ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
シューマン:交響曲第1番「春」
指揮:ウィルヘルム・フルトヴェングラー
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1951年10月29日、ミュンヘン、コングレス・ホール(ライヴ録音)
発売:1978年
LP:キングレコード(LONDON) MX 9011
このLPレコードは、フルトヴェングラー(1886年―1954年)が遺したライヴ録音盤といういうことで大変貴重な録音であり、また、発売された当時は、新たに発掘されたフルトヴェングラーの録音であるということで、フルトヴェングラー・ファンが小躍りして喜んだLPレコードでもあったのだ。LPレコード化に際しては、バイエルン放送局のテープが使われたという。録音時の1951年は、まだ第二次世界大戦の惨禍が癒えていない時期であり、フルトヴェングラー自身、戦時中のナチとの協力関係をいろいろと疑われ、演奏禁止処分を受け、1947年にようやく無罪判決を受け、自由な身となったばかりである。そして1951年7月29日、今でも語り草となっているバイロイト音楽祭再開記念演奏会でベートーヴェンの交響曲第9番の指揮を行い、その後、10月29日に、このLPレコードに遺されている演奏会が開催されている。ベートーヴェン:「コリオラン」序曲の最初の出だしから、その異様な力強さに圧倒される。幾重にも重なって押し寄せてくる大波のようでもあり、コンサート会場全体が唸りを挙げているようにも感じられる。名指揮者と凡庸な指揮者とに違いは、そのオーケストラに如何にして統一した響きを出させるか、ということに尽きるように思われるが、このベートーヴェン:「コリオラン」序曲を演奏するウィーン・フィルから、フルトヴェングラーの棒は、一糸乱れず、しかも腹の底から湧き出すような重厚な響きを、適切なリズムを伴って引き出していることに改めて気づかされる。シューマン:交響曲第1番「春」は、もともとは、シューマン独特のロマン的情緒を伴った交響曲なのではあるが、フルトヴェングラーはそんなことには一向にお構いなしに、この交響曲に対し、ベートーヴェン的な構成力の逞しさを求める。フルトヴェングラーは、シューマンの第4交響曲の名録音も遺しているが、交響曲第1番の演奏もこれと同じく、アポロ的なものよりデモーニッシュ的な感覚が先行している演奏内容なのだ。特に、第1楽章から第4楽章にかけて徐々に深みと力強さを増していく指揮ぶりは、フルトヴェングラー以外に求めるのは、今もって不可能だ。このライヴ録音は、フルトヴェングラーの独特な視点に立ったシューマン:交響曲第1番「春」の超名演盤といっても間違いなかろう。(LPC)
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