★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇スーク・トリオのシューベルト/メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番

2024-05-02 10:32:00 | 室内楽曲

 

シューベルト:ピアノ三重奏曲第1番
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲第1番

ピアノ三重奏:スーク・トリオ                    

         ヴァイオリン:ヨセフ・スーク          
         チェロ:ヨセフ・フッフロ          
         ピアノ:ヤン・パネンカ

LP:日本コロムビア OQ‐7045‐S

 ヨセフ・スーク(1922年―2011年)は、1950年にプラハ音楽院を卒業した2年後に、自らが中心となりスーク・トリオを結成。スークのヴァイオリン演奏は、プラハ音楽院のヴァイオリン科に流れる、ボヘミアの弦の長年の伝統に裏付けられた、しっとりとした音色と端正な形式美に特徴を持ち、これがそのままスーク・トリオの演奏の特徴ともなっていた。チェロのヨセフ・フッフロ(1931年―2009年)は、1959年にメキシコで行われたカザルス国際チェロ・コンクールの優勝者であり、安定感のある浪々としたチェロの音に特色があった。ピアノのヤン・パネンカ(1931年―1999年)は、チェコで行われたスメタナ・コンクールで優勝、そのピアノ演奏は、しっかりとしたピアノタッチに加え、美しい詩情を湛えていた。この3人は、ほぼ同世代の演奏家であり、その意味からも互いに気心が知れ合い、そのため、淀みのない、流麗な音のつくりが実現でき、当時、その演奏内容は、他のピアノ・トリオでは得られないものとして高く評価されていた。シューベルトは、ピアノ三重奏曲を2曲作曲しているが、このLPレコードでは、明るく軽快な曲想が広く一般に親しまれている第1番が収録されている。この第1番は1827年に作曲され、作曲された当時は歌曲集「冬の旅」や3曲のピアノソナタ(第19番、第20番、第21番)が生み出された時期でもあった。公開初演は同年の12月26日、シュパンツィヒ四重奏団員によってウィーンの楽友協会で行なわれた。初版譜は1836年にウィーンのディアベッリ社から出版された。一方、メンデルスゾーンもピアノ三重奏曲を2曲残しており、このLPレコードではピアノ三重奏曲の屈指の名曲として有名な第1番が収録されている。この第1番は1839年9月23日に完成し、この時はメンデルスゾーン自身がピアノ、ヴァイオリンは友人のフェルディナンド・ダヴィッドが担当した。この曲を聴いたシューマンは「ベートーヴェン以来、最も偉大なピアノ三重奏曲」だと評したという。このLPレコードでのスーク・トリオの演奏は、スークの伸びやかで優雅なヴァイオリン、ヤン・パネンカの軽快で澄んだピアノ、それにヨセフ・フッフロの大きな広がりをもったチェロと、3人の奏者の息がぴたりと合っている。これら2曲のピアノ三重奏の名曲を、LPレコードの持つ柔らかな音色により、心ゆくまで堪能することができる。(LPC)

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