★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ランパルのバッハ:フルート・ソナタ全集

2023-05-11 09:38:24 | 室内楽曲



~バッハ:フルート・ソナタ全集~

バッハ:フルートとチェンバロのためのソナタ 

      ロ短調BWV1030
      変ホ長調BWM1031
      イ長調BWV1032
      ト短調BWV1020

    フルートと通奏低音のためのソナタ 

      ホ短調BWV1034
      ハ長調BWV1033
      ホ長調BWV1035

    無伴奏フルート・ソナタ 

      イ短調BWV1013

フルート:ジャン=ピエール・ランパル

チェンバロ:ロベール・ヴェイロン=ラクロワ

LP:RVC REL‐1014~15

 このLPレコードは、フランスのフルートの名手ジャン=ピエール・ランパル(1922年―2000年)と同じくフランスのチェンバロの名手ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(1922年―1991年)の2人によるバッハのフルートソナタ全集である。もうこれだけ聴くと、レコードを掛ける前から匂い立つような音がスピーカーから流れ出すようでもある。ただ、バッハ:フルート・ソナタ全集は、バロック時代の作品であるので、時代背景も多少頭に入れて聴いた方がより効果的であろう。このLPレコードのライナーノートの著者の浅里公三氏によると「バッハのフルートソナタは、①2つのフルートと通奏低音のためのソナタ(トリオソナタ)②一つのフルートとオブリガート・チェンバロのためのソナタ③一つのフルートと通奏低音のためのソナタ(ソロソナタ)④一つのフルートだけのソナタ(無伴奏ソナタ)」の4つのタイプに分けることができるという。さらにここに収められた8曲のうち4曲についてバッハが作曲したという証拠が見当たらないともいう。現在の研究結果は果たしてどうなのであろうか。しかし、浅里氏が書いているように「たとえバッハの作でないとしても、これらの曲は少しもその魅力を失うものではない」のである。ジャン=ピエール・ランパルは、フランス、マルセイユに生まれ、1943年にパリ音楽院に入学し、わずか5ヶ月でプルミエ・プリを得て卒業。1946年からはヴィシー歌劇場管弦楽団のメンバーとなり、1947年「ジュネーブ国際コンクール」で優勝しソロで活動を開始。1956年からパリ・オペラ座管弦楽団の首席奏者となる。1962年に退団後はフランス最高のフルート奏者として世界各地で演奏活動を行う。20世紀の最も偉大なフルート奏者と評価される。ランパルのフルートの調べは、シルクの布を連想するような、類稀なしなやかさと光沢に光り輝いている。緩やかなメロディーが時を越えてリスナーに直接話しかけてくるような錯覚にすら陥る。ヴェイロン=ラクロワのチェンバロは、そんなランパルのフルートに寄り添うように典雅な響きを聴かせてくれており、二人の息はピタリと合い、そのことがこのLPレコードの価値を何倍にも高めている。ランパルは、当時、チェロのカザルス、ギターのセゴビアと比肩されるべき存在として高く評価されていたが、日本でもランパルの評価は圧倒的で、ランパルもそんな日本の聴衆を高く評価し、度々来日し、その美しいフルートの音色を披露した。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団のシューマン:交響曲第1番「春」/第2番

2023-05-08 09:38:44 | 交響曲(シューマン)


