★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇ボーザールトリオのシューマン:ピアノ三重奏曲第1番/第2番

2020-01-20 09:42:34 | 室内楽曲

シューマン:ピアノ三重奏曲第1番/第2番

ピアノ三重奏:ボザール・トリオ
            
          メナヘム・プレスラー(ピアノ)
          イシドーア・コーエン(ヴァイオリン)
          バーナード・グリーンハウス(チェロ)

LP:日本フォノグラム(フィリップスレコード) 13PC‐165
 
 シューマンには、「歌曲の年」「交響曲の年」それに「室内楽の年」と呼ばれる年があり、それぞれのジャンルの曲を集中的に作曲した。「室内楽の年」と呼ばれる年は、1842年であり、この年に入ると、3曲の弦楽四重奏曲を一気に書き上げ、さらに、ピアノ五重奏曲、ピアノ四重奏曲という傑作を世に送り出している。しかし、ピアノ、ヴァイオリン、チェロによる「4つの幻想小曲」以外、この年には本格的なピアノ三重奏曲には手を染めていない。これは何故か?その理由は詳らかではない。私の推測にしか過ぎないが、シューマンのこの時期というと、過度とも言えるほどロマンの色濃い作品を書いていたわけで、なるべく弦の多い形式の曲に傾斜していたためではなかろうか。シューマンは、この5年後の1847年にピアノ三重奏曲第1番を書き上げ、さらに1851年までにあと2曲を書き加え、全3曲のピアノ三重奏曲を完成させている。この頃のシューマンは、若い頃からのロマンの雰囲気に加え、古典形式への傾斜も見せ、複雑な作曲環境の中にあり、さらに、徐々に神経障害の兆候も見られ、決して順調とは言えない環境にあった。このため、3曲あるピアノ三重奏曲のうち、現在、よく演奏されるのは早い時期に書かれた第1番であり、第2番、第3番は晦渋な作品としての位置づけが一般的であるようだ。しかし、よく聴くと第2番、第3番もシューマンでしか表現できないような、繊細さが込められた作品となっている。このLPレコードには、ボザール・トリオの演奏で第1番と第2番とが収められている。ボザール・トリオは、米国のピアノ三重奏団で、1955年にピアニストのメナヘム・プレスラーによって結成され、2008年のルツェルン音楽祭のコンサートをもって解散したが、その演奏内容は常に高い評価を勝ち得ていた。LPこのレコードでのボザール・トリオの演奏の演奏も、シューマン独特のロマンの色濃い雰囲気を最大限発揮させ、リスナーはその名演に釘付けとなる。3人の息がぴたりと合い、一部の隙のない演奏を聴かせる。第1番は、伸び伸びとしたロマン豊かな響きが、とりわけ魅力的な演奏だ。第2番は、一般的に言って晦渋な作品かもしれないが、シューマン愛好家にとってはお宝的作品。特に第2楽章、第3楽章の哀愁を帯びたボザール・トリオの演奏を一度でも聴いたら、二度と忘れられなくなる。(LPC)


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