かぶとん 江戸・東京の歴史散歩&池上本門寺

池上本門寺をベースに江戸の歴史・文化の学びと都内散策をしています。

『韃靼の馬』 読み返し・覚え書

2011-03-11 | 韃靼の馬
日経新聞の連載小説『韃靼の馬』もしばらく前に終了し、思い返す人もすくなくなったであろう今日このごろ。我がかぶとんはそうでもない。くり返し思い出す。辻原登(さん)ってすごいなあ。頭のどこから構想が湧いてきたのか(くるのか)、凡人には想像もつかない、と。
もう一度、じっくりと読み返すことにした。当記事は、そのさいの覚え書・メモです。
とりあえず119回「事件」の完了まで。利根の回想と、それに続く密命(徳川将軍の称号変更)をおびた克人の活躍を描写した朝鮮編「事件」。李順之(イスンジ)との出会い、柳成一(リュソンイル)との闘い、リョンハンとの出会い、どれもが強烈な印象だった。
その後のことは、またそのうちに、ということで。


1. 目次
2. 登場人物

1. 目次
 1.プロローグ 利根 (17回)
   利根の回想
 2.事件 (102回)
   釜山・倭館にて
   柳川事件の顛末
   陶工・李順之(イスンジ)と娘・恵淑(ヘスク)
   銀の道
   監察御史・柳成一の登場(54. 事件 37) 前半のやま場。馬上での対決。
   仮面劇(タルチュム)一座
   リョンハンの登場(59. 事件 42) やま場(二の太刀)。
   丹陽(タニャン)の客館
   倭館への帰館
   江戸家老平田真賢
   正使一行の釜山到着と出航
   朝鮮通信使一行の対馬・府中到着
   利根、小百合との再会
 3.東上 (77回)
   通信使船団、対馬・府中を出航
   福山 鞆ノ浦
   仙酔島での宴 満漢全席
   船上でのリョンハンと克人(クギン)
   製述官李賢の日記
   大坂 北御堂
   洪舜明・克人・唐金屋
   堂島米会所-帳合米取引
   リョンハン、濡れ衣を着せられる
   柳成一(リュソンイル)の出自
   製述官李賢の日記
   彦根にて 雨森の困惑
   新井白石 通信使一行を出迎える
 4.逐電 (64回)
   江戸 新井白石、通信使との宴
   柳成一と朴秀実
   克人とリョンハンらの歌舞伎見物
   克人と侍講・新井白石 雨森、克人に会えず
   返書奉呈で問題発生
   朝鮮通信使のその後
   大坂 鳩と通信文、盗まれる
   柳成一、阿比留文字を解読か
   柳成一と克人の対面、そして
   唐金屋の秘策
   克人、朴秀実を探すが
   リョンハン、身代わりとなって斬殺さる
   大坂町奉行所
 5.利根Ⅱ (9回)
   対馬藩の関係者への処分
   雨森と椎名、利根を訪ねる
   小百合、別れの挨拶
 6.会寧(フェリョン)) (75回)
   マウル(村)でのキム カンガンスルレ
   哥老会と唐金屋善兵衛、そして金次東(キムチャドン)
   韃靼の馬のこと(初出)
   哥老会のこと
   会寧行きの決意
   キムと恵淑(ヘスク)
   会寧遠征隊
   浦項(ポハン) 哥老会の清和号
   密航者・徐青(ソチョン)
   朴(パク)の再登場、そして徐青
   清津(チョンジン)上陸
   会寧のまち 開市
   韃靼人 チャハル・ハーン登場
   イスンジ、ガルダン・ハーンを語る
 7.マンハ旗 (58回)
   マンハ旗へ キム一行、後を追う
   マウルの恵淑と良枝
   唐金屋と兵藤十作、そして雨森
   白虎
   猿河の浮橋と綱橋
   リョンハンの幻影
   会寧の馬市 朴秀実
   ハーンの娘、匪賊に誘拐さる
   匪賊の砦、急襲
   アヌ・ハトン
   マンハ旗にて
   牧場
   天馬(汗血馬)、姿を現す
 8.原郷 (28回)
   朴秀美の最期
   会寧へ、そして清津へ
   清和号の出航
   憂陵島(ウルルンド)
   敦賀
   桟原城の書院にて
 9.エピローグ 利根 (4回)
   利根の回想。ふた月ほど前から当日まで。そして別れの時が・・・