シューマン:交響曲第1番「春」/第2番

指揮:フランツ・コンヴィチュニー

管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(フォンタナ・レコード)FG‐291

 このシューマンの交響曲第1番「春」/第2番で演奏しているのが、フランツ・コンヴィチュニー指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の往年の名コンビである。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の設立は、1737年で世界最古のオーケストラとして伝統を誇っている。1835年にメンデルスゾーンが指揮者という名称で初めて率い、一大飛躍期を迎えることになる。そして1895年にアルトゥール・ニキシュが指揮者に就任し、ヨーロッパ屈指のオーケストラとして黄金時代を迎える。その後、フルトヴェングラー、ワルター、アーベントロートと引き継がれ、1949年に指揮者に就任したのがフランツ・コンヴィチュニーである。フランツ・コンヴィチュニーの指揮ぶりは、無骨にまで伝統的なスタイルに拘るものであり、現在ではこのようなスタイルをとる指揮者はいない。それだけにベートーヴェンやブルックナー、さらにシューマンの交響曲を指揮させたら、その曲の本質を前面に出した名演を聴かせてくれる。このLPレコードでもその特徴は遺憾なく発揮されており、実に堂々として、一つの曖昧な表現がないと同時に、ロマンの香りが馥郁と香り出すようでもある。そして一時、リスナーは、古きよき時代にタイムスリップしたような雰囲気に包まれることになる。シューマンの交響曲は、4曲中3曲までライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が初演した深い繋がりを持つ。フランツ・コンヴィチュニー(1901年―1962年)は、オーストリア=ハンガリー帝国支配下のモラヴィア北部のフルネク出身で、冷戦開始後は東ドイツを中心に東側諸国で活動した指揮者。チェコスロバキア共和国時代にブルノの楽友協会音楽院でヴァイオリンのレッスンを受けた後、ライプツィヒ音楽院で学んだ。その後、フルトヴェングラー時代のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でヴィオラ奏者として活動を開始したが、自ら指揮者になることを決意し、1927年にシュトゥットガルト歌劇場の練習指揮者からスタートし、3年後には首席指揮者となる。第二次世界大戦後は、1949年から亡くなるまで、ゲヴァントハウス管弦楽団の首席指揮者を務めた。また、1953年から1955年までシュターツカペレ・ドレスデンの首席指揮者も兼務し、1955年以降はベルリン国立歌劇場の首席指揮者も務めた。なお、このLPレコードジャケットの写真は、ボンにあるシューマンの墓である。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇イヴリン・クロシェのフォーレ:舟歌全曲(第1曲~第13曲)

2023-05-04 09:38:44 | 器楽曲(ピアノ)

 

フォーレ:舟歌全曲(第1曲~第13曲)

ピアノ:イヴリン・クロシェ

LP:ワーナー・パイオニア(VOX) Hー4513V

 フランス出身のピアニストのイヴリン・クロシェ(1934年生まれ)は、VOXに4枚のLPレコードからなるフォーレ:ピアノ曲全集を完成させているが、このLPレコードはその第1集に当るもので、全13曲の舟歌を収めてある。因みに他の3枚のLPレコードはというと、<第2集>夜想曲(全13曲)/小品集<第3集>ヴァルス・カプリス(全4曲)/アンプロンプチュ/マズルカ<第4集>前奏曲集/主題と変奏/無言歌集となっている。イヴリン・クロシェのピアノ演奏は、如何にもフランスのピアニストらしく、繊細でニュアンスに富んだ表現力に優れており、フォーレ:ピアノ曲全集を一人で録音するには最適なピアニストの一人であると言っても決して過言ではない。イヴリン・クロシェは、ルドルフ・ゼルキンに見い出され、米国でマールボロ音楽フェスティバルに出演するなど、世界的に知られたピアニストで、日本での評価も高く、特にフォーレなどフランスの作曲家の演奏では定評がある。舟歌は、6/8あるいは12/8拍子のリズムによる、ゆったりとした旋律を奏でる曲をいう。舟歌は、元来、ヴェネツィアのゴンドラ漕ぎが櫂を動かして舟を進めるときに歌う歌を指していた。これらは、既に18世紀には広く知られるようになっていた。19世紀の歌曲やオペラには、しばしば舟歌が登場する。例えば、シューベルトの歌曲「水の上にて歌える」、オッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」、ショパンの「舟歌」などがそれである。メンデルスゾーンやショパンなども舟歌を作曲しているが、生涯にわたり13曲もの舟歌を作曲したのはフォーレ以外にはいない。それだけに13曲のすべてがフォーレのつぶやきのようでもあり、イタリアへの憧れのピアノの歌のようでもある。フォーレは、ピアノ独奏による舟歌を生涯わたって書き続けた。それらは、第1期(初期)の舟歌=4曲(第1番~第4番)、第2期(中期)の舟歌=3曲(第5番~第7番)、第3期(後期)の舟歌=6曲(第8番~第13番)と3つのグループに分けることができる。ところが、これらのピアノによる舟歌の前に、フォーレは作品7の歌曲による舟歌を書いている。また、その後の声楽曲の伴奏にも舟歌の様式を取り入れている。そんなフォーレの舟歌をイヴリン・クロシェは、一曲一曲を繊細に噛み締めるように丁寧に歌うように弾いており、その響きがリスナーに優しく語り掛けてくる。それらを聴くと、一時夢の世界へと迷い込んだ気分にさせられる。(LPC)

