★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団のベルリオーズ:幻想交響曲(1955年録音の幻の名盤)

2022-08-11 09:49:30 | 交響曲

ベルリオーズ:幻想交響曲

指揮:シャルル・ミュンシュ

管弦楽:ボストン交響楽団

録音:1955年

発売:1980年

LP:RVC(RCA) RCL‐1022

 名指揮者のシャルル・ミュンシュ(1891年―1968年)が遺したベルリオーズ:幻想交響曲の録音は、全部で6つある。古い順から挙げると、①1940年代:フランス国立放送管弦楽団(SPレコード)②1955年:ボストン交響楽団③1962年:ボストン交響楽団④1966年:ブタペスト交響楽団⑤1967年10月:パリ管弦楽団⑥1967年11月:パリ管弦楽団。このうち、普段聴くのは、多分⑤か⑥の録音であろう。⑤はセッション録音で、その1か月後のライヴ録音が⑥であり、今日この2つの録音がミュンシュの「幻想」の名盤として高い評価を得ている。今回のLPレコードは、我々が滅多に耳にしない②の録音なのである。つまり、1955年頃、ボストン交響楽団と録音した盤である。この時、シャルル・ミュンシュは、ボストン交響楽団の常任指揮者に就任して6年目であり、コンビとして最も充実した演奏を聴かせ、その名声は世界中に広がり始めた頃に録音されただけに、演奏内容は、極めて充実していることがこのLPレコードから聴き取れる。既にミュンシュは、1952年にボストン交響楽団を率いて最初のヨーロッパ演奏旅行を成功させていた。この録音の翌年、1956年には、アメリカのオーケストラとして最初のソ連訪問を含む第2回目のヨーロッパ旅行を行うなど、その名声を高めた。ベルリオーズ:幻想交響曲(第1楽章「夢、情熱」、第2楽章「舞踏会」、第3楽章「野の風景」、第4楽章「断頭台への行進」、第5楽章「魔女の饗宴の夜の夢」)のLPレコードには、ピエール・モントゥー指揮の名盤があり、このブログでも紹介している。ピエール・モントゥーの指揮は、文字通り幻想的で詩的な演奏で頭抜けていたが、これに対し、シャルル・ミュンシュ指揮のこのLPレコードは、一本芯張り棒が垂直に引かれ、適度にメリハリが利いていて、しかも非常にバランスが良い演奏に終始しており、これはこれとして名演を聴かせてくれている。ボストン交響楽団は最高に緻密な演奏を聴かせ、輝かしい力を存分に発揮していることが聴き取れる。当時のミュンシュのボストン交響楽団とベルリオーズの「幻想」へ対する共感と情熱がストレートに伝わってくるところに、この録音の不滅の価値があると言えるだろう。この幻とも言える幻想交響曲の録音は、これまでのあらゆる「幻想」の録音の中でも、今でも上位に入り得る優れた演奏内容だ。音質もステレオ初期の録音の割には鮮明に捉えられており、充分に鑑賞に耐えられるレベルに達している。(LPC)


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