2. 登場人物
阿比留克人(あびる・かつんど)(クギン) 主人公。倭館勤務の対馬藩士(倭館裁判役)。朝鮮通信使の警護隊長補佐(警護副使)・通詞。
阿比留利根 克人の妹。この物語の狂言回し。可愛くて、素直で、しっかり者。兄想い。小百合を姉のように慕う。椎名とは相思相愛だが・・・
阿比留泰人(あびる・やすんど) 対馬藩の儒官。克人、利根の父親。木下順庵の弟子、白石の六つ歳下、雨森より五つ上(という設定)。
平田直右衛門真賢(さねかた) 対馬藩江戸家老。
新井白石 君美(きみよし・きんみ)。幕府・側用人。将軍家宣の侍講(実質は執政)。木下順庵の弟子。
木下順庵 恭靖木先生。木門(ぼくもん)。
雨森芳洲 対馬藩儒官。朝鮮方佐役。木下順庵の弟子。克人の親代わりのような立場。
慶雲寺寄宿の僧 少年時代の克人の剣術の師。薩南示現流。
宗義真(そう・よしざね) 第二十一代藩主。宗家中興の祖。天龍院。
篠原小百合 阿須の町医の子女。克人の婚約者。
阿比留峰 阿比留泰人の後室。利根の実母。鰐浦の網元・大浦家の出。
椎名久雄 馬廻り組。江戸家老・平田直右衛門の甥。克人の親友。
宗義方(そう・よしみち) 第二十二代藩主。
平田所左衛門 釜山・倭館の館主。
李順之(イスンジ) 倭館・茶碗窯の陶工。(実は五衛府の暗行御史)
恵淑(ヘスク) 李順之のひとり娘。
金良枝(キムヤンジ) 李順之の亡き妻。恵淑の生母。
洪舜明 朝鮮通信使の従事官。倭館を統括する東萊府(トンネ)代表。
尹時元(インシウォン) 
安洪哲(アンホンチョル) 吏曹判書(内務省長官)
姜九英(カングヨン) 備辺司局次長。
柳成一(リュソンイル) 備辺司局の監察御史。朝鮮通信使の軍官総司令。
リョンハン 仮面劇(タルチュム)一座の踊り子。広大(クァンデ)。克人の命の恩人。龍漢・・・
テウン  楊州(ヤンジュ)仮面劇一座の広大(役者)。リョンハンの相方。
老婆(ハルモニ) 一座の雑用係
趙泰億 朝鮮通信使の正使。
任守幹 朝鮮通信使の副使。
崔白淳 洪舜明付きの医師。雲南白葯を調合。
王(ワン) 王勇。洪舜明付きの漢人の調理人(厨師)。
李邦彦
李賢 朝鮮通信使の製述官。科挙首席だが庶子の出。
朴秀実 パクスシル。押物官(通信使輸送担当通訳)。狡賢い小心の小悪党。眇。
金(キム) 丹陽(タニャン)の郡守。
平田直右衛門真賢(まさかた) 対馬藩江戸家老。
土屋政直 幕府老中(朝鮮御用)。
杉村菜女(うねめ) 対馬藩国家老・朝鮮方。迎聘参判使(げいへいさんはんし)。
金子真澄 対馬藩馬廻組筆頭。椎名の上司。朝鮮通信使警護隊長。
釜山の骨董店・店主
唐金屋(からがねや) 対馬の御用商人。大坂店在住。

金始南 通信使の訳官(上々官)。
丁 通信使の副使軍官。副使・任守幹の縁故(甥)。
白 通信使の訳官。
松浦霞沼 木門十哲の一人。
土岐伊予守 大坂城代。
兵藤十作 小柄な老人。堂島米方行司筆頭、会所守。
鴻池の嬢はん
光恵(こうえ) 彦根竜潭寺の僧。
北尾春倫(はるとも) 彦根藩藩医北尾春圃の子。医学生。
森川百仲(ももなか) 彦根藩の老武士。森川許六。蕉門十哲の一人。

室鳩巣 木門の儒者。
三谷一馬 南町奉行所の同心。
塩井修次 中町奉行所の与力。
申 通信使の軍官通訳。
金斗文 通信使の上判事(はんす)。
張一清(チャンイルチョン) 通信使の軍官。のち軍官司令代行。
橘幸次郎 老中目付。
桑山甲斐守一慶(かずのぶ) 大坂東町奉行。
北条安房守氏英(うじひで) 大坂西町奉行。
平賀次孝 大坂町奉行所与力支配。

キム 金次東(キムチャドン)。克人。
良枝(ヤンジ) キムの娘。
恵淑(ヘスク) キムの妻。良枝の母親。
イ・スンジ 李順之。ヘスクの父。マウルの村長。
哥老会の長老
尹時元(ユンシウォン) 漢城(ソウル)の美術商。
辛仁天(シンインテン) 慶尚北道哥老会の幹部。
唐金屋(からがねや) 唐金屋善兵衛。
テウン 高泰雲(コテウン)。イスンジの窯の手伝い。
王勇 「王(ワン)の宿」の主人。
崔白淳 医師。マウルに移住。
姜(カン) 姜珍生。元馬上才。マウルに移住。
安洪哲(アンホンチェル) 左議政(副首相)。
朱万年 李窯の若手陶工。元牧童。
車志良(チャ) 哥老会通詞部。会寧遠征隊の満語・蒙古語通訳。
呉光吉 清和号の船長。中国の哥老会船舶部から派遣された漢人。
具宗文 清和号の操舵長。
黄明秀 清和号の甲板長。
徐青(ソチョン)
朴秀実(パクスシル) 全羅道全州市の牧場主。徐青の雇い主。
成尚永(ソンサンヨン) 哥老会・咸鏡北道支部長。会寧への道案内人。
林南秀(イムナムス) 会寧の哥老会・弥勒舎の学監(責任者)。
チャハル・ハーン マンハ旗。韃靼人一行の頭目。
オーリ チャハル・ハーンの息子。モンゴル語で梟。
ダヤン マンハ旗。韃靼人一行の副頭目格。