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◇クラシック音楽LP◇アルテュール・グリュミオーのヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番

2023-05-01 09:38:59 | 協奏曲(ヴァイオリン)


ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番

ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー

指揮:マニュエル・ロザンタール

管弦楽:コンセール・ラムルー管弦楽団

録音:1966年3月、パリ/1963年、パリ

発売:1975年

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) PC-1561

 このLPレコードは、フランコ=ベルギー楽派の創始者の一人であるヴュータン(1820年―1881年)のヴァイオリン協奏曲2曲を、フランコ=ベルギー楽派を代表する名ヴァイオリニストであったアルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)が演奏した貴重な録音である。ヴュータンは、ベルギー出身のヴァイオリニスト兼作曲家。若い頃は、モーツァルトの再来と言われていたほどの神童ぶりを発揮。晩年はブリュッセル音楽院で後進の指導に当たり、イザイ、フーバイなどのヴァイオリニストの逸材を数多く輩出した。ヴュータンのヴァイオリンの演奏スタイルは、洗練された音色と華麗だが常に優雅なフィーリングを忘れず、しなやかなボーイングと節度を保ったヴィブラートをきめ細かく駆使するフランコ=ベルギー楽派の演奏スタイルそのものだったという。現在、ヴュータンのヴァイオリン協奏曲は、そうしょっちゅう演奏される曲ではないので、この録音の存在価値は一段と高い。このLPレコードで、改めてヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番を聴いてみると、2曲とも内容が充実したヴァイオリン協奏曲であること、そして何回も繰り返し聴くうちに、徐々に曲の真価が理解でき、古今のヴァイオリン協奏曲の名曲なのだという実感が自然に湧き起こってくる。この2曲のヴァイオリン協奏曲は、現在の演奏会でもっと演奏されてもいい曲だと思う。感覚的にも決して古めかしくなく、優雅な味わいは特に素晴らしい。ヴュータンは生涯で7曲のヴァイオリン協奏曲を書いた。第4番は、4つの楽章からなっている。全体は実に堂々とした印象の曲で、4つの楽章からなっていることもあり、あたかもヴァイオリン独奏付きの交響曲風な趣を持っている。一方、第5番は、全体が単一楽章で構成されており、劇的で実に起伏に富んだ、充満した内容となっている。この2曲のヴァイオリン協奏曲をアルテュール・グリュミオーは、実に見事に曲の特徴を捉え、鮮やかで華麗な技巧で表現する。この2曲は、特にヴァイオリニストが持つ資質の高さによって、その真価がはじめて蘇る性格の曲だけに、アルテュール・グリュミオーの起用は当を得たもの。ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の伴奏も、伴奏の域を出たような熱演を聴かせる。マニュエル・ロザンタール(1904年―2003年)は、フランス国立管弦楽団首席指揮者・音楽監督(1934年―1946年)を務めたフランスの指揮者。(LPC)

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