★クラシック音楽LPレコードファン倶楽部(LPC)★ クラシック音楽研究者 蔵 志津久

嘗てのクラシック音楽の名演奏家達の貴重な演奏がぎっしりと収録されたLPレコードから私の愛聴盤を紹介します。

◇クラシック音楽LP◇イヴリン・クロシェのフォーレ:前奏曲集/主題と変奏/無言歌

2020-12-21 09:40:45 | 器楽曲(ピアノ)

フォーレ:前奏曲集(第1番~第9番)
     主題と変奏
     無言歌(第1番~第3番)

ピアノ:イヴリン・クロシェ

LP:ワーナー‐パイオニア(VOX) H‐4517V

 フォーレは、生涯にわたってピアノ曲独奏曲を書き続けた。それらは、13曲の夜想曲、13曲の舟歌、6曲の即興曲、4曲のヴァルス・カプリス、3曲の無言歌、9曲の前奏曲集などであり、さらに「8つの小品集」「ロマン」「マズルカ」「主題と変奏」があり、現在では管弦楽を伴って演奏される「バラード」も、もともとはピアノ独奏曲。このほかピアノ連弾用の愛らしい「ドリー」などもある。絵も言われぬような優美なメロディーと、生き生きしたリズム感は、フォーレのピアノ曲の特徴であり、今でも多くのリスナーに愛好されている。このLPレコードは、フランスの女性ピアニストであるイヴリン・クロシェ(1934年生まれ)による「フォーレ ピアノ曲全集」の第4集で、前奏曲集(第1番~第9番)と「主題と変奏」、それに無言歌(第1番~第3番)が収められている。前奏曲集(第1番~第9番)は、1910年に3曲がまず作曲され、残り6曲を翌1911年に作曲された。これら9曲のうち、第2番と第8番は練習曲用に近く、第3番から第5番は舟歌風の曲となっている。しかし、9曲全部を聴き終えると、一つのまとまりのある曲となっていることが理解できよう。次の「主題と変奏」は、フォーレ50歳の1895年に作曲された作品。最後の無言歌(第1番~第3番)は、フォーレがまだ18歳の頃の1863年に作曲された作品。このLPレコードでのイヴリン・クロシェは、ぬくもりのある、暖かさに満ち満ちたピアノ演奏を繰り広げる。前奏曲集(第1番~第9番)では、一曲一曲に思いを込め、豊かなファンタジーを込めて弾き進める。練習曲風な曲は、見事なテクニックを披露すが、これ見よがしさが少しもないところが好印象を受ける。舟歌風の曲では、その持ち味が最大限に発揮され、リスナーは自然の中で音楽を聴くような、優美さに酔いしれることができる。聴き進めるうちにこの前奏曲集は、バラードにも似て物語的要素がたっぷりと塗り込められていることに気付かされる。来日経験のあるイヴリン・クロシェは、このフォーレ:前奏曲集の演奏の録音は、彼女の特性が如何なく発揮されているようだ。次の「主題と変奏」は、前奏曲集の時とは少々面持ちを変え、厳格であり、しかも構成美をかなり意識した演奏内容となっている。このため、この曲の持つ深淵で、しかも変化に富んだ曲想を、流れるようなピアノタッチで、見事に描き出すことに成功している。最後の3曲の無言歌は、フォーレの若い頃の作品だけに、浮き浮きと弾んだ様子が、イヴリン・クロシェのピアノ演奏から聴こえてきて、思わず微笑みたくなるほど。(LPC)


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