★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇アイザック・スターンのシベリウス:ヴァイオリン協奏曲/ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

2024-04-15 09:50:23 | 協奏曲(ヴァイオリン)

 

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番

ヴァイオリン:アイザック・スターン

指揮:ユージン・オーマンディ

管弦楽:フィアデルフィア管弦楽団

LP:CBS・ソニーレコード SOCL 48

 シベリウスのヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47は、1903年に作曲されたが、1905年に改訂され、これが現行版となっている。この曲は、難技巧を随所に取り入れており、演奏は容易ではない。一方、ブルッフのヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26は、ブルッフの代表作。この2曲のヴァイオリン協奏曲を弾いているのが名ヴァイオリニストのアイザック・スターン(1920年―2001年)。アイザック・スターンの名を見つけると、私は必ず映画「ミュージック・オブ・ハート」を思い出す。メリル・ストリープ演じる女性の音楽教師が、スラム街の学校に通う子供達に悪戦苦闘しながらヴァイオリンを教え込み、最後には地域の支持を獲得することに成功、お別れの発表会をカーネギー・ホールで行うという実話に基づいたストーリーである。このカーネギー・ホールのシーンでアイザック・スターン自身が登場し、子供達と一緒に演奏をするのである。暖かい人柄が滲み出て、何回見ても飽きない。そのアイザック・スターンがシベリウスとブルッフのヴァイオリン協奏曲を弾いたのがこのLPレコードである。両曲の演奏とも、ヴァイオリンの音色が限りなく豊かなことに驚かされる。決して気負うことなく、大きな広がりの中でヴァイオリンが伸び伸びと動き回り、訴えるように演奏する。演奏内容自体に深みがあり、リスナーはその中に身も心も吸い込まれそうに感じる。包容力のある演奏とでも言ったらよいのであろうか。現在、アイザック・スターンのようにスケールの大きく、同時にロマンの心を持ったヴァイオリニストはいるだろうか。いや、いまい。これはアイザック・スターンだけが成し得た至芸といっても過言でなかろう。ユージン・オーマンディ指揮フィアデルフィア管弦楽団の伴奏もスケールが大きく申し分ない。ヴァイオリンのアイザック・スターンは、ウクライナ出身。その後米国へ移住。1936年モントゥー指揮のサンフランシスコ交響楽団と共演して、デビュー。第二次大戦後、度々日本を訪れ、小澤征爾など日本の演奏家とも親交を持つ。新進演奏家の擁護者としても知られ、イツァーク・パールマン、ピンカス・ズーカーマン、シュロモ・ミンツなどと共演を重ねた。1960年には、カーネギー・ホールが解体の危機に見舞われた際、救済活動に立ち上がった。1996年第1回「宮崎国際音楽祭」では、初代音楽監督に就任。これらの貢献により日本国政府より勲三等旭日中綬章が授与された。(LPC)


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