★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イタリア弦楽四重奏団のドビュッシー&ラヴェル:弦楽四重奏曲

2024-02-12 09:39:16 | 室内楽曲(弦楽四重奏曲)


ドビュッシー:弦楽四重奏曲
ラヴェル:弦楽四重奏曲

弦楽四重奏:イタリア弦楽四重奏団
          
         パオロ・ボルチアーニ(第1ヴァイオリン)
         エリーザ・ペグレッフィ(第2ヴァイオリン)
         ピエロ・ファルッリ(ヴィオラ)
         フランコ・ロッシ(チェロ)

録音:1965年8月11日~24日、Vevey Theatre

発売:1979年

LP:日本フォノグラフ(フィリップスレコード)13PC‐11(835 361 LY)

 このLPレコードでドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を演奏しているイタリア四重奏団は、1945年にデビューし、1980年に解散した弦楽四重奏団。全盛期には“黄金のかがやき”と評され、そのはつらつとした弦の音色は、他の弦楽四重奏団には決して求められない魅力を秘めていた。明快にして息の合った絶妙なアンサンブルに加え、現代的でいて、しかもイタリアの室内楽団らしく、歌ごころを常に宿していた。その実力は、世界第一流のカルテットとしての評価を定着させ、世界各地の音楽祭にもしばしば招かれて花を添えていた。そのレパートリーは幅広く、この分野におけるほとんどすべてに渡っており、ベートーヴェン、モーツァルト、シューマン、ブラームス、ウェーベルンの弦楽四重奏曲の全曲録音を完成させている。そんなイタリア弦楽四重奏団が、このLPレコードにおいては、ドビュッシーとラヴェルの弦楽四重奏曲を演奏している。これらの2曲は、当時一世を風靡していたワグナーのドイツロマン派音楽に対するアンチテーゼとも言うべき曲であり、ドビュッシーとラヴェルのフランス音楽への強烈なメッセージが込められている作品だ。2曲とも、どことなく水墨画を思い出させるつくりとなっており、限りなく幽玄で繊細な世界へとリスナーを導く。ドビュッシー:弦楽四重奏曲は、丁度「牧神の午後への前奏曲」と同じ頃の1893年に作曲された。ドビュッシーが書いた室内楽作品は、極めて少なく、このLPレコードに収められた弦楽四重奏のほかは、晩年に書き遺した3曲のソナタがあるだけである。一方、ラヴェル:弦楽四重奏曲は、1902年から翌年にかけて作曲され、1904年にパリで初演されている。弦楽四重奏曲だけとると、ラヴェルの曲は、ドビュッシーの後となるが、ピアノ曲としてのフランス印象派音楽としての作品としては、ラヴェルはドビュッシーに先駆け、「水のたわむれ」(1901年)を書いている。弦楽四重奏曲においては、ドビュッシーが幽玄さに徹しているのに対し、ラヴェルは、理性と典雅さが勝ったような作風に仕上がっている。知的な作品ではあるが、同時に表情が生き生きとしていて、情熱の高まりにも、抒情のふくらみにも不足はない。イタリア弦楽四重奏団は、フランス印象派音楽を象徴するかのようなこれらの2曲を、実にしっとりとした味わいと同時に、明快さも加味させて、全体を説得力のあるものに仕上げている。(LPC)


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