オヤーチ 調教役。
ウルス マンハ旗の副頭目。留守部隊。ハーンの妻の弟。
羅津に駐留する親騎隊
野人女真の頭目
ランダル ハーンの娘。
リディール ハーンの娘。
周 漢人匪賊の斥候。
エセン マンハ旗の一員。
ジョチ マンハ旗の一員。
羅立生(らりっせい) 匪賊の頭目。
アヌ・ハトン ダヤンの元婚約者。ガルダン・ハーンの妃と同名。
ブガ マンハ旗のシャーマン。
ジャダン ハーンの妻。
チュクル/エンケ 少年の牧童(双子)。
ハラフラ 牧場ののっぽの老人(牧童)。
クトカ 牧場のちびの老人(牧童)。

クロートカヤ 誘拐されたロシア人の娘。
遊牧の韃靼人一家
ごま塩の大きな顎髯の男 親騎隊の一員。
鄭仁亮(チョンイルリャン) 親騎隊の一員。
呉元根(オウォングン) 親騎隊の一員。
丁明博(チョンミョンバク) 親騎隊(国境警備)の隊長。
ボルコンスキー 誘拐された3人のロシア娘の一人。
宗義誠(そう・よしのぶ) 対馬藩主。
ウルルンドの老人 徐青の師。
稲葉正房 幕府目付。
諏訪文九郎 幕府御馬預り。
利根の夫 対馬二十六浦・網元講の副長(ふくおさ)。
柳川調行(しげゆき) 徐青の後の名。
  

1. プロローグ 利根  1~17
    享保11年(1726)、利根は、兄・克人のことを回想する。
    15年前の正徳元年(1711)、朝鮮通信使の来日の頃を思い出している。
2. 事件  1~102
    朝鮮・倭館時代の阿比留克人。
3. 東上  1~77
    正徳元年の朝鮮通信使の江戸参府。克人、対馬藩警護副使・通詞として随行する。
4. 逐電  1~64
    朝鮮通信使、江戸参府の帰路。大坂で、柳成一(リュソンイル)と対決する。
5. 利根Ⅱ  1~9
    享保4年(1719)、利根 22歳。正徳元年の暮れからの事を回想。
6. 会寧(フェリョン))  1~(75)
    15年後。舞台は朝鮮。陶工キム・チャドンとして、マウルに生きる克人。
    対馬藩の窮状を聞き、韃靼の馬を求めての、会寧行きを決意する。
7. マンハ旗  1~58
    韃靼人チャハル・ハーン一行を追ってマンハ旗へ。
    匪賊との戦いでハーンの信をえたキム、ついに天馬にめぐり会う。
8. 原郷  1~28
9. エピローグ 利根  1~4
    享保12年(1727)、利根30歳。兄、克人との再会、そして別れ。



朝鮮通信使
天和2年(1682) 第5代将軍徳川綱吉就任祝賀の目的で来日。
 通信使の江戸滞在中、克人の父・泰人(二十歳頃か)は通詞をつとめた。(物語上ですよ)
正徳元年(1711) 第6代将軍徳川家宣の就任祝賀で来日。 (この小説の前半部。)
享保4年(1719) 第8代将軍徳川吉宗の就任祝賀で来日。

後日談として
享保13年(1728)4月 将軍吉宗、日光社参。
 三代六十五年間途絶えていた日光社参の復活。供奉者十三万三千人を従えての示威行進も、"韃靼の天馬" いればこそ。吉宗の威光は、弥がうえにも増しに増した。


余談
〇年代・年齢は、事実と小説の内容からの推定とが混在しています。念のため。
〇朝鮮通信使の項は江戸検の学習そのもの。設問の仕方で難易度が変わってくる。
〇ふり仮名付きの漢字がやたらに(くどいが繰りかえして言う、「やたらに」)出てくるが、漢検の学習には、うってつけ。(?)
かぶとんのメモ
〇リョンハンは、男だったのか、それとも女なのか。文中の一節、別の場面だが「そこは変幻自在、融通無碍の歌舞伎狂言さ」。これでよしとするか。