ヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番
ヴァイオリン:アルテュール・グリュミオー
指揮:マニュエル・ロザンタール
管弦楽:コンセール・ラムルー管弦楽団
録音:1966年3月、パリ/1963年、パリ
発売:1975年
LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) PC-1561
このLPレコードは、フランコ=ベルギー楽派の創始者の一人であるヴュータン(1820年―1881年)のヴァイオリン協奏曲2曲を、フランコ=ベルギー楽派を代表する名ヴァイオリニストであったアルテュール・グリュミオー(1921年―1986年)が演奏した貴重な録音である。ヴュータンは、ベルギー出身のヴァイオリニスト兼作曲家。若い頃は、モーツァルトの再来と言われていたほどの神童ぶりを発揮。晩年はブリュッセル音楽院で後進の指導に当たり、イザイ、フーバイなどのヴァイオリニストの逸材を数多く輩出した。ヴュータンのヴァイオリンの演奏スタイルは、洗練された音色と華麗だが常に優雅なフィーリングを忘れず、しなやかなボーイングと節度を保ったヴィブラートをきめ細かく駆使するフランコ=ベルギー楽派の演奏スタイルそのものだったという。現在、ヴュータンのヴァイオリン協奏曲は、そうしょっちゅう演奏される曲ではないので、この録音の存在価値は一段と高い。このLPレコードで、改めてヴュータン:ヴァイオリン協奏曲第4番/第5番を聴いてみると、2曲とも内容が充実したヴァイオリン協奏曲であること、そして何回も繰り返し聴くうちに、徐々に曲の真価が理解でき、古今のヴァイオリン協奏曲の名曲なのだという実感が自然に湧き起こってくる。この2曲のヴァイオリン協奏曲は、現在の演奏会でもっと演奏されてもいい曲だと思う。感覚的にも決して古めかしくなく、優雅な味わいは特に素晴らしい。ヴュータンは生涯で7曲のヴァイオリン協奏曲を書いた。第4番は、4つの楽章からなっている。全体は実に堂々とした印象の曲で、4つの楽章からなっていることもあり、あたかもヴァイオリン独奏付きの交響曲風な趣を持っている。一方、第5番は、全体が単一楽章で構成されており、劇的で実に起伏に富んだ、充満した内容となっている。この2曲のヴァイオリン協奏曲をアルテュール・グリュミオーは、実に見事に曲の特徴を捉え、鮮やかで華麗な技巧で表現する。この2曲は、特にヴァイオリニストが持つ資質の高さによって、その真価がはじめて蘇る性格の曲だけに、アルテュール・グリュミオーの起用は当を得たもの。ロザンタール指揮コンセール・ラムルー管弦楽団の伴奏も、伴奏の域を出たような熱演を聴かせる。マニュエル・ロザンタール(1904年―2003年)は、フランス国立管弦楽団首席指揮者・音楽監督(1934年―1946年)を務めたフランスの指揮者。(LPC)