★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ヨセフ・スークのヴィヴァルディ:調和の幻想

2024-08-05 09:37:35 | 古楽

 

ヴィヴァルディ:調和の幻想                       
     
          ヴァイオリン協奏曲ト長調 Op.3の3         
          ヴァイオリン協奏曲イ短調 Op.3の6    
          ヴァイオリン協奏曲ニ長調 Op.3の
          二つのヴァイオリンのための協奏曲イ短調 Op.3の8           ヴァイオリン協奏曲ホ長調 Op.3の12

ヴァイオリン:ヨセフ・スーク

第2ソロ・ヴァイオリン:グナール・ラルサン

指揮:ルドルフ・パウムガルトナー

弦楽合奏:ルツェルン弦楽合奏団

録音:1976年9月16日、19日、スイス、ヴァインフェルト会議堂

発売:1977年9月

LP:日本コロムビア

 バロック時代のイタリアの大作曲家ヴィヴァルディの協奏曲集「調和の幻想」Op.3は、1712年に作曲されたが、この作品でヴィヴァルディの名は一躍有名になった。このLPレコードには、全部で12曲からなる「調和の幻想」の中から5曲が、ヨセフ・スークのヴァイオリン、グナール・ラルサンの第2ソロ・ヴァイオリン、それにルドルフ・パウムガルトナー指揮ルツェルン弦楽合奏団の弦楽合奏によって録音されている。全12曲は、独奏ヴァイオリンと弦と通奏低音のチェンバロによる編成(そのうち3曲はチェロを独奏に加える)によっている。このLPレコードのライナーノートで門馬直美氏は、ヴィヴァルディの「調和の幻想」が果たした音楽史上の功績として、次のような点を挙げている。①これ以後ほぼ2世紀にわたり常識となった急ー緩ー急の協奏曲の3楽章制が不動のものとして確立した②独奏を華やかで熱のこもったものとし、特に独奏を引き立てるようにした③それまでにないロマン的な要素を置き、力の対比、エコー的な効果、新鮮な叙情性などを演奏指示で強調した④明快な主題を扱い、その印象を強固なものとした⑤独奏と合奏の有機的な融合が図られている⑥中間の緩徐楽章には、即興的な雰囲気を置き、しかも悲愴味ある情緒を流すことが多い。このLPレコードで独奏ヴァイオリンを演奏しているのが、チェコの名ヴァイオリン奏者ヨゼフ・スーク(1929年―2011年)である。プラハ音楽院卒業後、プラハ四重奏団の第1ヴァイオリン奏者として音楽活動を開始。その後も、チェロのヨゼフ・フッフロ、ピアノのヤン・パネンカと「スーク・トリオ」を結成。一方、ソリストとしても1959年からツアーを行い、世界的名声を得た。ボヘミア・ヴァイオリン楽派の継承者らしく、きちっと整った構成美の中に、ほのかなロマンの香りを漂わせたその演奏内容は、当時日本にも多くのファンを獲得していた。このLPレコードでのヨゼフ・スークの演奏は、自身が持つ演奏の特徴を最大限に発揮させると同時に、バロック時代の曲である「調和の幻想」を、現代の我々の感覚に合わせて、聴かせてくれている。特に、ルドルフ・パウムガルトナー(1917年―2002年)指揮ルツェルン弦楽合奏団との息がぴたりと合い、この世のものとも思われないような、それはそれは美しい弦の響きに、リスナーは暫しの安らぎの時間を過すことができる。(LPC)

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