★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇クレメンス・クラウス指揮ウィーン・フィルのヨハンシュトラウス2世名曲集

2021-06-21 09:48:10 | 管弦楽曲


ヨハンシュトラウス2世:喜歌劇「こうもり」序曲
            ワルツ「朝の新聞」
            アンネン・ポルカ
            ワルツ「芸術家の生活」
            「エジプト行進曲」
            ポルカ「ハンガリー万歳」
            バレエ音楽「チャールダーシュ」
            ワルツ「美しき青きドナウ」
            ポルカ「町といなか」

指揮:クレメンス・クラウス

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1978年

LP:キングレコード MX 9013

 これは、名指揮者クレメンス・クラウス(1893年―1954年)が、ヨハンシュトラウス2世のワルツやポルカなどを収めたLPレコードである。発売から40年近くが経つが、未だに人気が衰えないという、お化け録音でもある。クレメンス・クラウスはウィーン出身の指揮者。ウィーン音楽院で学び、各地の歌劇場で研鑽を積んだ後、1929年ウィーン国立歌劇場の音楽監督就任。また翌年の1930年フルトヴェングラーの後任としてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任する。しかし、クラウスが取り上げた作品が当時あまりにも革新的であったことなどのため、反発を受け、この結果クラウスはウィーンを去ることになる。そして1935年にはエーリッヒ・クライバーの後任として、ベルリン国立歌劇場の音楽監督に就任する。さらにハンス・クナッパーツブッシュの後任として1937年バイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任。これらに加え、ナチスにより1941年ザルツブルク音楽祭の総監督に任命される。ところがこれらのことが、第二次世界大戦後、ナチスに協力したという容疑で連合軍により演奏活動の停止を命ぜられてしまうのである。その後、非ナチ化裁判において無罪となり、活動を再開。ウィーンを中心にヨーロッパや中南米で活躍した。メキシコへ演奏旅行中、演奏会直後に心臓発作のため急逝した。クラウスの演奏スタイルは、高貴で優雅ではあるが、テンポを速めに取った個性的なもので、当時、ウィーンでの人気は絶大なものであったと伝えられている。リヒアルト・シュトラウスの歌劇などの名録音を残しているが、フルトヴェングラーやベーム、クナッパーツブシュなどに比べて、今では話題に上ることも少なくなってしまった。しかし、唯一例外なのが、ヨハンシュトラウス2世のワルツやポルカなどを収めたこの録音なのである。ヨハンシュトラウス2世の作品は、現在に至るまで無数と言っていいほどの録音が存在しているが、それらの中で、今でも燦然と光り輝いているのがこのクレメンス・クラウス盤なのである。クラウスの中に息づいているウィーン気質が、自然な形で表現されているのがこのレコードの最大の特徴である。「小股の切れ上がったような」という表現があるが、ここでのクラウスの指揮ぶりは、この表現がぴたりと当て嵌まる。テンポを速めに取り、あくまで軽快に、優雅に音楽を進行させていく。一見、一昔前の情緒を引きずっているかに見えて、実は、今の世代でも通用しそうな現代感覚に溢れているところがクレメンス・クラウスの偉大なところと言えそうだ。(LPC)


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