★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇巨匠ハンス・クナッパーツブッシュ75歳誕生記念の「ワーグナー・アルバム」

2024-02-08 09:38:20 | 管弦楽曲


ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から前奏曲と愛の死
      楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」から前奏曲
      「ジークフリート牧歌」
      舞台神聖祭典劇「パルジファル」から前奏曲

指揮:ハンス・クナッパーツブッシュ

管弦楽:ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

発売:1976年7月

LP:日本コロムビア OW‐8034‐AW

 このLPレコードは、ワーグナーの生誕150年と、「クナ」の愛称で親しまれた指揮者のクナッパーツブッシュ(1888年―1965年)の75歳の誕生日を記念して、1962年11月に録音された「ワーグナー・アルバム」からの1枚。クナッパーツブッシュは、ドイツ・ラインラント地方の都市エルバーフェルトの生まれで、ボン大学およびケルン音楽大学で学ぶ。1922年(34歳)、ブルーノ・ワルターの後任としてミュンヘンのバイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任。1936年からは、ウィーン国立歌劇場においてワーグナーの楽劇などの指揮を行う。第2次世界大戦後の1947年、バンベルク交響楽団を指揮し、本格的指揮活動を再開。1951年からはバイロイト音楽祭に出演。その後は、ドイツ国内はもとより、世界各地において演奏活動を展開した。ドイツ古典派、ロマン派の曲の演奏を得意とし、特にワーグナーの指揮にかけては当時、世界最高の指揮者として評価されていた。一見、朴訥かに見えるその指揮ぶりであるが、曲の内面に隠された本質を掴み、それを少しの虚飾もなしに表現することにより、聴衆からは圧倒的な支持を得ていた。中でも、1922年以来、43年間にわたり音楽監督務めたバイエルン国立歌劇場のあるミュンヘンにおいて、「クナッパーツブッシュはミュンヘンを“第二の故郷”と呼び、ミュンヘン市民はクナッパーツブッシュを“われらのクナ”と言って敬愛していた」と、宇野功芳氏が、このLPレコードのライナーノートで紹介している。このLPレコード収められたワーグナーの作品において、手兵のミュンヘン・フィルを指揮するクナッパーツブッシュは、持てる自己の特徴を全ての曲で遺憾なく発揮。朴訥としてはいるが、人間味のある演奏内容は、聴き続ければ続けるほど一層深まっていくのである。いずれの曲も、これ以上遅いテンポは考えられないほどのゆっくりしたテンポで始まり、何とそのテンポはそのまま延々と続いていく。そしてクライマックスになるとその持てるエネルギーを一挙に解き放つのだ。外面的な装飾はできるだけ排除して、曲の本質のみをリスナーに直接伝える。そんなクナッパーツブッシュの手に掛かると、リスナーは魔法にでも掛けられたかのように、ぐいぐい引き付けられて、もうその魔力から離れられなってしまうから不思議だ。クナッパーツブッシュが不世出のワーグナー指揮者だったことが、この録音から充分に聴き取れる。(LPC)


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