★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇若き日のイエルク・デムスとウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のブラームス:ピアノ五重奏曲

2020-07-20 09:49:46 | 室内楽曲

ブラームス:ピアノ五重奏曲

ピアノ:イエルク・デムス

弦楽四重奏:ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団
            
        アントン・カンパー(第1ヴァイオリン)
        マリア・ティッツェ(第2ヴァイオリン)
        エーリッヒ・ヴァイス(ヴィオラ)
        フランツ・クヴァルダ(チェロ)

発売:1976年9月

LP:日本コロムビア OW-8049-AW

 このLPレコードに収録されているブラームス:ピアノ五重奏曲は、古今のピアノ五重奏曲の中でも最も優れた作品の一つとして高く評価されている。ブラームスが最初の円熟期を迎えた頃の代表作でもある。その意味では、最もブラームスらしい作品であるとも言える。緻密で強固な構築美に貫かれ、厳格で重々しい感じが濃厚に立ち込め、晦渋な作品であることは否定できない事実であろう。ブラームスの室内楽にはクラリネット五重奏曲や弦楽六重奏曲などのように、比較的親しみ易い作品もあるが、このピアノ五重奏曲は、親しみ易いというより、ブラームスの深遠な精神性を襟を正して聴くような雰囲気を漂わす。どちらかというと3曲ある弦楽四重奏曲に近い感じがする。ブラームスは、最初この曲を弦楽五重奏曲として作曲したが、到底弦だけでは、起伏に富んだ曲想を表現することはできないということで、2台のピアノ用に編曲してしまう。ところが今度は、弦の優美な響きがなくては、作品が生きないということで、最後は現在のピアノ五重奏曲の形に落ち着いたという。如何に慎重なブラームスらしい話ではある。このLPレコードでピアノ演奏しているのは、日本人にもお馴染みのイエルク・デムス(1928年―2019年)だ。ウィーン音楽アカデミーで学び、15歳でウィーン楽団にデビュー。その後は、グルダ、パドゥラ=スコダと並んで“ウィーンの三羽烏”として活発な演奏および録音活動を展開する。しばしば来日公演を行ってきたが、2019年4月16日に90歳没。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団は、1934年、当時ウィーン交響楽団のメンバーだったアントン・カンパー(Vn1)とフランツ・クヴァルダ(Vc)を中心にカンパー=クヴァルダ四重奏団を結成。1937~38年にメンバー全員がウィーン・フィルに移籍し、ウィーン・コンツェルトハウスの中ホールであるモーツァルトザールで演奏会を継続。1957年にチェロがルートヴィヒ・バインルに、1959年に第2ヴァイオリンがヴァルター・ヴェラーに交代。1960年と62年に来日したが、1967年にカンパー引退により解散した。このLPレコードは、設立当初のメンバーによる演奏。このLPレコードでのイエルク・デムスのピアノ演奏は、いつものウィーン情緒は姿を消し去り、その代り気難しそうなブラームスの世界を力強く厳格に演奏している。ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団も、そんなイエルク・デムスの力強さにぴたりと息を合わせるところは、さすが一流のカルテットだなと改めて思わせる演奏内容である。この曲の録音の最右翼盤。(LPC)


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