モーツァルト:ピアノ協奏曲第22番K.482
ピアノと管弦楽のためのロンドK.382
指揮&ピアノ:ダニエル・バレンボイム
管弦楽:イギリス室内管弦楽団
録音:1971年11月25日~26日、英国、アビイ・ロードスタジオ
発売:1973年
LP:東芝EMI EAA‐80099
アルゼンチン出身(現在の国籍はイスラエル)のダニエル・バレンボイム(1942年生まれ)は、最近は指揮者としての活躍が目立つが、もともとはピアニスト。1952年にピアニストとしてヨーロッパデビューを果たした以後、世界各国でピアニストとしての名声を高めることになる。そして、1966年からイギリス室内管弦楽団とモーツァルトの交響曲録音を開始して、指揮者デビューを果した。そして、1975年から1989年までパリ管弦楽団音楽監督に就任したのに続き、シカゴ交響楽団音楽監督、ベルリン国立歌劇場音楽総監督、ミラノ・スカラ座音楽監督に就任し、今度は世界的指揮者としての名声を不動にして行くのである。2009年に続き2014年のウィーンのニューイヤーコンサートにも登場し、テレビを通じて全世界に指揮者としての晴れの姿をアピールしたことはまだ記憶に新しい。イギリス室内管弦楽団とは、1966年からコンビを組んでいるので、このLPレコードは、コンビを組んで5年目であり、互いの気心が充分浸透している時期の録音だけに、演奏内容は充実している。モーツァルトのピアノ協奏曲第22番K.482は、第23番とセットで書かれ、1785年に完成ししている。それらは共にオーボエが省かれてクラリネットが使用されるなど、編成的にも新しい試みが見られる。全部で3つの楽章からなる。前2作の第20番、第21番に比べれば知名度は落ちるものの、オペラ序曲のような祝祭的な華やかさと共に穏やかな落ち着きをもつ魅力的な作品となっている。もう一つの曲であるピアノと管弦楽のためのロンドK.382は、モーツアルトが、1782年3月3日に開催された音楽会で、8年も前に作曲されたピアノ協奏曲K.175を取り上げたが、この時終楽章を、このロンドに代えて演奏したところ大変好評を受けたので、以後、このロンドが独立して演奏されるようになった。変奏曲形式でロンドの性質を持つ陽気で愛らしい主題と7つの変奏曲の後、カデンツをはさんで、冒頭主題を素材としコーダで曲が終了する。このLPレコードでは、バレンボイムがピアノを弾きながら指揮をするスタイルをとっているために、ピアノと管弦楽の調和がずば抜けて優れていることが大きな特徴となっている。バレンボイムのピアノ演奏は、輪郭のはっきりとした力強さに満ちていると同時に、モーツァルトらしい流麗さも合わせ持っている点が高く評価されよう。現代に我々にも強くアピールするモーツァルト演奏と言える。(LPC)