★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ブッシュ兄弟&ゼルキンのシューベルト:ピアノ三重奏曲第2番/ ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」

2020-07-27 09:50:18 | 室内楽曲

 

シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番「幽霊」

ピアノ:ルドルフ・ゼルキン

ヴァイオリン:アドルフ・ブッシュ

チェロ:ヘルマン・ブッシュ

録音:1948年1月7日(ベートーヴェン)

LP:CBS/SONY SOCU 15

 このLPレコードは、“CBS不滅の1500”ブッシュ選集Vol.4と名づけられた1枚。ブッシュとは、ドイツの名ヴァイオリニストであったアドルフ・ブッシュ(1891年ー 1951年)のこと。ケルン音楽院で学び、1912年、ソリストとしてデビュー果たした。同年ウイーン楽友協会オーケストラのコンサートマスターに就任し、翌年ウイーン楽友協会弦楽四重奏団を結成。1918年には同弦楽四重奏団を改編して、ブッシュ弦楽四重奏団を新たに結成した。その後、名ピアニストのルドルフ・ゼルキンと親交を結ぶ。しかしその後、ルドルフ・ゼルキンはナチスに追われスイスに移住する。ブッシュはその後を追って、1935年、スイスに亡命することになる。その後、イギリスを経て、1933年にアメリカへ移り、定住する。アメリカでは、ゼルキンとのデュオ、弟のチェリストのヘルマン・ブッシュを加えたトリオの演奏会を各地で開いた。このLPレコードは、そのような環境にあった時に録音されたもの。ブッシュの演奏スタイルは、伝統的なドイツ音楽をベースにしたもので、武骨なほど厳格な形式美に基づいている。一方、ロマンの香りも漂わせ、聴いていて古き良き時代を思い起こさせるような演奏内容だ。また、ヴァイオリニストとして以外に、ブッシュは作曲の道も目指し、生涯で交響曲、ヴァイオリン協奏曲、ヴァイオリンソナタなど、約180曲を作曲した。このLPレコードは、ピアノのルドルフ・ゼルキンと、弟であるチェロのヘルマン・ブッシュと共演したものであり、気心の知りあった者同士の理想的なメンバーの録音だ。演奏作品もブッシュが得意とするシューベルトとベートーヴェンなので申し分ない。シューベルト:ピアノ三重奏曲第2番は、華やかな第1番の陰に隠れ、地味な存在ながら、内容の充実したピアノ三重奏曲。一方、ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第5番は、第2楽章が持つ、沈んだ情緒と神秘的な雰囲気から「幽霊」と名付けられているが、全体によく整ったピアノ三重奏作品に仕上がっている。2曲とも録音内容は、今のレベルからすると伸びやかさに欠け、いわば“歴史的名盤”の範疇に入るものかもしれないが、鑑賞に支障はない。2曲の演奏とも三人の息がぴたりと合い、なにしろその語り口が抜群にうまい。それぞれの曲の真髄を、ずばりと言い当てた演奏である。音質を別とすれば、これら2曲のベスト録音だと思う。何しろ、3人とも演奏技術が極めて高い上、表現力が抜群だからだ。この録音も将来、歴史の彼方に忘れ去られるのかと思うと、何とも寂しい限りだ。(LPC)


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