★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ギドン・クレーメルのパガニーニ(ヴィルヘルミ編):ヴァイオリン協奏曲第1番/シューマン(クライスラー編):幻想曲/クプコヴィチ:「狂詩曲」より「思い出」

2020-07-23 09:44:04 | 協奏曲(ヴァイオリン)

パガニーニ(ヴィルヘルミ編):ヴァイオリン協奏曲第1番(第1楽章)
シューマン(クライスラー編):幻想曲(ヴァイオリンと管弦楽のための)
クプコヴィチ:「狂詩曲」より「思い出」

ヴァイオリン:ギドン・クレメール

指揮:ハインツ・ワルベルク

管弦楽:ウィーン交響楽団

発売:1979年

LP:キングレコード K15C-9115

 パガニーニ(1782年―1840年)は、イタリアのジェノヴァ生まれで、7歳の時にヴァイオリンを手にしたが、その1年後には協奏曲を演奏し、ソナタも作曲したという。異様な風采と悪魔のようなヴィルトオーゾ的演奏は、行く先々でセンセーションを巻き起こしたようである。そのような演奏家が作曲をしたらどうなるのか。天才的閃きが込められた作品になるのと同時に、どこかおさまりの悪さを残してしまうのが常。1811年に完成したパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番は、そんな作品だった。そこで、この曲の編曲が試みられるが、その中の1曲が、このLPレコードに収録されている、名ヴァイオリニストであったアウグスト・ヴィルヘルミの手により、1883年に完成した編曲作品だ。第2楽章と第3楽章を削除し、第1楽章だけを採用し、ヴァイオリンのパートにはあまり手を付けず、主に管弦楽のパートを重厚に書き換えた。完成したこの編曲は、重厚なヴァイオリン協奏曲へと変身を遂げた。このため、軽快な如何にもパガニーニ的な要素を求めるリスナーにとっては、少々戸惑うことは避けられない。このLPレコードでヴァイオリンの独奏をしているのが、お馴染みのラトビア出身のギドン・クレーメル(1947年生まれ )だ。ギドン・クレーメルは、モスクワ音楽院へ進学し、この間、1967年「エリザベート王妃国際音楽コンクール」3位、1969年「パガニーニ国際コンクール」優勝、さらに1970年モスクワで開かれた「チャイコフスキー国際コンクール」でも優勝という快挙を成し遂げた。1980年にはドイツに移住し、以後はドイツを活動拠点に世界的な演奏活動を展開している。このLPレコードでの演奏は、完璧なテクニックの冴えを存分に発揮しており、パガニーニの華麗な世界をリスナーに思う存分披露する。ただ、この編曲は、オーケストラのパートを重厚に書き直したたため、オーケストラの音が前面に出て、技巧的なヴァイオリンの音を期待する向きには不満も残ろう。B面に収められたシューマン(クライスラー編):幻想曲(ヴァイオリンと管弦楽のための)は、シューマンとヴァイオリンの名手ヨーゼフ・ヨアヒムとの交友関係から1853年に書かれた作品。シューマンのヴァイオリン協奏曲を評価しなかったヨアヒムも、この曲は評価したという。ただ、この頃シューマンは精神的障害を発症しており、この欠点を名ヴァイオリニストのクライスラーが1936年に編曲し、補った。ギドン・クレーメルの演奏は、パガニーニの時と同様、技術的な完璧さを見せ、全体の構成力も申し分なく仕上がっている。(LPC)


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