軍兵士の彼は彼の先祖の国ドイツでドイツ軍の捕虜になる。兵士ではない彼は味方のお荷物だった。一緒にいた味方の兵士のうちの2人はドイツの民兵に射殺される。生き残ったのは彼と太ったまだ子供の兵隊。デブは捕虜となった後、移送中に狂い死ぬ。
蟻の群れのごとき捕虜の一員となった彼はやせ衰え、カカシのような老人に見える。寒さでカチカチになった戦死者の軍服を身に纏い、演劇で使われた銀色の靴を履き、寒さでカーテンをコート代わりにしている彼は、道化モノの聖者みたいなに見える。でも決してふざけているわけではない。そうするしかないのだ。
飢えと寒さと戦争で生きる活力を全て奪い取られた彼。
シロップ工場でつまみ食いをして、その美味しさに感動する彼。
言われるがままに捕虜の生活をするしかない彼。
有刺鉄線に絡まって操り人形みたいに踊る彼。でも、針は彼の肉を切り裂いている。
彼の周囲は死にあふれている。

…彼は彼の人生の色々な場面に飛び立つ。さして好きでもない妻を娶る。でも彼は知っている。
「そう悪くは無い生活さ」
検眼医として裕福な人生を歩む。二人の子供をもうけ、一人は普通の女性、もう一人は放蕩息子だが更生しベトナム戦争に行く。

…彼は宇宙人に拉致され、動物園に入れられ、肉感的な女優と檻の中で生活し子供を儲けたりもする。彼の送る人生を唯一共感できる相手は、この宇宙人どもだけ…彼はいつでも孤独だ。

戦争から開放された後も、彼は活力を失い続け人生を送る。
でも皆に伝えなければならないことがある。たとえ変人と思われても…
時間旅行者として過し続ける人生を…
何の為に?何を?
戦争の無意味さ?
人生の無意味さ?彼の稀有な人生?
でも、そうしなければならない。そうしたから。そうしたいから…

Lonesome no more.

…おとなになる時に感じる人生の無常観。
就職して結婚して、いつの間にか冷たくなっているであろう人生。
だれもがそんなことを考えるだろう。

…捕虜となった彼は無気力なままに捕虜としての生活を送る。非武装地帯とされたドレスデンの食肉処理場で味方のアメリカ軍による大空襲に遭遇する。
廃墟になったドレスデン。炎の地獄。人の死を見飽きて、自分の人生の末路を知っている彼は常に感情を表に出せない。

その彼が、戦争中に唯一我を忘れて涙を流したこと…
彼らを廃墟となったドレスデンに送り届けた2頭の馬。
馬はひどい怪我をしていて、それなのに怪我に気付かなかった。それをインテリの産婦人科医に非難される。
ひどいことをしてしまった…彼は大声で泣いた。
彼が涙を流して人間的になれるのはそんなことだけだった…そうゆうものだ。

彼は自分は時間旅行者であることを告げるが、世間は彼を変人扱いする。
彼は時間旅行に関する公演中にレーザー光線で撃たれ、だれかに殺される。でも、彼は生きている。彼は自分の人生を永遠に行き来する。

…廃墟となったドレスデンで死体整理の仕事をしつつ終戦を迎える。彼は小鳥の声を聞く。

キラキラした人生を送れるのは一握りの人達に思える。だれかの欲望の為に利用されて、振り回されてしまう人生。そんなことを既に知っているけれど、でもどうにもならない。そんな青年の第2次世界大戦を中心にした、たわけ話にして本当にあったお話。


買った本

2005年10月12日 | 
・真夜中の水戸黄門
ヤジキタの続編もサプライズはイマイチ…ヤジキタが凄すぎたか。

・バガボンド 21
やっと武蔵登場。いよいよ吉岡一門との対決へ。
武蔵野話なら、これか内田吐夢。

しかし、アマゾンの梱包は大げさだなあ。

タイタンの妖女

2005年09月19日 | 
ヴォネガットJrのタイタンの妖女を久々に読み返しました。(高校以来ですね。)
昔の記憶では、「ボクハココニイルヨ」~「キミガソコニイテヨカッタ」しか喋らない異星人が非常にに印象に残っていたんですが、読み返してみるとアメリカ社会とかキリスト教文化圏の思想が非常に読み取れました。ロサンゼルス?出身の山師の主人公の描き方とか、カタキ役?のとある家系の米国の支配者層の人とか、やっぱりそうなのかな~と思ってしまいます。キリストの神の意思をちゃかしているところもあって、だいじょぶなのかな~とかも思ってたりします。

私のしょうもない文章だけでは申し訳ないので、以下はVonnegut情報です。

・公式ホームページ
http://www.vonnegut.com/

・ビーケーワン書籍リスト
http://www.bk1.co.jp/author.asp?authorid=120000308070000

上記リストのRSS

・Wikipedia カート・ヴォネガット
-日本語版
-英語版

・In These Times のコラム(2003~2005)
http://www.inthesetimes.com/site/about/author/86/

暗いニュースリンクさん翻訳
- The end is near
- I Love You, Madame Librarian

・Salon books 1999年のインタビュー
http://www.salon.com/books/int/1999/10/08/vonnegut_interview/

・Harvey Wassermanさんの記事 Kurt Vonnegut's "Stardust Memory"March 4, 2006
The Free Press -- Independent News Media - Harvey Wasserman

暗いニュースリンクさん翻訳
ヴォネガットがオハイオ州立大学で講演:「ブッシュは梅毒大統領」

・インタビュー2本! 公式ホームページのNewsより。
BBC4ラジオ"Front Row"
NPR:Kurt Vonnegut Judges Modern Society
お声をはじめて聞きました。

動画もあるかも…
さすがゲルマン民族で長身ですよ…

文化人類学者になりそこねた作家、ヴォガネットに聞く イルコモンズのふた。さんよりリンクさせて頂いています。